KOF(オロチチーム)
□馬鹿と馬鹿力は違う!
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オロチ四天王、七枷社、シェルミー、クリスの3人が住む一軒家。今日も人間達の様に平和な一日が訪れるだろう。
ドン!ガラガッシャーン!
そんな訳はなく。真っ昼間からなんとも騒がしい事。部屋中に響き渡った騒音。一人の少年が呆れた表情で、慌てて駆け出した。
「もう!社ってば、またテレビ壊したのー?」
観たいテレビあったのにー!と怒りながら、ひどい有り様になったテレビに視線を向ける少年。怒り顔でも少女の様な少年。
名はクリス。スウェーデン出身。14歳。オロチ四天王の一人。
「あらやだ、ちょっと社!そのテレビいくらしたと思ってるのよ!」
怒っているのいないのか。顔半分隠れているせいか、いまいち表情が分からない。クリスの後に続いて来たのは、長い前髪で目から上が隠れた長身の女。
名はシェルミー。フランス出身。21歳。こちらもオロチ四天王の一人。
「あ、わり‥‥つい、本能的に手が出ちまった。」
何の悪気もなさそうな態度とへらへらしたごまかし方。 癖なのか、銀色の頭を片手で擦る長身の青年。名は七枷 社。日本出身。23歳。190pと言う長身は日本人と思えない程に。
また、整った顔立ちには不似合いと言えよう、筋骨隆々な肉体。普段は気の良い兄貴肌の彼だが、裏の顔は喧嘩っ早くチンピラの様な風貌である。
「また言い訳してる。今度から社がテレビ買ってよー」
「そうよ、クリスの言う通りだわ。弁償よ、弁償!」
「るっせーな!赤毛が出ていたんだから仕方なねーだろ!」
2対1と言う不利な状況に、社は必死にごまかそうとする。社の言う赤毛とは、『八神庵』の事である。
社よりは年下だが、彼の組むバンドグループと社の組むバンドグループとの間にトラブルがあった為、社からは同じバンドマンとして一方的にライバル視されている。
庵のバンドグループは人気上昇し、テレビにも頻繁に出るようになった。庵がテレビに映るたびに社はテレビをブッ壊し、何度も買い直している。
勿論、本人が買うのではなく、クリスやシェルミーだ。かれこれ12回は買い直している。
「気にし過ぎだよ。あの人だってワザとやってる訳じゃないんだからさ。」
「ぐっ‥‥まっ、ガキのオメーにゃあ分からねーだろうがよ。」
「全く、相変わらず短気ね。毎日ラーメンばっかり食べてるから、カルシウム不足になったのよ。」
「あ〜ん?この野郎、ちょっとこっちがかしこまってりゃあ、付け上がりやがって‥‥」
チームメイトにあれこれと大幅に指摘を受ける社。しかし、その乏しい頭でっかちではどうしようもできないだろう。結局、社は強制的に新しいテレビを買わされた。
「はぁ‥‥なんたって俺が‥‥あん?」
駅前のヤ○ダ電器店で手頃なテレビを購入した帰り道。ふと、社の視界に映る一つの影。それは、社が最も毛嫌いする人物だった。
「ぅおおおおーっ!赤毛ぇぇえええッ!」
「!?」
本名は口にせず、嫌みったらしい呼び名で叫びながら、全速力で走り出す。手元の真新しいテレビを放り投げ、テレビの存在を忘れてしまう。そして、一歩手前でストップし、庵の胸ぐらを乱暴に引っ張り上げる。
「テメェ!何、ヌケヌケと歩いてやがんだゴルァ!」
「また貴様か。いちいち俺に絡むな。目障りだ。」
「ッんだとー!?」
何故こうも根に持たれなければならないのだろう。元々、ライブハウスでのトラブルも、庵は意識してやった訳でもない。
最も、社が自分の勝手で庵にケチをつけているだけである。庵は社の両手を振りほどき、胸元を整えた。
「やれやれ。パワー馬鹿のやる事は、チンピラまぐいの行動力しか頭にないのか。」
「あん?テメェ、誰に向かって口聞いてんだ!?」
「目障りだ。二度と俺に近付くな。馬鹿でも分かる事だぞ。いや、貴様は馬鹿以下の低脳なクズだな。」
「テメッ‥‥!あ、おい!待てコラァ!」
一戦すら交えず、庵はそう言い放って去って行った。その図太さに社はあっけらかんとなり、追い掛ける事ができなかった。
庵の姿が小さくなってから、悔しさが溢れ出し、また一人で獣の様に咆哮を上げた。買ったばかりのテレビの存在さえ忘れて。