【F2119】URA

□「結果オーライ」
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コイツを抱くのは何度目になるのか、ヤるのは決まってルフィの部屋だった。

6畳ほどのルフィの部屋はいつも散らかりまくってはいるが、自分の部屋と対照的なのに不思議と居心地がよく、ゾロはしょっちゅう遊びに来るようになっていた。
高校は同じだが特に接点はない。ゲーセンで知り合って、まとわりつかれるまま放っておいたらルフィの奴がよその連中と喧嘩をおっ始め、結局知らんぷりできなくて加勢したら警察を呼ばれ、一緒に逃げた。
逃げ込んだのがこのルフィの家だったというわけだ。
自分達は性格も対照的なら容姿も対照的、ぼくとつとしたゾロと違いルフィは人懐こく愛嬌があって、コイツでなければ自分となど付き合わないんじゃないかと思う。
しかも、ルフィの部屋へ来るようになって2度目にして、ゾロは彼を求めた。
その理由などよくわからないままルフィが抵抗しないのをいいことに、もう幾度となく彼を抱いている。

「ハァ…ハァ…、んっ」
ルフィの荒い息づかいが耳元に聞こえる。
熱くてしなやかな体は成長途中のもので、どことなくまだ柔らかさを残している。
ゾロがぎゅっとルフィを抱き締めたままそのアナルに突っ込んだ分身を出し入れするのに、ルフィは今まで嬌声というものをあげたことがない。
前戯でチクビを舐めたときも、ペニスを擦ったときも、それらの性器は反応こそすれ、甘い声をあげることはなかった。
いつもきつく唇を噛み締めていたり、ハァハァと荒い息を継ぐだけで、普段くだらないおしゃべりをする口が言葉を発することはないのだ。
だからイイのかヨクナイのか、鈍いゾロにはわからない。
嫌悪感すらルフィは伝えてこないから。
ただゾロには物凄く気持ちいいので、彼を抱くのをやめる気は全く起きないのだった。

「ふはっ、ハァ……、…っ」
忙しない互いの息づかいとベッドが軋む音。
体温だけは確実にその高さを増していく――。

「なぁルフィ」
「ん、ん?」
いつもならそのまま彼の中に果てるまで攻め続けるところを、ゾロは初めて中途半端に動きをとめた。
動きをとめるときは体位を変えるときだけだったので、意味もなく顔を伺い見てきたゾロに、ルフィが初めてセックスの途中、きつく閉ざしていた瞳をうっすらと開けた。
「ルフィお前……」
「もーバカっ!!」
「はぁ!?」
ついでにガンっと拳で肩をどつかれる。結構痛い。
「とまんなよ…っ」
そのルフィの訴えは小さかったが、軽く怒気を含んだものだ。
つまりさっさと終われと、そう言う意味だろうか。いやそうに違いない。
なぜなら挿入している最中ルフィのナニが勃起していたことなど、今まで一度もなかったのだから。
やはり今も……触れてみたルフィの下肢は一度は口でイかせてやったものの、ふにふにしていてちっとも反応していなかった。
――そうだよな、早く終わらせてやった方がコイツのためなんだ……。
そう思い、ゾロは上体を起こすとルフィの細い両足を大きく広げた。
自分をすっぽりくわえこんでいる部位に視線を落とせば桃色に熟した性器にまた欲情してしまい、ぐんと体積を増す己の利かん坊にチッと舌を打つ。
「……!」
ルフィがまたぎゅっと目を瞑った。
一旦引き、ガツッと押し込むとぐっと下唇を噛むのが見え、少しばかりの罪悪感を味わうがそれでも早くイってしまおうと、ゾロはガツガツ腰を打ち付けた。
「ルフィ、なぁ、つらくねェか……?」
「んっ、ハァ……ハッ」
顔を真っ赤にしながらルフィがかぶりを振った。それからまた忙しない息を吐き、白い胸を喘がせる。
強がりだとは思うもゾロは早いスパンでルフィを攻め続け、時たまぺたんこの胸を撫でて淡色のチクビを摘みつつ反対側のチクビに吸いつけば、きゅっとアソコを絞めつけてくるルフィに後押しされいよいよ決壊のときを迎えた。
「ルフィ…っ、出すぞ」
こくん、とルフィが頷く。そして両手を伸ばしてくる。
こんなことは初めてかもしれない。
その潤んだ瞳も、濡れた唇も、汗ばんだ肌もめちゃくちゃ色っぽくて、ゾロは誘われるように赤いほっぺにキスした。
「あっゾロ…」
まさかこんなキスで自分の名を呼んでくれるとは。
思いもよらなくて、小さく啼いたルフィを可愛いなぁなどと恋人にでも持つような甘い感情に首を振りつつ、ゾロはルフィが自らゾロの背に腕を回し爪を立ててくるのに、痛みから顔をしかめた。
咎められたのだろうか、それとも……。
増す射精感。
ルフィをきつく抱きすくめいっそう荒々しく抽挿を繰り返しながら、ゾロはその中にありったけの欲望を吐き出した。


