小話

□guilt
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ナツの処女を奪ったのは僕だ。

まだ僕が妖精の尻尾に入って間もない頃だから、約3年前。
ほんの悪戯心で、まだ子供としかいえないようなナツに、つい手を出してしまった。


当時からグレイがナツを好きだという事は気付いていた。
そして思いを伝えられずにいる、という事も。

グレイもまだ、ナツと同じように子供だった。
好きだという感情はあっても、相手は同じ男の子だし、
具体的に身体の関係を持つという発想自体が無かったのかもしれない。

しかし、いずれ告白して、両思いになって。手を繋いで、キスをして…
という時間をかけて行う甘い儀式を夢見ていたとしたら、
余りにも酷い事をしてしまったと今でも思う。

でも、心より先に身体を繋げることが出来るのが、大人の特権だ。


確かにナツは性の対象にするには幼かった。
僕がいつも相手にするのは、こういったことに慣れきって、
駆け引きすら楽しんで出来る女性ばかりだった。


大きな瞳に涙を溜めて震えるナツに、
出来るだけ優しく触れて、ゆっくりと身体を溶かしていく。

男になりきっていない未発達な身体と、
何より普段の無邪気な姿とのギャップ。
きっと自分が何をされているのかも、よく判っていなかっただろう。
ロキ、ロキ…と繰り返す、少し高い声が胸に刺さった。

初めて与えられる感覚に戸惑いながらも流されていくナツの姿にすっかり興奮してしまい、
自分は変態なのかと思ったりもした。


事を終えて、僕のベッドで眠るナツの瞼は泣いたせいか少し腫れていて。
薄い胸に残したキスマークを見ていたら、
真っ白なテーブルクロスにワインを零してしまったような…
何とも言いようの無い気持ちに襲われてしまい、処女は「奪う」という表現が一番似合うのだと思った。


それっきりナツと肌を合わせることは無かった。
きっと僕にも罪悪感という気持ちが、ほんの欠片だけでもあったのだと思う。

その後ギルドで二人顔を合わせても、
僕はいつも通り女の子の肩を抱いていたし、
ナツも何事もなかったかのように元気に騒いでいた。



…そして今。
ナツとグレイは付き合っている。
どちらから告白したとか、
正確にいつから、だとかは全く興味が無い。

もうあの頃と違い、ナツもグレイも大人だ。
様子を見れば、既に一線を越えていることは判る。
だけど…


ナツはグレイに初めてではないと伝えたんだろうか。

グレイはナツが初めてではないと気付いたんだろうか。


寄り添う二人を見て、そんな事を考えながら酒を飲む僕は、
罪悪感というものを本当には理解出来ていないに違いない。



→あとがき
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