小話
□Bubble hour
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「ナツ、一緒に風呂入るぞ」
「いきなり何言ってんだ変態」
ファンタジアを無事終えてから翌日。
夕方になって、妖精の尻尾から家へ帰ろうとするナツを引き止めた。
ラクサスとの戦いでナツが負った傷は早くも殆ど治りかけている。
だが右腕のギブスだけはまだ取れずにいたのだった。
酷い怪我だったせいで昨日の入浴は適当にシャワーで済ませていたようだが、あまり器用ではないナツの事だ。悪戦苦闘したに違いない。
「お前の事だ。片手じゃうまく身体も洗えなかっただろ?手伝ってやろうって言ってんだよ」
そう指摘してやると、目を泳がせながら小さな声で返ってきた。
「確かに…ちょっと面倒だった…」
変な事したら燃やすからな!!というナツの声を聞き流し、一緒に俺の家へと向かった。
* * * * *
「おとなしくしとけよ」
俺の家のバスルーム。俺に背を向けた状態で座っているナツに、タオルで石鹸を泡立てながら声をかける。
「あれだけ全身大怪我したってのに、もう殆ど塞がってるんだな。これも滅竜魔法のおかげか?」
感心しながら背中、腕、とナツの身体を洗っていく。
てかこいつマジで細いんだよな…。
この華奢な身体に、ラクサスを倒すほどの力を秘めているとはとても思えない。
泡が首筋に来たところで、右側にある大きな傷跡に目がいった。
"この傷は、消えねぇんだな…"
セックスの時も気になってはいたが、何の傷かは聞けずにいた。
ぼんやり考えながら、傷跡特有の質感を確かめるように指先でツゥっとなぞってみる。
「ひぁッ!?グレイ!!ヘンな触り方すんなって!!」
タオルではなく指先でいきなり敏感な首筋に触れられ、ナツは抗議の声を上げる。
「ん?俺は丁寧に洗ってやってるだけだぜ?」
今日は本当に怪我人を風呂に入れてやるだけのつもりだったが、今のナツの反応…もしかしてイケるんじゃねーか?
「風呂場でってのも悪くねぇな」
確かにこのヌルヌルはヤバいな…今度ローションとか使ってみるか…。
「…お前何でそんなに変態なんだよ…」
ナツの冷たい言葉を聞いて、頭の中の考えが口に出てしまっていたと気付く。
ってかやっぱダメか。一応怪我人だしな…。
「ホラ、おしまいだ。腕あげとけよ」
ギブスの右腕は塗れないようにうまく避けて、頭からお湯をかけて泡を流してやる。
「ん、ありがとな。グレイ」
なんだかんだ言いつつも、サッパリして機嫌が良くなったのか、ナツが笑顔で振り向く。
濡れて前髪が下りているからか、いつもより幼く見えるナツ。
上気したほんのり桜色の肌。無防備な笑顔。
…やばい。可愛い。
さっきの事もあり、何だか俺のモノが反応している。
「ナツ…いいか?」
本気を込めてナツの耳元で囁く。
「?!?だめだだめだ!!!今はホントに無理!!」
間髪要れずに全力で否定されるのは悲しい。
だが確かに普段ですら、事に及んだ後ナツはそのまま気を失ったり、動けなくなってしまうことが多い。
体力が落ちている今そんな事をしたらどうなるか、本人が一番よくわかっているのだろう。
必死で俺の体を押しのけようとする。
「ったく仕方ねーなぁ、ナツさんはよぉ」
俺が引き下がると思ったのか、ナツが安堵のため息をつく。
「でも」
すでに硬くなり始めている俺自身をナツの腰に擦り付けると、ビクッと肩が跳ねる。
「恋人のココ、こんなにした責任…とってくれるよな?」
後ろからナツの胸元に手を滑らせ、耳元で出来るだけ低く囁く。
自分でも理不尽すぎると思う理屈だったが、ナツは"恋人として責任を取る"というくだりに上手く丸め込まれてくれたようで、耳まで真っ赤になりながらも否定の言葉は出なかった。
よし、ここまでくればもう一押し。
「さすがにケガ人に無理はさせられないから…」
俺はナツの顎に手を添えると、親指で桜色の唇をなぞった。
「"ココ"ですれば、使うのは口だけだからラクだよな?」
「…このド変態っっ!!」
真っ赤な顔で最高の褒め言葉が放たれた。
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