小話

□Railroad force
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「なぁグレイ、その新型の列車ってホントに揺れねぇのか?」
「大丈夫だって。しかも今までより速いから乗ってる時間だって短くて済む。お前のために手配してやったんだから感謝しろよ」

今日はエルザもルーシィもハッピーも珍しく単独の仕事が入っていて、俺とナツの二人で仕事に行くことになっていた。

依頼の場所までは列車で2時間ほど。
最初、乗り物に乗ると知ったナツは依頼のキャンセルまでしようとした程なのだが、俺としては数少ないナツと二人きりになるチャンス。逃す手はない。

なんとかできないものかと交通手段を調べてみると、最近ジュレネール鉄道が新型の車両を導入したらしいことがわかり、何とかナツを言いくるめて、今は二人で駅のホームで例の列車を待っていた。


しばらくすると構内にアナウンスが流れた。
列車の来る方に目をやると、ホームに到着した列車はなるほど新型らしく、今までの車両とは一線を画す流線型に真っ白な車体。
さっきまで暗い表情をしていたナツも一気に瞳を輝かせている。
行く前の不安そうな表情はどこへやら、ナツは列車のドアが開くと同時に車内へ駆け込んで行った。

窓際の席をとったナツは機嫌も上々。
これなら夜には上手くいけば俺がナツに乗って…などと考えていると駅員が笛を鳴らし、列車はゆっくりと動き出した。

「さすが新型だな。速いのに揺れも少ねぇし、これならお前でも大丈…夫じゃねぇのかよ!?」
隣の窓際席のナツを見れば、やはり酔ってしまっているらしい。
真っ青な顔で口許に手を当てていた。

「…う゛…きもちわりぃ…でも、いつもよりはマシかも…」
「大丈夫か?ホラ、俺に寄り掛かっていいから、ちょっと楽にしてろ」
「…ん」
力無く頷くとナツはこてんと俺に頭を預けて目を閉じた。

やっぱり乗り物はダメか…と無理にナツを連れてきてしまった事を後悔しながら、俺の右肩に寄り掛かっているナツに目をやる。

いつもは盛大に吐き気と戦っていたりするが、今は少しぐったりしていておとなしい。表情は苦しそうなものの、確かにいつもより症状は軽いようだった。

そっと顔を寄せてナツの様子を伺う。
薄く開いた唇からは乱れた吐息が漏れ、時折眉を寄せては睫毛がふるえる。

゛あ、なんか俺とシてるときの顔みたいだ…゛

そう考えてしまってからはもうムラムラしてきて止まらなくなってしまった。

゛他の席の客からは見えないし、キスくらいならいいよな…゛

自分にゴーサインを出して俺の唇がナツの唇に触れる瞬間。

車内にアナウンスが流れた。

「!?もう着いたのかグレイ!?」
飛び起きたナツに、俺の欲望は無情にも吹っ飛ばされた。

「やっぱ速いな〜!」
目的地に着き、ホームに降りて背伸びするナツを横目に、新型車両に恨みを送る。

速すぎだっつーの…。

「グレイ」
急にナツに呼ばれる。

「また、一緒に乗ろうな!!」
全開の笑顔で言われてしまえば、敵わねぇなと思うしかないのだった。


→あとがき
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