【F2119】URA

□「Be crazy」
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翌日、またまたナミがすっとんきょうな声を教室であげていた。しかも朝から。
「今日も休みなの!? あのルフィが!?」
「そうみてェだな……」
ゾロは少しばかり後ろめたく、驚きまくりのナミ達から視線を逸らせてしまう。
昨日のセックスのせいだとは思えないのだが、ルフィにとっちゃとんだ見舞いになったことは間違いないので……。
「ルフィ元気だったんでしょ?」
「ああ。風邪でもインフルでもないそうだ」
「なんなのかしらね〜ホント」
不思議だなーとウソップもサンジも首を捻る。
しかし、翌日にはケロッとしてルフィが登校してきて、一同は安堵の声を漏らすのだが。
そのルフィは開口一番、
「初めて2日も休んじまったよ! あーもう超暇だった……!!」
やっぱり元気溌剌だった。
「もうっ、心配させないでよねルフィ〜」
「悪りィ悪りィ」
「心配料3000ベリーね」
病み上がりから徴収……!とクラス中が激震したがムードメーカールフィの帰還(大袈裟)はみんなを浮き足立たせる。
大した影響力だよな、と毎度感嘆するゾロである。
このカリスマを組み敷いていることに優越感を感じるのは、いいことなのか悪いことなのか。
悪くてもやめねェけどな……。←魔獣
「ルフィが2日も学校休むから天変地異の前触れか?って言ってたんだぜー!?」
ウソップが得意の誇大発言するなりルフィの肩をバーンと叩いた。
途端にルフィが「うおっ」とよろけたので、慌ててその肩をさする。
「わ、悪いルフィ……! 大丈夫か!?」
「大丈夫だぞ? な、なんだよウソップ、おれカヤみたいに体弱い奴じゃねェって〜」
「そりゃそうだけどよぉ……。な?」
とウソップがサンジに目配せすれば、
「ああ。マジでお前、なんかの病気じゃねェか? 精密検査した方がいいぜ」
と心配げな顔で言われてしまい、ルフィはへにょりと眉を下げた。
「病気じゃねェもん……」
「ほんっとーにほんとーに??」
3人に詰め寄られるも神妙な顔でコクンと頷く。
「もしかしてルフィ、原因わかってるの……?」
ハッとしてナミが言ったところで始業のチャイムが鳴ってしまい、この話は中途半端に終わった。


