【F2119】URA

□「門限と藪ヘビ」
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「ゲーム飽きたー!!」
「お前はすぐ飽きちまうよなぁ」

ゾロに嘆息され、ルフィは17にもなってぶくうとほっぺを膨らませた。
ゾロは大学生だし、知り合ってまだ1ヵ月なのでどんな子供時代を過ごしたのか知らないが(ていうか過去のことは聞かない)、ルフィはガキのころから野山で遊ぶワンパク坊主だったのだ。一ヶ所でじっと何かをするのは、性に合わない。
上に兄が二人もいるせいかよれば喧嘩さわれば喧嘩だし、短気で怒ると手がつけられない、と人からはよく言われる。
今はゾロの独り暮らしのアパートで、親代わりの兄も同級生の目も届かない所にいて、それが多感な時期のルフィを浮き足立たせていた。
ゾロは今まで友達になったどの友達ともちょっと違う、一緒にいるだけでなぜかドキドキする相手だった。
「今、何時だ?」
ルフィがキョロキョロして言うとゾロが壁時計を見上げた。
「4時すぎだな。門限まではまだあるぜ、何する? なんか食うか?」
ルフィの門限は夜6時ときつーくきつーく言い渡されているのだ。別に過保護なわけでなく、ルフィの家はコルボ山の天辺にあって、猛獣が出る危険区域だからである。夜道は命にかかわる。
「ん〜買い食いしてきたからなぁ。ゾロ勉強はいいんか?」
「ああ。……もう帰るか?」
「帰らねェ!」
「ま、好きにすりゃいいが、また時間忘れて兄貴に怒られんなよ? 怖えェんだろ……」
「そーなんだよ〜、特にエースがなぁ……。でもサボは優しいし大丈夫大丈夫!」
「ホントかよ」
「ゾロってなんで彼女いねェの?」
「突然話を飛ばすな……。おれァ今の大学に剣道やりにきたんだ。そんなめんどくせェもん作ってられっか」
「今日はたまたま練習なかったんだよな、ラッキー!」
それを聞いたルフィが学校終わり、制服のまま遊びに来たのだった。
んじゃなにすっかな〜、とルフィはベッドのへりにもたれ、ぐんっと両腕を伸ばしてのびのびのびー。
同じように隣に座ったゾロがクスと笑うので、ゾロを見て「ししし」と笑った。
「お前こそ女作らねェのかよ」
「おれもめんどくせェ」
「ルフィらしいな。彼女いない歴年の数か」
「いーじゃんか別に!」
「ワルいっつってねェだろ」
「おれ、チューもしたことねェ……。ゾロは?」
「それなりに」
「だっよなー! んん、彼女かぁ……」
彼女ができたら、ゾロといるときとは違うドキドキに見舞われたりするんだろうか。きっとするよな、彼女は女で、ゾロは男だもんな。
「ルフィ、彼女はいらねェけどキスとかセックスは興味あるクチか?」
「!?」
見ればゾロがなんだか悪い顔をしててルフィは目をしばたたいた。兄ちゃんとたまに下ネタで盛り上がったりはするけれど、自分がしたところは想像したことがない。
「ねェか、ルフィはお子さまだもんなぁ」
「あ、あるよ! 興味くらい!」
「へぇ……」
ニタニタ。
……その顔やめろ。
そして、次に飛び出した二人の台詞は、なんと全く同じものだった。

