FINAL FANTASY [

□〜The 2nd War〜
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第24章part1


『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えいたします。
 えー、本日20時40分、ガルバディア大統領ボルド・ヘンデル氏が何者かに銃撃されました。
 命に別状は無く、搬送された病院で緊急手術が行われている模様です。犯人は逃走中との事です。
 えー、繰り返しお伝えします。本日午後8時40分頃、ガルバディア大統領ボルド・ヘンデル氏が自宅で銃撃されました。
 それでは、現場から中継です。現場のコールさん、そちらの状況を伝えて下さい。……… ………? コールさん?………
 あ、申し訳ございません。中継が繋がらないようです。現場もかなり混乱していると思われます。
 続けてお伝えします。ボルド・ヘンデル大統領が銃撃を受けた模様です』

優しき一家との食事を終え、部屋に戻ってきたウィッシュがTVをつけた途端に驚きのニュースが飛び込んできた。
思わず動きが止まり、TVの音に耳を傾ける。
「なんだよ、これ!」
「どういうことなんでしょう…?」
「…俺にもわからない。大統領が銃撃された…!? …すぐ、ガーデンと連絡を取る!」
「まさかSeeDが絡んでるとか思ってるのか?」
「有り得ない事ではない。だから連絡を取って確認するんだ。お前達はここにいろ」
ランスが部屋を飛び出そうとした時、すぐさまウィッシュが呼び止めた。まだTVを指差している。
『ガルバディア大統領ボルド・ヘンデル及びガルバディア全地区の住民達よ。我々の声を聞け。 我々は…』
割り込んでくるように無理やり繋げた回線の為なのか、画面には酷いノイズが走る。
やがて政府に宣戦を布告した人物の映像は消え、元の番組が再開した。キャスターは動揺しつつも、先程の映像のことを謝罪している。
「(!!…電波ジャック!?)」

27年前のエスタ大戦と呼ばれる当時の魔女戦争。それを終結させたのはたった1人の英雄だという…
その年から始まった電波障害。地上のあらゆる電波は宇宙からの干渉を受けて一部を除きそのほぼ全てが使用不可となった。
それは、宇宙に隔離された魔女のせいだと言われ続けてきた。
10年前、イデアの起こした魔女戦争後、再び使用可能となったこの電波を利用しての宣戦布告。しかもそれは魔女を支持する者達による政府へ向けてのものだったとは…
世界を制圧しようとたくらむ、敵としての魔女と、人々に支持され敬われる魔女。魔女=敵としての認識しかない政府は世界の動きに対応できないのか。
「魔女派、か…」
「…?ランスさん、それ何ですか?」
「文字通り、魔女を崇拝する者たちの総称だ。10年前の魔女戦争後、消滅したと思われているが…まだこんな輩がいたのか…。いや、もしかしたらずっと
表には出さなくても、水面下で機会を伺っていたのかもしれない。 …しかし、いきなり大統領の銃撃とは、いやあわよくば暗殺を狙っていたのかもしれない」
「暗殺ですか…」
「…やはりガーデンと連絡を取ろう。お前達はここで今後動きがあるかどうか見ててくれ」
親指をTVの画面のほうに向けて、ランスは通信機が設置されたホールに向かった。

「すげーことするよな、そのマジョハってやつら」
「………」
「…ウィッシュ?」
「…ホープ兄さん、パパと、連絡取れないかな?」
「? なんで……!! まさか、変なこと考えてねぇだろうな…?」
「…心配なんだ」
「………」
大人ぶっているが当然まだ自分の心を抑えることができる年齢に達しているわけではない。自分達の父親がかつてどのような過去を持っていたのか、そして今現在、ガーデンの教官として生徒達に何を教えているのか、2人は知っている。知り過ぎるほどに。
10年前の魔女戦争で、当時の魔女に銃を向けた経験までは知らないようだが、それでもその戦争に参加し、そして戦ったのだ。
「だ、大丈夫だって!パパたちはトラビアにいるし、第一こっちから連絡なんかしたらこっそり出てきた意味なくなるだろ」
「…う、うん」
「明日はまた早く出発するんだろ?俺はもう寝るからな」
ホープも、実はウィッシュと同じ気持ちなのだ。
兄としての面目を保とうと、必死に平静を装っては見たが、頭の上まで被った毛布の中でしばらく高鳴る自分の鼓動が煩いほどだった。


枕元に置いた小さなアラームが電子音を発している。
手探りで手にしたそれを布団の中に引きずり込む。
時間を確認し、むくりと起き上がる。奥の寝室を出てバスルームへ向かう途中で、音を最小にして聞き耳を立てるようにTVを見ているランスを見かけた。
「おはようございます」
声を掛けると、チラリとこちらを見て、簡単な挨拶を返してきた。顔を洗ってランスの元へ歩み寄る。
「…昨夜からずっと同じ様なことばかり言ってるな。…当然、ガルバディアの大統領は今日のイベントはキャンセル。
…今日どころか、この先しばらくは表には出てこないだろう。彼に気を使ったのかどうかは判らんが、エスタの大統領も今日はキャンセルだそうだ。
…だが、魔女の移送は予定通り行われるそうだ。よっぽどガルバディアの連中は魔女が怖いと見える」
昨夜、連絡を入れたガーデンでも、多少ざわつきがあったらしいが、今回の一件は学園長も教官長も与り知らぬことであり、ガーデンにとっても突然飛び込んできた“危惧の種”であった。
ましてや、その危惧の最中で奔走する人物がまだ見つからない今の現状の中で重なった出来事。
渦中の人物を探し出す―――― それが、ランスが今回受けた本当の指令なのだ。

まだ、彼がこの街にきているという確証はない。
それでも、昨夜出会った初老の男性が言ったこと。この街へ向かう列車で彼、スコールに出会った。その言葉だけが唯一の手掛かりだった。
この国にもまだ発展の手が届いていない無法地帯のような地域はたくさんある。エスタの国は広い。
街から遠く離れた何も無い場所に、その魔女研究所はある。
10年前、ここに1人の少女が運ばれた。当時そこで研究を極めていた博士の一言で、研究所は市街を離れ、かつて別の目的で使用されていた研究所を新たな魔女研究所として移送したのだ。
恐らくスコールもそこを目指すだろう。ヘタするともうそこに到着しているかもしれない。
だから、自分達も向かう。スコールに会うために。


→part2
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