その瞳に映す

□闇
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本来であればすでに婿をとり子をなし、一座を率いたであろう



それをしないのは彼との約束があるから



「何で、何で…烝君?」


「…………」


「私は」



涙をこぼすのは俺が愛する女



既に蒼介ではなく本来の刹那



ただ一人愛する女は奴との約束に縛られている



「刹那…君は蒼介じゃない」


「それは…わかってるよ。私はあの子の双子の姉……蒼介は一年前に死んだって」



一つの魂を二つの肉体に分けあった双子


それが彼女達


彼女の半身たる弟は俺がこの手で殺した



「すまない」


「ううん……あの子は笑ってた」



そう、あいつは笑っていた


そうして彼女と似た顔立ちをした男は逝った


以来刹那は蒼介の代わりとして新撰組監察方を務める


それを知るのは近藤局長、土方副長、沖田さん、井上さん、そして当事者である刹那本人と俺のみ


元々蒼介は自分の女顔を気にしていたため変装をし、その地顔を知る者は

一部を除きいなかった



「君は抜けてもいいんだ!」


「それは駄目よ……私は新撰組の闇を知っているんだから」



それは俺が誰よりも知っている


彼女を縛ったのは何だろうか



「羅刹を知ってしまった私はもう逃げられないよ」



羅刹


それを知ってしまった以上逃れる事はできない


羅刹を見た少女雪村君同様新撰組預かりの身になるか、始末されるかの二択


その中から刹那が選んだのはどちらでもない



「烝君…私はこの命尽きるまで蒼介として新撰組を支えるとあの日決めた。それが私が……刹那が選んだ道なんだよ」



彼女が選んだのは何よりも困難な道


修羅が行くがごとく道を選んだ


奴の願いが彼女を縛り付けた


いつか刹那が解放されるまで共にあり続けると刹那が新撰組へ入隊した時に決めた


それが闇へと続く道であろうと愛した女と共にあろう


再び刹那に口づけ彼女は大人しく口づけられていた




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