小話

□eyes on me
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「お前の目、面白い色してるよな」

ナツの瞳は不思議な色だ。

オリーブ色にも見えるし、
日差しを浴びれば琥珀のような光を宿す。

まるで、見るたびに色合いを変化させる猫の瞳のようだった。

「"面白い"ってどういう意味だよ」

頬を膨らませた幼いしぐさで見上げてくる瞳は、
今は部屋の緩やかな光をうっすらと反射している。

「キレイだ、って事だよ」

「・・・なっ?!何言っ…んッ…」

サラリと言った俺の言葉に一瞬固まったあと、
真っ赤になって言い返そうとするナツの言葉を呑み込む様に唇を重ねる。

舌を差し入れると、ビクリと肩が震えるが、
やがてナツの腕はゆっくりと俺の背中に回された。


「っは、…んぅ…」

吐息を漏らしながら不器用に絡んでくるナツの舌は少し薄くて、
やっぱり猫みたいだな、と思う。

「っあ…」

たっぷりナツの口内を味わって、
そっと唇を離す。

肩で息をしながら縋るようなナツの瞳を覗き込めば、
俺の瞳の色をそのまま映しこんでいた。


−こうやって、ずっと俺だけを映していればいいのに−


そう口には出せずに、
桜色の猫をシーツの海に沈めた。


→あとがき
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