小話
□photogenic
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悪夢の24時間耐久レースを終え、ついに週刊ソーサラーのグラビア撮影の日がやってきてしまった。
「ナツ、着替え終わったか?」
撮影スタジオの裏にある控え室兼更衣室。
グラビア撮影は一人ずつ行うため、今は最初に撮影をすることになったナツが着替えをしていた。
その扉の外からグレイが声をかけると、少ししてからカチャリと鍵の開く音がする。
「…コレでいいのか…?」
扉がほんの少しだけ開かれると、隙間からこちらを伺うような猫目だけがのぞいた。
「もうここまできたんだ、覚悟しちまえよ」
隙間に手をかけ、勢い良く扉を開いて中に入れったグレイの目は、目の前の桜色に釘付けにされた。
扉の先に立っていたのは、恥ずかしそうに頬を染めて、薄いピンク色のふんわりした裾のワンピースを着たナツ。
衣装はスタイリストがナツの髪色に合わせて選んだのだろう。
まるで満開の桜のようだった。
「…やっぱヘン、だよな」
見とれたまま固まっているグレイに不安になったのか、そう言って瞳を伏せるナツは、いつものマフラーもしていないせいで細い首筋が露になり、酷く儚げだった。
「…いや、すげー似合ってる」
ハッと我に返ったグレイはそんなナツの髪に手をやり、くしゃりとかき混ぜる。
ようやく言葉を発したグレイにナツも安心したように顔を綻ばせた。
「でもやっぱり動きにくいし、落ちつかねぇ…」
そう言いながらフリルがたっぷりついたスカートの裾をつまんで持ち上げると、太ももの辺りの日焼けしていない白い肌が露になった。
「!?ちょっと待てナツ!!…その、なんだ…」
慌ててナツの手を押さえてスカートを下ろさせる。
本人は全くの無自覚だが、目のやり場に困るとはこういう事だ。
「こういう服のときは、あんま動くな」
「何でだよ?」
「色々見えちまうだろーが!!」
「見えたらまずいのか?」
首をかしげてそう問いかけるナツの瞳は無邪気そのもの。
撮影時もこの調子でいられたら、ナツのあられもない姿が週刊誌に載ってしまいかねない。
「とにかくだ!!撮影のときはマジで気をつけろよ」
「んー、よくわかんねーけどわかったよ。あんまり動かないようにすればいいんだろ」
ナツは胸元を覗き込みながら答える。
女性用の服のため、胸元は余って少し緩い。屈めば胸の飾りも見えてしまいそうだった。
「お前の事だから心配だな。試しにちょっと、着たまま動いてみようぜ」
「着たままって…うぁっ!!」
突然グレイに覆いかぶさられ、背後の大き目のソファへ背中から倒された。
抵抗の声を上げる間も与えられず、グレイの顔が近づきあっというまに唇が塞がれる。
「んッ…んぅ…」
声を出せないため、ナツはグレイの背中を叩いて抵抗の意思を表すが、全くこたえていない。
グレイは両手でナツの頬を包みこむと、舌を入り込ませ、内側を犯していく。
「っは…、あ…」
「ホラ、ちょっと動いただけでもこんなにはだけちまう」
押し倒されて抵抗したせいで、グレイの言うとおりワンピースの肩紐は落ちてスカートの裾も乱れている。
たっぷりナツの口内を味わい、やっと唇を離したグレイはイタズラが成功した子供のような得意げな笑みを浮かべた。
「ん、…気をつける…」
ナツはようやく呼吸を許された後、そう呟いて視線を逸らすがその瞳は濡れている。
乱れた服に、慣れない格好のせいか少しおとなしいナツ。
・・・あー、止まらねぇかも…ごめんナツさん。
グレイは心の中で一言謝ると、ソファに体重をかけた。
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