「今日のゾロ、早かったなァ」
「ぶっ、ゲホゲホ!」
喉の渇きを買ってきておいたミネラルウォーターで潤していたゾロが、景気よく噴き出した。
「ダイジョブか!?」
噎せまくるゾロの背をさすってくれるルフィはまだすっぽんぽんで、少々目の毒である。
「悪かったな……。いいから早くなんか着ろ」
終わってしまえば普段通りの明るいルフィだ。
一体、こんな少年がどうして自分を受け入れるのだろうか。
男に慣れているようには到底見えないし、恋人同士でもない。
自分のように気持ちいいからでもないと思う。
「ゾロたまってたんか? あ、でも一昨日ヤったばっかだよなー」
「おれは毎日でもできるが」
「えっ」
「お前は無理だよな、解ってる」
「う〜んおれさ、1回以上いっぺんにイけねェんだよォ」
「……そうなのか? じゃあ最初にイかせない方がよかったか。お前入れられんのつれェだろ……?」
ルフィのYシャツを着せてやりながらとうとうゾロは申し訳なさげに二重の目を伏せた。
そんなゾロの手元を見つめていたルフィが、顔を上げるとパチパチ瞬きを繰り返す。
「なんで? おれイってるぞ?」
「だから1回だけだろ」
「んなことねェ。ゾロと一緒にイってる」
「いやけど、出てねェじゃねェか。勃ってもねェし……」
「でもイってんの!! おれはキモチイイんだっ!!」
どーん。
今度はゾロが目をパチクリする番だ。ありえるのだろうか、生物学的に。
「疑ってんのか?」と上目使いに見つめられ、「まぁな」と返したらルフィのほっぺがぷっくり膨らんだ。
「ゾロが早かったのはおれとえっちすんのがヨカッタからじゃねェの? お前は違うんか!?」
またそこに戻るのか……。早い早い言うな。
「いや、そうには違いねェよ。おれはめちゃくちゃイイ」
「んじゃもうハマってる!?」
「そこまでじゃねェけど……」
「そっかァ〜」
うーん、と腕を組んでなにやら考え始めたルフィにゾロはまた当惑したが、玄関に人の気配を感じ慌ててルフィのシャツのボタンを留め始めた。
「あ、じいちゃん帰ってきたんかな? ちっといつもよか早ェけど……」
「いいから早く服着ろよ! つーかおれもだな……」
どうにか着替えが終わったとき、ゾロがまだ見たことのない人物が顔を出した。

「ルフィ〜! ケーキ買ってきてや……あ、お客さんか?」
「エースじゃんか! 帰ってきたんか!?」
「クリスマスくらいはな。そちらさんは?」
「ん? 友達……」
「ロロノアです」
「あーっゾロ名前言っちゃダメだって!」
「は!? な、なんでだよ」
「ロロノア!? そっかーあんたがロロノア君か! ルフィの好きな奴!!」
ばーん。
「ギャー言っちまったァ〜〜!!」
「あ、わりわり。もっとハマらしてから告るんだっけか?」
「言うなバカエース!! あっち行け!!」
「なっ、可愛くね〜〜」
「ケーキありがとう! じゃあなっ」
「じゃあなってお前……顔赤ェぞ?」
と、兄の手が頬に触れたら、
「さ・わ・る・な」
「ったくわかったわかった! 邪魔して悪かったよ!」
エースとやらがルフィに背を押され、無理やり部屋から追い出されていく。
しかしエースはゾロに振り返り、
「ウチの弟、可愛いだろう?」
と意味深な笑みを寄越してまた弟に文句を言われ、やっとこ姿を消した。
つーか兄貴だったのか……。

