七班

□優しくて格好良くて強い人
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 珍しいことであって、今まで一度として無かった訳ではなく、つまり遅くなる原因があるわけである。その原因がサスケを不機嫌にさせ、ナルトに被害が及ぶ。過去の経験上あまりその不機嫌なサスケには触れたくないのが本音だ。

 それはサクラも同じなのであろう。
 サスケの帰宅が遅い事に気付いたサクラは隣でうつらうつらとしていたナルトに声を掛けると遅いサスケを迎えに行ってあげてとナルトに言った。その時はお駄賃としてアイス分のお金を貰ったので嬉々として気付かなかったが、今考えればナルトを差し向けて少しでも不機嫌を和らげようという作戦だったのだろう。途中それに気付いたナルトは帰ろうかとも思ったが、既にアイスは買ってしまった以上、これはサクラに与えられた任務をこなさなければ確実に彼女の怒りを買うだろう事は目に見えて明らかだった。

 ならば仕方が無い、探そうか。と、半分にまで減ったアイスを吸いながら昨日の夜の会話を思い出す。

 昨夜サスケの家でいつものように夕飯をご馳走になって帰る気も無かったナルトにサスケも気づいていたのだろう、明日の朝飯は何が良いかと仏頂面で問われて大根の味噌汁がいいと返したのを覚えている。その後少し戸惑った表情を見せて味噌が無いなと小さく呟いていた。

 ついでに言うならば朝食に勿論の事大根の味噌汁は出なかった。と言う事は味噌を買いに行ってお昼ご飯に並ばせるのだろうと予想を付け、サスケお気に入りの店に向かっていれば途中見知った、むしろ目的の気配を見つけた。

 ちゅるんと口の中に広がる冷やかさにプラスチックの筒を口から離すと、屋根の上へと静かに飛び、大通りから外れた路地裏を見下ろす。薄ら寒い路地裏は確かに人通りは少ないがいささか場面的にどうなのだろう、とナルトは思う。

 相手は、一般人だろうか。

 ショートカットの茶色い髪は綺麗に揃えられていて、少し長い前髪を女の子らしい花柄のピンでとめて頬を染める姿はなんといっても可愛らしい。大きくも小さくも無い髪色と同じ茶色い瞳は今にでも雫をこぼしそうな、今伝えられる最大級の言葉を紡ぐ可愛らしい唇はぷるりと潤い眩しく。恐らく大多数の男なら一瞬で目を奪われてしまうだろう美貌を持つ少女は今まさに、己の恋心を目の前の男に伝えていた。否、伝えようとしていた。



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