FINAL FANTASY [

□〜The 2nd War〜
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第35章


「よ、よし、じゃあ連絡してくる。…ニック、通信機あったら貸してくれないか!」
ニックに案内され、ゼルは店のフロアに戻ってきた。
アーヴァインとセルフィも続く。
通信機から聞こえてきた声で、ゼルから受話器を奪うように取り上げ、セルフィは嬉しそうに名を呼んだ。
「サリー!!」
『セルフィ!?』
女同士の会話というのは、どうしてこうも無駄なことばかり多いのだろうと思う。
大事な用件のほうがついでの事の様に伝えられる。
サリーから、トラビアにスコールがやってきたことが伝えられた。
「えっ!?ホンマに〜!」
『うん、めっちゃかっこよかったで〜!』
「今は? リノア、大丈夫なの?」
『2人であの部屋に篭ったきりや。近付くのも危ないって言われてしもうて…』
「え、危ないってどういうこと…?」
『それがな、たぶんもうあの部屋、使えん…。リノアの魔法のものっ凄い力で全部吹き飛ばされてしもうた』
「ええ〜〜っ!!」
『そんな中に1人で入っていって、リノアを止めたスコールさん、ホンマかっこええな〜!』
2人の会話を聞いていたアーヴァインが横から口を出す。
「うわ〜、愛の力だね〜」
「相変わらずスコールのやつ、リノアのことになると夢中だよな」
「…わかった。じゃあ、私達もすぐそっちに向かうから。サリー、スコールに伝えてくれる?」
『うん、まかしとき!』
スイッチを切ったセルフィが、謝りながらゼルに受話器を手渡した。
「じゃ、俺ガーデンに連絡入れる」
ゼルはバラムガーデンを呼び出そうとするが、全く反応がない。
「…おっかしいな〜?なんで出ないんだ?」
一度スイッチを切り、再びコールする。しかし、呼び出し音が続くだけで誰も出ることは無かった。
「まさか皆出かけてる。なんてことは無いだろうけど…。 壊れてんのかな?」
「さっきは普通にトラビアと繋がったよね?」
「ヘンだな? …まぁいいか。後でもう一度かけ直してみるよ。それより急ごうぜ。トラビア行くんだろ?」
見送ってくれたニック達に別れを告げ、店の扉を開ける。
その先には立ち塞がるように数名のガルバディア兵が待ちかねていた。
「お出かけのところ申し訳ないが、少々お時間を頂きたい。…店主は?」
店を出ようとしたゼル達を押し戻しながら、ずかずかと店内に入ってくる。
名乗りを挙げたニックの眼前に持ち上げられた1枚の書類。
「大統領命令だ。店内の捜索に協力して頂く。そこを動かないで貰おう」
「なっ…」
「おい、なんだよあんた達!勝手に触らないでくれ!」
この小隊の隊長らしき男がゼル達のほうを振り向いて尋ねる。
「この街の人間か?」
「…なんだ、外国人の取締りでも始まるってのか?」
「ただの家宅捜査だ。すぐにすむ」
公安部の制服を着た人間が数人、店の中を物色していく。何かを探しているようにも見える。
「店長〜〜、何かやったんスか〜〜〜!?」
隊長が更に質問を続ける。
「この街に来た目的は?」
「…これだよ」
ゼルがカードを提示して見せた。それを見て納得したのか、バカにするように鼻を鳴らす。
「…いい歳をして、ガキの遊びとはな…」
「なんだと!」
「おい、よせ!」
掴みかかろうとする若い男を止め、ニックもゼル達もしばし兵たちの動向を見守るしかなかった。
やがて捜索を終えた者達が隊長の下へ報告に集まってきた。
「めぼしい物は見つかりません。ビデオカメラが1台ありましたが、埃を被っていて最近使われた形跡は無いですね」
「そうか、よし、引き上げだ! …邪魔したな」
人を見下したように横目で一言言い捨てると、ゾロゾロと店を出て行った。
「店長!あんな奴ら、やっちまえばよかったんスよ!なんで好きにさせたんですか!」
「落ち着けチャンプ! 俺だって元SeeD。ここにいるゼルだって教官なんだ。ヘタに動いてガーデンを晒すのはマズイ…」
ガーデンの意味。それはSeeDになることで初めて知らされる重い責任。SeeDが動く事、それは特殊な仕事を必要とする計画があるということ。
ヘタに勘ぐられてここドールが攻撃の対象になるのは、彼らには避けたい事柄だ。…彼らが今ここにいて、何かを探している…?

