ナルいの
□彼女と彼の諸事情を
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「んー今日もいい天気だってばよっ!」
そこらにあったサンダルを足に引っ掛けるや否や、両腕を天へ高く伸ばし背筋を伸ばすのは何と気持ちいいことか。足の裏に感じる木の感触がまたこれイイ。年季の入ったサンダルは界隈に咲く花々に元気と美しさを与える為に何と貢献しているものだろうか。晴れ晴れとした太陽の下、ナルトは少し上を見上げると眩しさに目を細めた。
これまた年季の入ったじょうろを片手に並々と水を注ぐ。左手をポケットに突っ込んでしまうのはもう癖だと気づきながらも小さな水の粒となった滴を花々にかける。
光に反射する水滴は花々達の意思表示なような気さえして、本当に愛されている子達だと、ナルトは自分のことのように嬉しく思うのだ。
「ナルト。もうご飯は食べたのかい?」
「おう!美味しく頂きましたってばよ」
おっちゃん料理も上手かったんだなぁと蒼い双眸は笑う。
昔の友の姿に本当に良く似てきたなといのいちは思う。それは彼の息子なのだから当たり前と言ってはおしまいだが。じょうろ片手にスラリと延びた肢体が細いながらも骨格は紛れもない男の姿で、数年前の心配でたまらなかった後姿からは微塵も感じられない凛々しさがそこにはある。
こんなとき、やっぱり彼の血を受け継いでいるのだといのいちは実感するのだ。
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