それからも、ルフィはたまーに熱を出しては学校を休んだ。
その度、クラスの士気が下がるのを誰も止められない。
ゾロもいい加減これはただ事じゃねェ、とルフィを気遣うようになり、周りに至っては腫れ物にでも触るような態度になってくる。
「なんか困る……」
ある日の放課後。
今日はゾロの部屋にルフィが遊びに来るなり、本当に弱り果てたようにそう言ってごろーんと大の字に転がった。
そしてらしくもないため息を、盛大にはぁ〜〜っと吐いて。
「なんか飲むかルフィ。最近暑いからな。何でも言え、なけりゃ買ってくる」
「それ……!」
「?」
「おれに気ィ使うのやめろ! ゾロのクセに気持ち悪い!!」
「気持ち悪いまで言わなくても……」
「ごめん……。でもいらねェから。ダイジョブだから」
「ならいいけどよ。……おれ達に気ィ使われんの、そんなに困るか?」
「うんいやだ」
「けど最近のお前見てるとなァ……。奴ら、口も態度も悪いがお前んこと好きだからよ」
「ん〜〜」
「納得いかねェか……」
ルフィはぶっちゃけ中性的で女のように細いが、心意気は誰より男なのだ。
だからナミに奢ってもらったり(奇跡)、サンジに精のつく弁当作って貰ったり(男相手にこれも奇跡)、ウソップに大ボラ吹きで励まされたり(ホラは通常装備)、クラスの連中にまで気を遣われたりでは、男として情けないに違いない。
そんなことを一度もしなかったゾロまでが彼女にするように優しく接してくるのだから……尚更。
ゾロもルフィの横にごろんと仰向けに寝転がると、頭の下で腕を組んでため息混じりに「悪かったな」と謝った。
すりっと抱きついてきたルフィが「ううん」と首を振るので、黒髪がゾロの首筋を撫でる。
ちなみに二人きりになったら何をするでもなく、こんな風にくっついてばっかりだ。
「ルフィ」
「ん?」
「熱の理由、わかってんのか? だから余計心配されたくねェんだろ」
ゾロは核心を突いてみた。
「……し、知らない」
「……そうか」
ルフィは嘘が下手なので、それは逆に「知ってる」と言ったようなものだ。
けれどルフィが言いたくないものを無理に聞く気もない。
ゾロはルフィをそっと抱き締め、しかし覆い被さっていくと薄く開いた唇にキスを落とした。
その唇を啄みながら片手だけでルフィの夏制服の、その白いシャツのボタンを一つ二つと外していく。
実は昨日もヤったのだが、十代の性欲は尽きないもので……。
「ゾロ……? んっ」
いきなり舌を絡め、きつく吸い上げる。
掌をシャツの中へと滑り込ませ胸の突起をぷにぷに引っ張ったら、すぐにピンと立ち上がりルフィの腰が僅かに揺れた。
「ふ、ハァ……っ。ん、ゾロ好きー」
「ルフィ、おれも──」
「だけど……っ、ちょーっと待ったァーーっ!!!」
「!!?」
まさかの“待った”にゾロはガバリと顔を上げた。
「ごめんダメだ! 今日はダメなんだったよ……!」
「は!? 帰るのか? 兄貴が待ってるとか? それともじいちゃんが──」
「ち、違う違う! だって明日の体育プールだもん! おれカナヅチだけど超楽しみにしてんだっ!!」
「だから……?」
「だから、熱出して休んだらプールできなくな──、あ…いや、なんでもねェ……」
「そりゃ熱出るのがわかってるような口ぶりだな、ルフィ」
「ぁう……」
「おい、答えろ」
「うぅ〜」
「今日ヤったら明日熱が出ると」
「うん……」
「そうか、そうだったのか……。何で気づかなかったんだおれァ……アホか」
サンナミに責められるのも無理ない、これじゃ確かに彼氏失格だ。
「ゾロ、あ、あんな……?」
「よく思い出してみりゃ、おれらがヤり始めてからだ、ルフィが熱出して休むようになったのは……」
「ゾロ〜…。だ、だからよォ」
「2日続けてヤった次の日には必ずルフィは熱を出す、ってことか。そうだろ?」
「ゾ、ゾロは悪くねェ!!」
「けど半分はおれの責任だ。いや半分以上」
「でもっ、でもでも!」
「どうして気付いた? 前にわかんねェって言ったよな」
「……あのえっちした日、エースに“ヤりすぎ注意”って言われて……そんで気付いた。あ、でもバレたんじゃねェんだ! おれに彼女いると思ってるみたいで」
「何で気付いたときすぐおれに言わなかった?」
ゾロは体を起こすと胡座を掻き、ルフィに背を向けた。
不甲斐ない自分に腹が立つ。
「おれのためかよ。おれがこうやって責任感じちまうと思って──」
