【F2119】URA

□「ちょうちょうむすび」
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おしろいすらつけていない白い肌に、ゾロは赤い痕をいくつも残した。
綺麗に浮いた鎖骨に、桜色の乳首の周りに、脇腹に、へその脇に。それから腰骨の上にも足の付け根にも、太ももの裏にも……。
「やっと勃ったなァ」
「悪かったな! 子供で!」
ルフィの体はまだまだ未熟だったのだ。
それをゾロの手で、指先で、唇で舌で、丁寧に丁寧に大人にしていって。
ルフィはそりゃもうびっくりして痛がって暴れてくれたが、ゾロのモノが硬く勃ち上がっているのを目の当たりにするや「おれもこんな風になりたい!」と、予想外なことを言い出してからは素直にゾロの愛撫を受け、感じるようになっていった。
「でも気持ちいい……。おれ全然知らなかったからびっくりだ。すげーじんじんしてる……」
「先っちょ真っ赤になっちまったなァ。舐めすぎたか?」
「ちっとヒリヒリしてるけど平気だぞ? これどうやって戻すんだ?」
「何回か出せば戻る」
「出せば……」
「まだなんだよな、お前」
精通すらまだなのだ。こんなに裸の女がウロウロしているだろう妓楼で反応することなく、真っ更なまま見世に放り出された。
本来の遊女ならば、手練た常連客が処女を奪う習わしになっているそうだが、ルフィは男だ。その辺の気遣いはなかったとみえる。
ゾロは柔らかな内股をペロリと舐めちゅうっと吸って、小ぶりな2つの珠を掌で転がすと、朱いサオの裏筋を下から上へ舐め上げた。
「あっあっ」
ルフィがゾロの緑髪を掴んでくる。構わず咥えこんで上下にしゃぶる。
それからぢゅるるっと吸ってやると、先端から温かい粘液がほとばしり、ルフィが初めて達したのが解った。
「はっ……ん〜っ!」
こくこくと全部飲み干すと喉に苦味が広がるも、なぜだかそれを甘いとも感じる。
「……おめでとう」
だよな? ここは?
「へ、ハァ……ありがとう。なんか出たァ……」
「大人になった証だ」
「そ、そうなんか!? おお〜」
ゾロが体を起こしてルフィを見ると、真っ赤なほっぺたでニコニコしていた。
「お前もやってくれよ、おれがしたように」
「ん!? あそっか! して貰ってばっかじゃダメだよなー」
今夜はそれで勘弁してやろう、とゾロは考えていた。
ルフィの口でのご奉仕にもゾロがあーしろこーしろ言わなければならなかったが、ルフィは大きくなったゾロのモノを口いっぱいに頬張ってそれはもう頑張ってくれた。
ようやっとイカせたときには達成感でいっぱいだったらしく、ゾロにキューッと抱きついて、スリスリして来て。
慣れさせたくはないのにこうやって自分が男に免疫をつけていくのだ。複雑な気持ちになる。
その夜もゾロはルフィを抱きしめ眠りについた。朝の4時が後朝(きぬぎぬ)で、見世を追い出される時間である。
その短い時間を、ゾロは生まれて初めて惜しいと感じた。


