七班

□優しくて格好良くて強い人
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(でも、相手がなぁ・・・)

 アイスの筒下部を押し上げるように下に溜まったアイスを吸いながら全身黒づくめの男を見る。そして見なければ良かったと直ぐに後悔した。

 案の定不機嫌を露わにした見慣れた顔は言葉には出さずとも体全体で全てを語っていた。
 少しでも忍としての性質を持っていたのなら直ぐにサスケの纏う空気に気づいて身を守ろう事も出来るだろうが、忍の世界とは無縁の人のようである。
 気の毒な事に自分の気持ちを伝えようと精一杯でサスケを窺う事も出来ないらしく―――嗚呼、可哀そうに、きっともうサスケに近づくことさえ出来なくなるのだろうと想像して変に薄暗い告白シーンを見るのをナルトは放棄した。

「ンなとこ座るな。ケツに変なシミ付いてもしらねぇぞ」
「少なくとも右手に味噌、左手に大根持った男が告白されてるシーン見るよりは恥ずかしくないってばよ」

 時間にして三分位だろうか、最後のアイスを味わっていたところ視界の右側に音も無く現れた男にニヤリと笑いながら言ってやれば何とも眉間のシワを指で戻してやりたい表情を見せられた。
 チラリと下を覗き込めば先程まで変な雰囲気を出していた告白現場に既に人の気配は無く、いつもの様な薄ら寒い路地裏に戻っていた。

「格好いい男はモテて大変だってばねぇ」
「ウザいだけだ」
「でもその顔で買い物安くなったりする事あるじゃん。おばちゃんには効果的だな」

 おそらく、左手にある瑞々しい大根は安くして貰ったからサスケの手に握られているんだとナルトが予想をつけると。



「経済的と言え」



 ニヤリと笑ったサスケに、整った顔も案外便利なんだなとナルトは思った。



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