北斗の拳・リクエスト作品集

□そして天才は跪く。
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真昼の酒場は落ち着いていてのんびりできる。うるさいアミバもいないし、今が一番ゆっくりできる時間だ。しかし、のんびり過ぎるのもまた退屈である。


「おっちゃん、私ピマ〜」

「何?ピーマン?そんなもんないぞい。」

「ピーマン違ーう!暇って事!」

「暇かい。それじゃあ通じんぞ。」


どうして突っ込みをしなきゃならんのと呆れるラミア。カウンターテーブルに頭を伏せて溜め息をついた。すると、酒場の扉が開かれ、皆の視線が一ヵ所に集中する。

皆が目にしたのは、デビル○ンレディーの様な格好をした怪しくもグラマーな女。顔は鼻から上を黒いマスクで隠している。皆の視線がこちらに集中してるのにも関わらず、堂々としているのだ。


「ここに酒樽はある?」

「え?ああ、裏にいくつかあるが……」

「そう。それじゃあ、帰りに買って行くわ。少し飲ませてちょうだい。」


このご時世に酒樽を丸々買う者とは珍しい。女は、カウンターテーブルへ向かい、イスに腰掛けた。しかも、ラミアの右隣に。右隣を気にしながらも、ラミアはロックグラスを口につける。

ふと、女はラミアに視線を向け、声を掛けた。


「ねぇ、あなた?あなた、男からDVを受けてない?」

「ゔっ!ど、どうしてそれを……?」

「なんとなくね、顔の痣や傷が気になったのよ。」


ラミア的には隠しているつもりだったが、この女には即バレてしまった。なんとなくでドメスティックバイオレンスが思い浮かぶか?とラミア思う。近くで見て気づいたが、なんて威圧感のある女なんだ。しかし、威圧感があるにも関わらずこの妖艶さ。


「お姉さんは一体、何者……?」

「私?私の事は女王様とでも呼んでちょうだい。あなたの名前は?」

「じょ……女王様……?私はラミア……」


女は女王様と言うらしい。SMの女王様かっての。見た目や格好からして、なんとなくそんな感じはするが。変な女に会っちゃったなあ〜とラミアは内心に呟いた。


「ラミアちゃん、男がいるのなら覚えておきなさい。男はいくら強くても弱っちい存在なのよ。」

「へ?あの、言ってる事矛盾してるんですけど。強くても弱いって……」

「フフフ……女は強者、男は弱者。」


何を言ってるんだこの人は。ラミアは女王様の訳の分からない発言に困惑した。女は強者で男は弱者。一体、どーゆー意味だろう。彼女の発言で酒場にいる男達が急にざわめき出した。こちらに集中する視線が痛い。


「あの……女王様はSMかなんかの人?」

「えぇ、そうよ。私はSMの女王。強い男共は皆、私の前にひれ伏せるのよ。フフフ……」

「怖っ……」


Sっ気オーラ半端ないぞこの人。おっちゃんが困ってるじゃんか〜!でも、強い男をひれ伏せさせるんだ。この人なら、あのバカアミバを私の前にひれ伏せさせるなんて容易いかも。


「あの!お願いがあるんですけど、私のDV男をなんとかできませんか?」

「あなたの男を?調教なら可能だけれど、私って他人の男には手を出さないのよ。」

「えっっ!?」

「あなた自身がやるしかないわね。私の様に女王様と名乗ってごらんなさい。」


てっきり、受け入れてくれるかと思ったが、案外そうでもなかった。私自身がやるって、そりゃあ、たまに私も強気で迫る時はあるけど、この女王様みたいに本格的なSMは正直言って無理だ。

悩み顔を作っていると、女王様はまた微笑した。


「フフフ……あなたならできるわよ。スタイルも中々ですし、ダークな一面もあるし。」

「い、いやいや、女王様ほどでは……」

「これをあげるわ。私の宝物よ。」

「え?なんですか、これ?」

「帰ってからのお楽しみよ。」


ラミアは小型の黒いアタッシュケースを渡された。帰るまでは中身を見てはいけないらしい。女王様と名乗る女は、そう言い残し、小さめの酒樽を持って酒場から去って行った。ラミアは、しばらくボーッとしていた。


「なんじゃ、あの女は。いい加減な事ばかり言いおって。」

「うん。でも、只者じゃなかったね。」


ラミア以外の者達は不快に思ったようだが、ラミアだけは違った。皆、彼女の目を見てないから分からないと思うが。女王様は、本当に強いんだと思う。あの堂々した態度や余裕のあるしゃべり方が何よりも証拠とラミアは思った。
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