「してみていいか?」

互いの瞳を覗き込み、にやりと笑う。
それから顔を寄せ合って、軽く唇を触れ合わせた。
二人とも目すら閉じない、ただのおふざけに過ぎないキス――。
「ルフィのクチ、あったけェ」
「ゾロはなんかカサカサしてる」
「そうか? お前のが柔らかすぎんだ」
つやつやだしな、と下唇に指で触れられ、ルフィは益体もなくもっかいしてェなぁと思った。
「やわい? 気持ちワリィ?」
「全然」
「んじゃ……」
なんだかルフィはワクワクしてきて、ゾロの頬を両手で挟み込むとクチをぶつけた。途端にガチッと前歯と前歯が当たって二人して口を押さえる。
「イテテテテ……」
う〜っと呻くも、目が合うなりゲラゲラ笑う。
「次、おれな」
ゾロの手がルフィのほっぺをするんと撫でるなりキスしてきた。
今度は歯は当たらなくてルフィは内心面白くなかったけれど、唇をわずかに触れさせた位置で「目は瞑るもんだ」と言われ、素直に目を閉じる。
ルフィの下唇をゾロの唇が挟んでくる。さっきまで普通にゲームしてたのに、ちょっと不思議な気分だ。
僅かに開いた相手の口からチロリと覗いた舌先が、ルフィの白い前歯を舐めてちょっとびっくりした。
キスってこんなこともすんのかぁ、と晴天の霹靂だったからだが、そう言えばでぃーぷきす≠ニか言うのもあんだよな?と思い自分もべっと舌を出してみる。
ベロの先っちょと先っちょがくっついて、ぬるりとした感触……おおなんか変な感じだ、と思ったら相手の舌がさらに口内に侵入してきて、ルフィの舌を軽く吸ってくるからまたビックリした。
「んぁ……?」
ちゅっと濡れた音。
ルフィはハッと息をつくと、ゾロの脇腹あたりのシャツをギュッと握った。
そうしないとなんとなく置いてかれそうで……。
「ん、んんっ」
尚も口の中のゾロの舌は歯列も上顎もあちこち隈無く舐め尽くして、いい加減息が苦しくて、
「ゾ、ロ? …くるちぃ」
その声がいやに甘ったるいような気がして落ち着かなくなった。
なんだろ、これってフツーのことなんだろうか……。
それともただふざけてるだけなんだから、いいんだろうか。
「空気吸え、ルフィ」
ちょっとだけゾロが隙間を開けそう言ってくれたので、大きく息を吸い込んだらまた唇を捕らえられ、深いくちづけにとうとう頭の芯がぼうっとし始めた。
ああー…わかった、気持ちイイんだおれ……。
男とキスしてもキスはキスなんだ。それともゾロとおれだから??
ちゅくっ、ちゅう、と可愛らしい水音が部屋に充満してくる。
ルフィは無意識のうちにゾロの首に腕を絡みつけ、片足をゾロの腿に乗っからせていった。
「ハァ……ん、んんっ、んぁ」
呼気が忙しなくなってくるともう夢中で舌を絡めてゾロのキスに追いつくのに必死だ。
巧みなゾロの舌使いにもっていかれそうになりながらも、ルフィはどうにか理性を繋ぎ止めることに成功している。
「ぷはっ、ハァ…ハァ……すげかった」
ようやく唇が離れ、濡れた口許をぐいと手の甲で拭った。
と、ゾロの光りを帯びた唇が目に飛び込んできて、腹の奥がきゅうんっと熱くなる。
あ、こりゃヤベェな……。ちんこムズムズする……。
「大丈夫か?」
問われてコクコク頷くも、ルフィはゾロの首に回していた手でその胸を押しやり、開いていた足をモゾモゾ閉じた。
ゾロ気づいた、かな……?
「ん〜、気持ちかった」
「そんならよかった」
「……」
「勃っただろ」
「げっ!! やっぱバレた!?」
「だから大丈夫かって聞いたんだろうが」
「うへェ〜…。だ、大丈夫だこんくらい……」
「抜いてきていいぞ?」
「いやだ!!」
いや、いやじゃねェけど、カッコ悪すぎる。
フリフリと頭を振ったらなぜかゾロにギュッと抱き締められ、またまた唇を塞がれた。
「!? んっ!?」
これもふざけてる内か!? そうなんか!?
ゾロが男のダチ相手にマジでキスするとは思えないから、いつもの悪ふざけなんだよな?とルフィは思い直し、ぱちりぱちりと瞬きしていた目を閉じる。
またするっと入ってきたゾロの舌にきつく舌を吸われるまま、あーもういいや…と理性を放棄して、またゾロにすがりついていった。


そうかな、と思ってあやふやにしてきた自分の気持ちを、ゾロはルフィとのキスで自覚する羽目になった。
ルフィのあちこち跳ねた黒髪を五本の指で梳きながら、そうっと、重心を前にかけて床に押し倒していく。
それでルフィが抵抗するならやめようと思ったが、ルフィはびっくりするくらい大人しく、ゾロが服の上から胸を撫で回しても何も言わなかった。
それどころか腰をすりつけるように自分の腹に押し付けてくるので、それに勇気付けられ胸にあった手を下へ下へ……制服のズボンの前立ての上から股間を握る。
ルフィがビクンと背を反らせ、けれどついぞ抗議の言葉は発しなかった。
二人の唇と唇の合間からルフィの呑みきれなかった唾液がその頬を伝う。
それを追うようにゾロは舌先で舐め取ってやり、髪をかき混ぜていた手でさっきルフィがしたように、ぐいぐいとルフィの頬と口を拭った。
「完璧勃ってんな」
もう片方の手は依然ルフィ自身を捕らえているので、やわやわ形をなぞるように、そして快感を誘発するようにさすって確かめる。
「…ぁ、…あっ」
真っ赤なルフィの頬にチュッとキスしつつも窮屈になってきているルフィのベルトを外し、ファスナーをジジジ、と下ろした。
直に触ったらさすがのルフィも怒るだろうか、とゾロの少しの躊躇がルフィの意識を浮上させ、うつろなその瞳とぶつかってしまった。
「ゾロ……なぁ」
「ん?」
「こんなん、おかしい、か? おれら悪いこと…してんの?」
いつも高いルフィの声が熱にしゃがれて更に上ずっている。薄い胸はさっきから上下に喘ぎ、息は乱れっぱなしだ。
このままではルフィが辛いと思うのだが……。
「よくは……ねェだろうな」
「このまま続けたらさ、ゾロ、おれにどんなことする?」
「やってみねェとわからん」
「おれやめたくねェ……。ゾロといるといっつもドキドキしてっけど、今がいっちばんドキドキしててよ……そんで、気持ちイイもん」
「……わかった、続けるぞ。ルフィは悪ふざけだと思っときゃいい」
「うん…」
ルフィが頷くのを見届け、ゾロはルフィを横抱きにした。それから軽々持ち上げてベッドへそっと下ろす。
自分はルフィに添うように寝て、ルフィの開襟シャツのボタンを手早く外していった。
ルフィが自分といるとドキドキする、と言ってくれたのだけが、ゾロの一縷の望みだ。
同じ想いでいてくれよ、と祈るような気持ちでルフィの首筋に顔を埋めながら、生の胸に掌を滑らせていった。


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