翌日の夕刻も、ゾロは約束通りにまたルフィの元を訪れた。
ルフィの位は大見世ならば下級だが、小見世ではそれなりの女郎だ。男なので、他の客と相部屋に出来ないのが理由だろう。面白くないと思う姉遊女もいるかもしれない。
それよりいつまで資金が持つとも知れないので、今までは手をつけなかった小物を斬らなきゃならない日が来るかもしれない。
けれどルフィに逢うためだと思うと、ちっとも苦にならないのが不思議だった。
「ゾロだー!!」
「まだ3回目なのにえらく大袈裟な出迎えだなルフィ」
「だって嬉しいんだもん」
「懐かれたもんだ……。昼見世には出てたのか?」
「出てねェ。起きられなくて怒られたけど。けどどうせ昼の客はほとんどいねェし」
「お前は怒られてばっかだな……。来れそうなら昼も来てやる」
「ホントか!? ほんじゃ一緒に飯食おうな〜。おれいっぱい食うから嫌がられてんだよ、元取れてねェって」
「食費までかかんのかよ……」
「裏方んときはつまみ食いに命かけてた!!」
「ハハ、目に浮かぶぜ。客引きとかはやってなかったのか?」
「下男がやること? 最初はやらされてたけどおれ失敗ばっかするし、喧嘩もするし速攻クビんなっちまった……」
「そして最後にゃ遊女か、なるほど……」
「納得すんな!」
ぷんぷんするルフィに悪ィ悪ィとゾロは笑う。そんなゾロを見て、ルフィはきょとんとすると「ゾロかわいー」とか言うので眉間にシワを寄せる。
「可愛いのはお前だろうが」
「おれ可愛いか? あ、髪飾り似合ってる!?」
「全然似合ってねェ」
「ガク……」
「髪飾りなんかなくても、女モンの着物なんか着てなくても、ルフィはそのまんまで充分だ」
くしゃくしゃと頭を撫でるとルフィがくすぐったそうに肩を竦めて笑った。
遊郭なんかに売られなければルフィは普通の男として外でもりもり働いて、嫁でも貰っていたろうに。
けれど、でなければ、ゾロはルフィに出逢えなかったのだ。
丸いルフィの顎を掴み、顔を寄せるとつやつやの唇にくちづけた。
ちゅっと離して、また塞いで。腰を抱き寄せると深く重ねた。
「……ッ?」
思えば初めてルフィにくちづけをした。
舌を差し入れ熱い口腔を優しく撫でる。
すがりついてきたルフィを逆に畳へ押し倒し、早急に帯の蝶々を解きながら、ルフィの舌をきつく吸うと喉の奥で小さく啼いた。
着物の袷を開いて始めからルフィの中心を握って、やわやわ扱く。
「んっ」と腰を揺らすルフィが可愛くて手の速さを増す。
やはり今夜もルフィの体を求めてしまった。
ルフィは男なのに、女のように扱っていることに戸惑いがある。
本当にルフィはこのままでいいのだろうか……?
けれど望んでないにしろ、ルフィは自分で決めてこの世界へ飛び込んだのだ。
「んん、ふぅ…っ」
ちゃんと考えてやりたいのに肉欲がゾロの思考を鈍らせる。
貪り続けていた唇を名残惜しげに離すと、ハァハァと苦しげなルフィの濡れた唇とか、潤んだ瞳とか、上気した頬にゾロの劣情はそそられ尽きることがない。
「ゾロ……? おれ──」
「今夜も触ったり舐めたりしていいか?」
「うん……。色を売るのがおれの仕事なんだもんな……」
「正直に言っていいぞ。ルフィが嫌がることはしたくねェ」
「嫌じゃ、ねェ」
ぎゅっとゾロの首に細腕を回して来るルフィを、愛しいと思う。
こんな感情は生まれて初めてだ。
女郎なんかに入れあげて、自分も随分と地に落ちた。
まだたった数日買っただけの相手をこんなに離したくないと思うなんて──。
「今夜は一緒にイクか?」
「へ? どうやって?」
ゾロは添うように寝ると、自身を取り出しルフィのとひとまとめに握り込む。
それを見たルフィがそういうことか!という顔をするのが面白い。
共に手を添えてくる積極性を微笑ましく思いながら、その夜は仲良く一緒に果てた。
そのまた翌日も、その翌々日も、二人は触りあったり舐め合ったり、共に欲を開放することに没頭した。回数も増えてきた。
昼見世にも登楼するとルフィはそれは喜んで、お天道様が昇っている昼間っからゾロはルフィの体に触れた。
けれどそんなある日、夜見世にいつものごとくゾロが現れると、
「ゾロの浮気モン!」
とんでもないことを口走るルフィにゾロは切れ長の眼を瞬いた。
「誰が?」
「ゾロが! 昼間、他の女買ったろ!!」
「今日の昼間は久々に仕事だったぜ」
嘘ではない。狙っていた手配書の情報が舞い込んだので、ちゃっちゃと斬ってきた。ルフィを怖がらせたくなくて自分が賞金稼ぎであることはまだ告げてない。
「だって姉さんに聞いたもんよ……。ゾロに選んで貰ったって言ったんだ。ゾロはおれの常連だから本当は掟破りだけど、自分もゾロが好きだからって……!」
「その遊女がおれをどう思おうがおれは元々遊女に興味はねェし、抱きたいと思ったこともねェ。だから買ってねェよ」
ルフィは騙されたんだろう。たった一人の客とだけ寝てればいいルフィに嫉妬して、怨めしくて思って、それでちょっとからかったのだ。
「でもおれんこと抱いてるじゃんか……」
「まだ最後まで抱いてねェ」
「うえ!? えっ、なんで!? つーかおれ毎晩イってるぞ!?」
「そうだ、まだ前戯だ」
「ぜんぎ……と言いますと……」
「お前この環境で育ってほんっとになんも知らねェって奇跡だな……」
「ごめん……」
「何謝ってんだ」
「だって男に抱かれるのがおれの仕事だもん」
「客殴ったの誰だ」
「……おれ」
「女郎やってても抱かれたくねェからおれを待ってたんだろうが」
「そうだった!! あれ? じゃあ、ゾロはおれが嫌がると思って最後まで抱いてくんねェのか?」
大きな目をぱちぱちするルフィの頬にそっと指で触れ、ゾロは真摯に目を細めた。
「それがルフィの信念なら守ってやりてェ。ただでさえこんな駕籠の中で自由もねェんだ、ルフィの意思くらい尊重してェ。本当は触る気もなかったんだが……悪いな、おれも男なんだよ」
「……」
ルフィがぽかぁんと口を開けてアホ面しているので、ゾロはブッと吹き出してしまった。
「何とか言えよアホ」
「好きだ……」
「あ?」
「ゾロ大好き!!」
ガバァッと抱きつかれてゾロはその背をポンポンとあやした。
ルフィの世界はとても小さく、その小さな場所は今ゾロでいっぱいなのだ。それをとても悲しく、可哀想に思う。
では、真の意味でルフィを救うには……?
自分は何をしてやれるだろうか。何をすべきなんだろうか。
「ありがとうよ、ルフィ」
「うん! おれゾロにだけは抱かれてもよいよ。ゾロだけがいい」
「それ前にも言ってたよな」
「抱いてくれよ。おれゾロに抱いて欲しい」
「……多分痛ェぞ? 抱かなかったのはそれもある」
「全然平気だ!」
「……了解」
軽いルフィの体を抱き上げると寝間へと運び、そっと横たえる。
いつもの手順で蝶々結びの帯を解き、赤い着物を肌蹴てすべらかな肌に掌を這わせる。
ここ遊郭にあって、未だ無垢な奇跡の存在を、ゾロは今から抱くのだ。
そのどうしようもない歓びと欲情を持て余しながら、ゆっくりとゆっくりとルフィを溶かしていった。


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