「おれもゾロとヤりたかったからだ!!」
ゾロの言葉を遮るように、背中に張り付いてきたルフィはそう言ってくれる。けれど、ゾロにはそれすら自分のためではないかと思ってしまう。
「お前もおれに気を使うことはねェ。付き合い始めた頃どっちが上かで1ヶ月も揉めたのに、最後はおれが、しかも強引に……」
「でもちゃんと納得して抱かれたんだ。だからゾロのせいじゃねェ。……こっち向けよ、ゾロ」
小さな声だけれど、抗えない強さがそこにはあって、こんなときゾロはルフィの器を思い知らされるのだ。
「ルフィ……」
振り向いたゾロに遠慮することなく、ルフィはぎゅうっと体中で抱きついてきた。
そして、言った。
「その内きっと慣れる! おれが丈夫なの知ってんだろ!? これはあれだ……知恵熱の酷いヤツみたいなもんだ。だからヤり続けてりゃ2連チャンが3連チャンになって、3連チャンが4連チャンになって、そんでもって5連チャンになって……!」
「週7でもいいのか?」
「それ毎日って言わねェ!?」
「おれは毎日でも抱きてェが、とりあえず明日のプールのために今日はやめとこうな」
「うん! ありがとうゾロ!」
「いや礼を言いてェのはおれだから」
「なんで??」
「おれが思ってるより、ルフィは嫌々おれとヤってるわけじゃねェとわかった。ありがとうな」
「ゾロうまいもん……」
「……誰かと比べてねェよな?」
「だったら最初からゴネねェだろ!!」
「そりゃそうか」
何気にライバルが大勢いたりするので。ルフィには絶対教えないけれど。
「今日は掻き合いして終わるか」
ゾロが提案すれば、ルフィも「賛成ー!」と万歳。
さっそくルフィのベルトを外し、前を寛げる。
「おれも!」
と同じようにやろうとしたルフィは乱暴者だから、チャックが布を噛んでなかなか進まないのはいつものこと。
それでもどうにか取り出したお互いのモノは、既に反応を始めているのだから若さだよなァ、と苦笑し合い、どちらからともなく唇と唇を寄せた。
そう言えば、二人が自分の特別な感情に気づいたのも今みたいにいつの間にかキスしたときだった。
会話が途切れ、それでも心地よい空間が二人の間にはあって、見つめ合っている内に唇と唇が重なった。
これは何か変だ、と思う前に“恋人同士になる”という結論に達したのは、思えばこの二人には奇跡に近い。
「……んっ。おれ、ゾロの手好きだ〜」
「ヘェ、初耳だな。ルフィは横着だから丁寧に頼むぜ」
「御意」
さっそく勃起しまくった互いのペニスを二人でしこしこ扱く。
ルフィはあっという間に真っ赤になるから、可愛くてヤバイ。
「ゾロきもち……?」
「ああ」
2本のソレはくっつかんばかりの位置で天を向き、両方の鈴口からはトロリと透明の液が溢れ、相手の手を濡らしていた。
つまり一目瞭然、聞くまでもなく“キモチイイ”。
「ハッ……ハァッ、ゾロっ」
「痛つッ。おいルフィ、ちから入れすぎ」
「ごめっ、だってよ、気持ちよすぎて……」
「まぁおれもだけどな」
好きな奴にされれば、それだけで。
ゾロがルフィの俯き加減の顔を上げさせたら「見んな」と文句を言われるも、聞いてやれない。
これもゾロのお楽しみの一つなので。
「ししし……っ、ゾロの気持ちヨさそうな顔も好きだ。カッコイイ」
「お前も見るな」
そうゾロが言ったからではないだろうけれど、ルフィがぎゅっと目を瞑って空いた手でゾロの腕を掴んできた。
「あぁん……っ、おれ負けるっ」
「勝ち負けじゃねェから……」

とか、そんなこんなで。
散々いちゃいちゃしながら慰めあいっこして、たくさんキスして。
当面、2連チャンするのは休みの前の日だけ、と二人で約束した。

結論。
まさか、ルフィがセックスにそこまで弱いとゾロは思ってなかったが、こんな出来事もいつかはいい思い出になるんだろう。
ルフィを自分のモノにしておく、ということはイコール“一筋縄ではいかない”ということなわけで、今後も心して掛かろうと思う。
そしてますます骨抜きにされるに違いない……。

「おれなんざ毎日毎日熱出してるようなもんだぜ」
「へ…? ゾロなんか言ったか?」
「さぁな」


Be crazy──

いつもお前に熱を上げている。



(END)


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