小話
□JUST COMMUNICATION
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ギルドのリクエストボード前。
ナツ、グレイ、ハッピーの三人が、ボードに貼られた依頼書を眺めては唸っていた。
「ったくルーシィの奴、"良い仕事あったらキープしておいてね!!"とか言って、人の事アゴで使いやがって…」
ぼやきながらもしっかりと依頼書に目を通すグレイだが、当然のように服は着ていない。
「しょうがないよグレイ。ルーシィ今日は一日"8island"でウェイトレスやってるからね。でもそれだけじゃ家賃に足りないんだってさ」
今朝、凄い勢いで出かけていったルーシィの姿を思い出しながらハッピーが説明する。
ルーシィの金欠はいつもの事だが、どうやら今月は本気で危ないらしい。
「お、この依頼いいんじゃねぇの?」
ナツの明るい声に、グレイとハッピーは彼の指差す依頼書を覗き込んだ。
「報酬70万Jだから…オレとハッピー、グレイ・エルザ・ルーシィの5人でやれば、一人ピッタリ7万J!!」
そう言いきって振り向いたナツの笑顔は、あまりにも純粋だった。
目を輝かせるナツとは反対に、グレイとハッピーの表情は凍り付いている。
「…ナツ、グレイにピッタリの意味教えてもらいなよ…」
少しの沈黙を破ったのはハッピー。
どうだ、とばかりに満開の笑顔を向ける相方を傷つけたくは無いが、間違っているものは間違っている。
「何だよハッピー!!そんくらい知ってるっての!!ってか何で変態に教えて貰わなきゃなんねーんだよ?!」
当の本人はどうして二人がそんな反応をするのか全くわかっていないようで、口を尖らせながら抗議の声を上げている。
「そりゃあ俺はナツさんより物知りだからなぁ…」
頭から湯気をあげるナツを見て、意味ありげな微笑みを浮かべるグレイ。
「"ピッタリの意味"って言ったら…」
そう言いながらナツの顎に手をかけ、唇を重ねた。
静まり返るギルド内に、ちゅっ、くちゅり、と卑猥な水音だけが響く。
「…こんな風に、俺たちの相性みたいな事を"ピッタリ"って言うんだぜ?」
唇を舐めながら満足げなグレイが腰と後頭部に回していた腕を離すと、全身真っ赤になったナツは床にぺたりと座り込んでしまった。
グレイを指差しながら口をパクパクさせているが、全く言葉になっていない。
それを見ていたギルドの仲間達は"お前らデキてたのかよ!!っつーかキス長ぇし!!"というツッコミで心が一つになっていた。
「なんだぁ?もっと教えてくれって事か?」
そーかそーか、と勝手に納得したグレイは、"じゃあこれから身体の相性もピッタリだって事も…"などと本気のセクハラ発言をしながら、まだ立ち上がれずにいるナツを抱え上げ、ギルドから出て行ってしまった。
「オイラ、もう知らないよ…」
"8island"から帰ってきたルーシィの叫び声がギルドに響くのは、これから数時間後の事だった。
→あとがき