「はーい! ね、こんな感じどう?」
「おっ、セフィ、何、何?」
「あのね、魔女派の電波ジャック」
「ああ!」
「お、それ考えられるな!」
「え、あれってここから発信されたものなのか!?」
「う〜ん、ガルバディアももしかしたら確信がないのかも…」
「だからああやって1軒1軒回って調べてる、のか?」
「多分ね〜」
「…くそ、魔女派のやつら…! 厄介なこと持ち込みやがって…!」
「…ニック」
「だってそうじゃねーか!あの魔女のせいで、ガーデンがあんなことになったんだからな! しかも今は学園長だって!? よくもまぁ抜け抜けとそんな地位にいられるもんだ!自分が何をしでかしたのか、分かってねーのか!?よく平気でいられるな!」
「てめえ!ママ先生を侮辱するんじゃねえよ!」
「ママ先生…!? あぁ、前にお前が話してた孤児院の先生だったってやつか。 …だからどうした。俺にとっては恐ろしい魔女イデアに変わりはねぇんだよ!」
「なんだと!てめえ!!」
「ゼル!やめてよ!」
「店長!落ち着いて下さいよ!」
セルフィ達は2人を引き離すのがやっとだ。
状況を見つめ、しばらく考え込んでいたアーヴァインが口を出す。
「あのさ〜、こんなことしてる場合じゃないんじゃない?」
「え…?」
「ゼル、さっき、ガーデンに連絡取れなかったよね?」
「…あ、あぁ、誰も出なかったな」
「もう、ガーデンには手が回ってる、とか…」
「!!!」
「え、アービン、それってもしかしてトラビアにも…」
「多分ね」
「!! ヤバいやん!はよ連絡せな!!」
セルフィは慌てて再び通信機のスイッチを入れる。
『トラビアガーデン教官室です』
「よかった〜!繋がった! 教官No.20セルフィ・ティルミットです。サリーはおる?」
『セルフィ先生!? サリー先生なら、さっき連絡貰ったからって、あの教室に行ってはるよ』
「すぐ呼んで!!」
『う、うん、待っといて!』
緊迫したセルフィの声を感じ取ったのか、受話器の向こうから慌しい声や音が聞こえてくる。
バタバタと足音が近付き、受話器からサリーの声が返ってきた。
『サリーやけど、セルフィ?どないし……』
「大変や!そっちにガルバディア軍が向かってるんや!はよ逃げ……」
『……あかん』
「…えっ?」
『もう、手遅れや…』
受話器の向こうから、ヘリの音がセルフィにも聞こえる。
「!! サリー!はよ、はよう逃げるんや!それからリノア達にも…!!」
突然プツリと切れる音がして、受話器からは何の反応もなくなった。
受話器を握り締めたまま、セルフィは呆然と立ち尽くすしかなかった。
「…最、悪…。どないしよ…」

ニックの店の2階の窓から、街の中を走り回るガルバディアの兵や公安の人間達を眺めていた。
観光客で賑わっていた街の中は、どこへ消えたのか人々の姿は無く、すっかり寂しい街となっていた。
ひとまず、情報を手に入れたいゼルとアーヴァインが様子を見に外に飛び出した。
セルフィはニックに案内され、ここで2人を待っている。
「あんたらも、SeeDだったんだな」
「まーね。バラムガーデンにいた時間は短かったけど、そこで試験を受けたり大切な仲間と出会えたりした大切な場所なんだ。…ゼルとかね」
「…さっきは、悪かった」
「ママ先生のこと? そういう考えの人、結構多いんだって。今も、それで結構苦労してるみたい、ゼル。 ママ先生は確かに魔女だったけど、あれはママ先生の意思じゃない。悪い魔女が、ママ先生を利用しただけなの」
「…ハハ、子供に言って聞かせる昔話みたいだ」
「…あはは、そうかも。…もう、今は魔女の力を無くして、普通の人間に戻ってる。優しいママ先生のまま。だから! …魔女イデアの記憶を消すことは難しいかもしれないけど、今のママ先生は嫌わないで欲しいな」
「…そうか」
「あなたは、大統領派なの?」
「バカ言うな!俺たちドールの人間からすれば、ガルバディアは永遠の敵!支配を受けてから、この国は戦って戦ってそして独立を手に入れた!この歴史を、この事実を忘れることなんて、できない!」
「…ドールが、この国が、好きなんだね」
「ああ。…父は、ドール軍の一員だった。でも、戦うことが嫌いで、平和を愛していた。…昔っからカードが好きだったみたいだしな。俺も、一緒に戦いたかった。だからSeeDになって父と同じ場所でこの国を守ろうと、ガキの頃に決めたんだ」
「…そうだったんだ」
「あんたは…?」
「…えっ?」
「…戦ったんだろ?魔女イデアと…」
「…うん」
「悪い、忘れてくれ!余計なことだったな。 …それにしても、遅いな、あの2人」
「…忘れるなんて、できない。…もう、記憶を無くしたくない…!」
「…?」

「おいヤバイぞ!SeeDと子供2人を捕獲したって!!」
「なんか、ヤバそうだよ〜!魔女を発見したって〜!!」
同時に戻ってきた2人が同時に話す。
「ええっ!!」
戻った2人も互いに顔を見合わせて驚いている。
1つでも最悪な状況がこうもタイミングよく重なるとは…
不安な表情のセルフィの顔が益々その色を濃くしていく。
ガルバディア政府もただやられて怯えているだけではないのは当然のことで、いつかはこうなることを予測していた。
それが思っていたよりもずっと早かったことが驚きだった。
エスタの魔女記念館に当日居合わせた関係者や報道陣から取った調書。残された残骸から解析したビデオ映像。
そして浮上する犯人像。
エスタの協力の下、ガルバディアの捜査は迅速だった。
政治犯罪者が収容されるところは決まっている。
「ど、どうする…?」
「決まってる!助けに行く!」


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