七班

□化合物の黄昏
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「あんま嗅がない方がいいよ」
「確かにそうね。でもこの香り好きだわ」
「美味しそうだけど、やっぱサクラちゃんが死ぬのは嫌だってばよ」

 ニシシと悪戯な笑みを浮かべて言うナルトが蓋が開かれたビンをサクラの持つ湯のみへと傾ける。そして緑色の液体に混じり合った湯のみは表面を波紋で揺らした。
 蓋を閉めるとナルトが持っていたビンをサクラが受け取り、サクラが持っていた湯のみをナルトが受け取る。

 薫る香りをナルトは嗅ぐと、艶めかしい笑みをサスケに向けた。

「サスケ・・・」

 男にしては白く細い指先で首筋を撫でサスケを空色の瞳が射抜く。そして無造作にソファの上に投げ出されていたサスケの手に湯気の立つ湯のみをそっと握らせると、手を重ねて目的の位置へとサスケの手を誘う。
 そこは幾度と無くナルト自身を追い上げ絶頂の狭間へと導いた綺麗な唇が佇んでいて、そっとその下唇を親指で撫でた。



「ねぇ、サスケ君・・・」
「・・・見せてくれってばよ」



 駄目だと、サスケは思った。

 抗える訳が無い。こんなにも大切な者に求められて抗える奴がこの世にいるのなら是非一度会ってみたい。ナルトの手に包まれた温もりがどれほど残酷な願いなのか分かっている。どれほどの苦しみを味わうのかも分かっている。だがそれでも二人の望みを叶えてやりたいと思ってしまうのは愛しているからだろう。



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