【F2119】URA

□「リーマンが花屋に通う理由」裏編
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※注:パラレルなので二人の胸の傷はお休みさせて頂きます☆



──ピンロン♪

ルフィ『ゾロー!!!』

ルフィ『新婚ごっこ!!』

ルフィ『ごはんにする?お風呂にする?それとも、お・れ?』


「何事だ」

上記のようなラインがルフィから中途半端な時間に入り、ゾロは首を傾げた。ゾロはまだ会社だしルフィはバイトの時間ではない。
本日ルフィは、初めてゾロ宅にお泊まりする。なんの前哨戦だろうか……。
この半年、来る日も来る日も口説き倒してようやくゾロの気持ちに応えてくれたルフィは、今やゾロとお付き合いしているのだ。
「暇なのか……?」
そんな理由しか出て来なかった。

ゾロ『メシで』

ルフィは食べるのが最優先だろう。ゾロの本音は伏せておく。本音=ルフィなのは言うまでもない。

ルフィ『つまらんやり直し』

はい!? まさかのダメ出し!?

ルフィ『ごはんにする?お風呂にする?それとも、お・れ?』

ゾロ『引くなよ?ルフィで』

ルフィ『ゾロのえろ!!!』

やっぱりそうくるのか……。
一応、ゾロは猫のジャンピング土下座スタンプを送信しておいた。この程度で嫌われるならとっくに嫌われてもおかしくないことをしでかしてきたので、今さら焦らないけれど。

ルフィ『ごはんにする?お風呂にする?それとも、お・れ?』

「まだやるのか……」
あと風呂一択なのだが。これで「風呂」なんか答えた日にはなぜか怒られそうな気がした。
理不尽なルフィはかわいい、が、できれば期待に応えたいので。

ゾロ『メシ食って風呂に入ったルフィで』

これでどうだ!とばかりにゾロは一番うまそうなルフィを妄想して答えた。渾身の出来だと思う。
しかし既読になったが返事がなく、こりゃドン引きコースだったようだと少々凹んだのだった。


「ラインでまでイチャイチャしやがって……。休憩時間ですらないんですけどォ〜。マリモさーん??」
「だから覗くなって! 勝手に!!」
「おれとお前の仲じゃん」
「どんな仲だか言ってみろ」
「めんどくさいから言わなーい」
「……」
もう帰りたい。就業までとりあえず仕事に打ち込んで時間を忘れよう。もくもくとパソコンに向かい始めたゾロにサンジは目をみはったが、幸いそれ以上は話しかけて来なかった。

∞∞∞

ピンポーンと玄関のチャイムが鳴ったので、ゾロはルフィだろうといそいそ出迎えに行く。
けれど、鍵を開ける手前でピタリととまり、
「そうだった、アレっきりなんだよな……」
新婚ごっこでバッチリ外したままだった。自分を食う気満々の男のところへ、ルフィはどんなキモチでやってきたのだろうか。
ここはひとつ和ませてやらなきゃ男じゃない。
外から「ゾロ〜?」とルフィの高い声が聞こえたので、ゾロはよしと気合いを入れて玄関ドアを開けた。
「ゾロ遅ェよ〜」
「こほん、あー、おかえりルフィ。ごはんにする?お風呂にする?それともおれ?」
「……」
ルフィが無表情にぱちぱち瞬きした。またまたドン引きされた気がする。
ま、まさか帰るとか言い出さねェよな!?
しかしルフィはひょいと背伸びをするとゾロの唇にちゅっ、キスしてきたのだ。
「!!」
そして言うには、
「おかえりのちゅーが正解!!」
ゾロの鼻先にピッ、人差し指を突きつけ、パタパタと中へ上がり込んでいった。

も、萌え殺されそう……!