「ルフィ」
「な、なに!?」
「兄貴ともヤってんのか?」
「ぶっ、ゲホゴホ!!」
今度はルフィがコーラ(ルフィが買った)に噎せている。
「大丈夫か?」
「…じゃねェ! ヤるわけねェだろ兄ちゃんだぞっ!!」
「それにしちゃあ……」
去り際、思いっきり睨まれたような気が。ただのブラコン……?
いや弟に好きな「男」がいるとなれば誰だって歓迎しない。
「あ、重要なことを忘れるとこだったがルフィ、お前っておれのこと――」
「おれゾロが好きなんだっ!!」
「……いつからだよ」
全然身に覚えないのですが。
「ゲーセンで見掛けるようになってから!」
「おれがお前を知る前ってことか……?」
「うん!」
ルフィがにっこーと笑った。なんでそこでそう、屈託のない笑顔なんだ、とクラッとする。
「それで黙って抱かれてたのか……」
「黙ってねェよ。おれちゃんと誘ってたもん」
「どこら辺が?」
「脱いだりくっついたりしただろっ、最初!」
「……」
そう言えば、初めてこの部屋にきたときルフィはシャワーしてくると言って、バスタオル1枚で戻ってきた。
そのときゾロはベッドのへりにもたれ、うつらうつらしていたせいで理性がぶっ壊れただけだと思っていたのだが、ルフィが腿に触る感触や、その湯上りのいい匂いにクラクラして、視界に映ったほんのりピンク色のルフィを直視できなくなった。
これは人としてたいへん危機的状況だと判断してあの日は慌てて帰ったのだ。
とんでもない過ちを侵してしまいそうで……。
しかしその数日後またルフィと出くわし、なんのかんので彼の部屋へ行くことになり。
着替えると言ったルフィはなぜだかシャツ一枚でゾロの膝に跨がってきて……。
うっかり触れたルフィの足がとても手触りよかったものだから、まあその、まんまと押し倒して頂いちまったわけで。
つまりあれもこれも、ルフィの「お誘い」だったということか!?

「おれ男なんか誘ったことねェし、漫画とか読んで研究したんだ! えらいだろ!?」
「だからどの辺が!?」
「え〜だって! さっさと既成事実? 作っちまえばいいって漫画に……!」
「漫画はよくわかった。それでヨクもねェのに抱かせてやってたってわけか、おれに!!」
そうだこの話をしてたんだった。
「だからイイって言ってんだろ! 信じろよ!!」
「信じろって言われてもだなァ、信じられねェよ。おれにはお前が辛そうにしか見えねェんだよ、声も上げねェし!」
「こ、声は……だって、男があんあん言ったらキモいだろ!? したらゾロ萎えちまうじゃんか!!」
「別に萎えねェし寧ろ燃える。今日初めてお前、おれの名前呼んでくれて……」
ゾロはこっちを睨み付けているルフィの後頭部を引き寄せ、その顔を自分の胸に埋めさせた。
「わぷっ」
「おれは嬉しかったんだぜ……?」
「そうなんか!? あ、あれはゾロがちゅーすっからさ……」
おれも嬉しかったんだ、とルフィが言って、ぎゅっとしがみついてきた。

「やべ、もっぺん抱きてェ」
つまりさっき動きをとめたとき殴られたのは、さっさと終われ、じゃなくイイからやめるな、だったと。そしてルフィが「イイ」というのはもしかしたら、女悦のなんとかってやつ……てのは考えすぎか。
「いいけど下にエースいるぞ?」
「ヤってんの知ってんだろ、今さらだ」
「それもそうだな!!」
この豪快なルフィの性格を自分は気に入ったのだった、とゾロは改めて気がついた。

「おれら体から始めちまったな……」
ゾロが言えば、
「わかりやすくね?」
と返ってきた。

おれ達だからこれでいいのか、いいような気もするしこれではいけない気もする。
けれど気持ちはあとから着実についてくるだろうと、なんとなく確信しているからこの出逢いは必然だったと思う。

「けどさっきお前の兄貴、おれんこと睨んでなかったか?」
床の上にルフィを押し倒しながら、ゾロはやっぱり気になっていたことを聞いてみた。
「んん? そうかー??」
この先、それなりに二人を苦難が待ち構えていたりするのだが、ひとまずは。

結果オーライ?



(おわる)




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