5.

□ねこのおはなし。
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【愛迷エレジー】

*** あまりに感銘を受けたので書いてしまいました。この小説は原曲並びに製作者様達とはなんの関係もございません。 ***




「どうやら泣きすぎたみたい」とキミは笑う。

……曖昧な笑み。

どうにも、こうにも、アタシは笑えない。笑えないよ。
キミが泣くのはたぶん、アタシのとある言葉のせいだから。
いやたぶん?裏、たぶん?たぶんの裏側?
なら気のせい?アタシは関係ない?
……そんな思考はただの責任逃れ。
いいかげん、脳の味噌も呆れてます。


沈黙が続くキミの部屋の中。
時計の針の音と、キミとアタシの息の音だけがする。
息の音は、バラバラ。

キミはまだ泣いている。
……そろそろ、助けようか?
アタシの言葉はきっとまだ突き刺さっている。
迷っているのは、その事実を知るのが怖いだけ。
そんな恐怖も引き連れてさ、勇気もアレしちゃおう。
雑巾絞るように、捻り出せ。

「……だけどさ、怖いんだよ」
ガタがアシアシだよ。足もガタガタなんだよ。
キミの隣に行こうにも、フラフラしてしまう。

あ、そのままだと、堕ちる。

「……泣きすぎたみたいだ」

真っ赤に腫らしたキミの目。

キミの感情の海に、


堕ちる。


そんな目でアタシを見ないで。
悲しい目でアタシを見ないで。
違う、違うの。そんなつもりはなかったの。
キミのナミダに、溺れる。

そうやって、溺れるのが怖かったの。
エラ呼吸なんて出来ないから。

「大丈夫だよ。少し悲しいだけ」

キミがまた波紋を立てる。
違う、聞きたいのはそんな言葉じゃない。
キミの言葉に揺られ、酔って……

気づくと、逃げようと足掻いてた。


「いつまで泣いてるの。バカじゃないの?」

そのまま、部屋から逃げ出した。


外に出ると、雨が降っている。
傘なんて持ってないから、そのまま歩きだす。

気まずい空気からなんとか逃げ出したけど、キミを置き去りにしたままだ。
唇だけ動かして、無音で「ごめん」を言う。

「よし、ちゃんと謝った。これで大満足」

自分への言い訳はこれにしよう。
キミの部屋があるマンションが遠ざかっていく。



〔次のページに続く〕
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