ぱたん、と閉じたドアへゾロはガッと片手を着いた。ぶっ倒れそうだったので。
「なんなんだアイツ、かわいさが尋常じゃねェ……」
さっそくこれはヤバイ。飯前に押し倒したい。ダメだダメだそればっかりは絶対に嫌われる。
ゾロがよろよろしながらも居間へ戻ると、ルフィがちょこーんとローテーブルに着いていた。
「カツレツ食おう!! ゾロ今日もありがとう!!」
「いやお安いご用だ」
カツレツで釣りがくる。今夜ルフィをおいしくいただけるのならば。
しかしやっぱり先に飯なのねと思いながらも、ゾロはテーブルの上にカツレツやポテトサラダ、インスタント味噌汁、他にも買ってきた惣菜をところ狭しと並べた。←作る気はさらさらない
「うまほ〜〜!!」
「いただきます」
ゾロはすっかり定着したルフィの向かい側へ着くと手を合わせた。
「いただきまーす!!」
例のごとくあっという間にカツレツがイリュージョン的に消えた。ジャーのごはんもなくなっていた。どんな種なんだ(食っただけの筈だ)。ルフィがゾロの家にご飯を食べに来たとき、あれでも遠慮していたことを知って改めてびっくりした。
「お腹ぽんぽこりんだなぁ、ルフィ」
まるでおれの子を産みそう、なんて親父ギャグは伏せるけど(そもそも既成事実がない)。
「すぐ引っ込む!」
「かわいいからいいけどな」
「かわいい言うな」
ぷくっとほっぺたを膨らませたルフィもかわいいなぁなどと思いつつ(キリがない)、食後のデザートに用意しておいたお菓子とパンプキンケーキをたんまり出せば再びルフィの大きな目はキラキラと輝いた。
あーもう、かわ(略)
「なんでかぼちゃケーキ?」
「ハロウィンだから」
「ああ!! そうだそうだ! 『ハナハナ』もハロウィン用のブーケ作ったんだ! ロビンが!!」
「そうなのか」
「ロビンがな、ゾロには絶対トリックアーなんとかは言うなって。お菓子なんかなさそうだからって言ってたけど、あったんだな!」
トリック・オア・トリート。ハロウィンのお決まり文句。
「しまった、ルフィにいたずらされたかった……」
「ん?」
「その台詞を言って貰うと言う発想がなかった自分の貧困さに凹む」
「んん?」
まぐまぐとケーキを頬張るルフィのほっぺにオレンジ色のクリームがついていて、ゾロはそれに手を伸ばし親指の腹でごしごし拭った。
「あ、すまん勝手に触っちまった」
「いいよ。あんがとー」
「いや……。テレビかDVDでも観るか?」
「なんかおもしれェ映画ある?」
「昔のしかねェ」
「おお、昔のいいな。古い映画好きなんだ、サボが。おれよく観せられる」
「……それ何号?」
ちなみにゾロは3号。ルフィをゲットした記念すべきルフィ狙いの常連客である(ただし花を買ったことは殆どない)。
「へ? 兄ちゃんだけど? 真ん中の」
「3兄弟だったのか!」
「うん!」
「末っ子か。かなり甘やかされたんだなぁ」
「それどういう意味?」
ゾロの言いたいことを悟ったのだろうルフィにじろ〜っと睨まれ、ゾロはそっぽを向いた。
「オススメあるぞルフィ! 観ようぜ」
「誤魔化した……」
ゾロはハハハと誤魔化し笑いも添えてテレビにDVDをセットした。
ルフィがテレビの正面を陣取ったので自分は脇のソファへ。この距離なら一緒に見ても問題ないだろう。
「なんでそっち行くんだ?」
しかし不思議そうに聞かれてこっちが首を捻った。
またまたルフィがむっつりした顔になってしまい、今日は選択ミスが多くてへこたれそうだ。
「いや、なんでつってもな……」
これが半年間ルフィに言われて守ってきた距離間だったので、ゾロにはもう癖というか義務というか。
「さっきも謝ったよなゾロ。あれ変じゃねェ?」
いつ謝ったっけ……。
「すまん」
「たく、なんなんだよゾロは」
ぶつぶつ言いながらもルフィは映画を見始めた。画面はモノクロで、侍の格好をした男がわらわら登場する。
ちゃんばらシーンにルフィは興奮して楽しそうに観ていたので、ゾロも場が紛れてちょっと安堵した。
そのときだ。ルフィのすぐ後ろの、机の上に置いてあったゾロのスマホがピンロン♪ ラインの通知音を響かせたのは。
くりっ、ルフィが振り返った。
「ラインだ。あ、ゾロのか」
「おれにライン……?」
ルフィ以外からのラインは初めてだったので不審に思う。
画面をまじまじ見ていたルフィが、
「あなたのサンちゃんって誰……」
「……どなたでしょうか」
「次はいつ会ってくれるの? サン子さみしいっ」
「はぁ??」
「ていうラインきてるけど……」
「誰に?」
「だからゾロにだろ!!」
ルフィが今まで見たことがないくらい怖い顔で睨んできた。そりゃもうすごい覇気だ。こんなに迫力があるとは知らなかった……。ちょっとゾクゾクしている自分を不謹慎に思いながらも、ゾロがスマホをルフィと一緒に覗き込むと次のラインが入り、

あなたのサンちゃん『なーんてな! ルフィちゃんと仲良くしてるか? マジで今度紹介しやがれ』

「ぐるぐる眉毛か……!!」
そのふざけた名前のせいでナミにフラれたんじゃねェか!?
犯人は同僚のサンジからだったのだ。仲良くもくそもたった今てめェのせいで不仲になるとこだ!!
「こいつなんでおれの名前知ってんの?」
「同僚のイタズラだ。すまん、たまにルフィとのことを聞いてもらってた。これでもちゃんと応援してくれてんだ。けど嫌な思いさせたよな」
「したぞ! すげームカついた! ゾロが浮気してるんだと思ったもん!!」
「ありえねェだろそれ! おれの半年間ナメんなよ?」
「うはは、そうだよなーよく考えたら。ゾロおれにぞっこんだもんなぁ〜」
なはははっとルフィが笑う。その通りだから反論なし。ルフィが根に持たないタイプで何よりだ。
ゾロはスマホの電源を切ってしまい、ルフィとの時間を邪魔するものを排除した。
そしてハッと気付き、ルフィからちょっと離れた。
「悪い……」
「なにが?」
「近づきすぎた」
「もう何回もちゅーしてるのに手遅れだと思うぞ」
「う……」
付き合う前からルフィがあまりに可愛くて何度か手を出しているゾロなのである。キスしたり触ったり、これでも不屈の自制心で深追いしたことはないが、それでもぼ〜っとなってしまうルフィがこれまた可愛くて……何度押し倒しそうになったか知れない。
「あとは風呂入ったらばっちしなおれになるぞ?」
「え……?」
今、なんと!?
「メシ食って風呂入ったおれがいいんだろ?」
コクコクコクとゾロは無駄に何度もうなずいた。
「ゾロはよ、もうただの3号じゃねェんだから、そこんとこ自覚しろ! わかったか!?」
子供に言い聞かせるように言われて思わず「はい」と返事した。
いやけど、待て。
「ただの3号じゃねェってことは3号であることに変わりねェってことか!? そりゃねェだろう」
「ああ! ごめんごめん!! 3号じゃねェ、彼氏な!!」
「彼氏1号とか」
「言うかバカ!! おれをどんな尻軽だと思ってんだっ」
「それはねェな。このおれが癖になるくらい距離取り続けたんだから」
「く、くせになってんのか?」
「なってるが?」
「えっと、ごめんなさい」
「当たり前に触れることがこんなにありがたいことだとは思わなかったよ」
そっとルフィの肩に触れ、顔を覗き込む。眉尻を下げたルフィは申し訳なさそうにゾロのシャツをつかんできて、こんな変化もありがたいと思えるのだからルフィはちっとも悪くない。
ちゅ、とこめかみにキスすればルフィがきゅっと腰に抱きついてきて、こんなことは初めてだからアホなことにじ〜んとしてしまった。
や、やばい、かわいすぎる……。
「ルフィいい匂いすんなァ。こりゃなんの花の香りなんだ?」
ルフィからはいつも花の匂いがするから。それで気を散らしてみる。
「さあ? おれ実は花の名前覚えらんねェんだ」
「ダメじゃねェか……」
「ししししっ」
笑ってくれた。よかった。
おずおず抱き締めたらルフィの手に力が籠った。
「ありがとうルフィ。おれと付き合ってくれて」
「今!?」
「言ってなかったなと思ってよ」
「そうだっけ?」
「ルフィが押しきられたのはわかってっから、もしおれに本気になれなかったら言ってくれ。もっかい3号からやり直す」
「もうとっくに本気だけど?」
「……あ?」
「あ?じゃねェよ! だってゾロが悪いんじゃん!!」
「最初が勢い任せだったからだろう?」
「違ェよ!! 最後の3ヶ月くらいだよ!!」
「こ、心当たりが……」
「だろうな。わかってねェよな」
ゾロの胸から顔を上げ、ルフィが半目で呆れたように見てきた。
それにちろっと目を逸らせながら、
「教えてクダサイ」
お願いした。
ルフィさんの言うことにゃ、
「だってゾロ、店に来るなり『ようルフィ付き合ってくれ』って! なにそれ挨拶!? いや挨拶のついで!? 投げやりかっ!!」
「ぐ、言われれば」
ルフィとの安全な距離を保つように告白も形式化していたのかもしれない。ゾロにその自覚はなかったけれど。
ゾロはいつもの猫スタンプのように「ごめんなさい」と土下座すると、じぃっとルフィの出方を待った。
「おれがなんとも思ってねェ奴にちゅーとかさせると思ってたんだな、ゾロは」
「すんません猛省します」
「うむ! いいよ。これでわかったんなら。だからおれも正式に撤回してやる。もう近寄ってもよし!」
どーん。
「やった……!!」
ぎゅううっと遠慮なく抱き締めたら痛い痛いと叩かれた。


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