FINAL FANTASY [

□〜The 2nd War〜
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第14章


まだ日があるうちにバラムに帰ってこれたことを、キスティスは密かに安堵した。
今にも海面に焼けた石を落としたような音が聞こえてきそうな赤い夕日を背に受け、その色に染まるガーデンを目指した。
帰校時間を予め伝えていた為、校門前ではゼルと彼にくっついた子供達が手を振って出迎えてくれた。
夕食の時間を理由にして子供たちを校内へ戻し、その足で学園長室へと向かう。
ガーデン中央にあるエレベータホールに立つと、子供たちと競争するように食堂へ向かうゼルと子供達の元気な声が聞こえてきた。

すでに今回の作戦のことは終了と同時に連絡を入れたため、一部始終は把握していた。しかし…
「ご苦労様でした、キスティス、ランス、メリー、ジョシュ」
一人一人の顔を見ながら掛けられる言葉は素直に嬉しい。
「報告します。ティンバー市街地エミール地区1150番において0200時クライアントと接触。同時刻これを……」

一通りの報告が終了し、4人は学園長に敬礼した。
と同時に、キスティスの後ろで控えていたランスが徐に1歩歩み出た。
それに気付いたイデアは声を掛ける。
「どうしました?ランス」
「…告白しなければならないことがあります。よろしいでしょうか?」
「聞きましょう」
「自分は、命令違反を犯しました」
「ランス!」
「?」
4人の内で、その事実を知らないのはキスティスのみなのは、態度を見れば明白だった。
知らなかったのも無理は無い。
ガーデンに報告の連絡を入れに席を外した時だったのだから。
その場で待機しているように言われたにも関わらず、目に入ったガ軍の横行。
その場を離れ、思わず兵士と戦闘を開始してしまうことになる。
結果として、兵士によって捕縛されそうになっていた女性を救い出し、キスティスがそこに戻るまでには元の持ち場に着くことができたのだが…
その行動は同じ命を受けた他の2人も見ていた。当然制止してみるが効果は無かった。
そしてキスティスにすぐに報告しなかったランスと同じ様に、2人もそのことを報告しないままでここに至る。
「そうだったの…」
「報告はわかりました。ランス、あなたの行動が正しいかどうか、それを当事者でない私が決めることはできません。
 確かに命令に反した行動をとったあなたは罰せられるべきです。そしてそれを報告しませんでしたね。メリーにも、ジョシュにも言えることです。
 本来ならばSeeDの資格無しと判断し、その資格を取り消すところです」
「!!」
「学園長!」
「…ですが、今回のあなたたちの行いはとても立派です。評価すべき点と言えます。特例として、ランクの1段階降格とします。いいですね」
「!!学園長!ありがとうございます!」
「わたしに礼を言うのは、違うと思いますよ、ランス」
学園長の視線の先には困ったような顔をしたキスティス。
「…あ、も、申し訳ありません!キスティス先生!!」
頭を下げたランスに続き、後ろの2人も同じ様に謝罪した。
「…まったくあなたたちは…。学園長がお許しになっても、教官長の立場としては許せない行為です。あなたたちはSeeDであると同時に、このガーデンの生徒でもあるよ」
「………」
「あなたたちには、補習授業を受けてもらいます!」
「ええっ!」
「そうね、担当教官は私と学園長。全てのエレメンタル系魔法のLv.3まで習得してもらいます。…学園長、宜しいですか?」
「ええ、いいですよ」
「じゃ、食事を取って着替えたら訓練施設へ来るように。いいわね」
「…はい…」
「私からも宿題を出しましょう。…キスティス、いいですか?」
「もちろんです」
「なぜ命令違反を犯してはならないのか、です。資料を参考にしても無駄です。3人で話し合い、自分達の言葉で答えを見つけなさい。
 期限は設けません。本当の答えが見つかったら、提出してもらいます」
「わかりました…」
「下がっていいですよ。ご苦労様でした」
「失礼します!」
4人は敬礼して退室したが、最後にキスティスがゼルと共にもう一度ここに来るように言われた。

キスティスがゼルと共に再び学園長室を訪れると、イデアは2人に着席と紅茶を勧めた。
「今の時間は、学園長ではないわ。キスティ、ゼル」
「ありがとう、ママ先生」
2人が席に着いたのを確認してから、イデアは静かに話し始めた。
「…スコールの、ことなんだけど…」
「………」
「いたのか、あそこに…?」
小さく頷いたキスティスに、イデアは微かな溜息を漏らした。
「トラビアに行った子たちから、無事に到着したという連絡が入りました。…リノア1人だけ」
「!?」
「トラビア?そこにいんのか?リノアは」
「私も、詳しい計画の内容も結果も聞かされていたわけではなかったので、2人は一緒だと思っていました」
「…あのアジトで、2人を無理に引き剥がしたのは、私です。…でも、本物のリノアの身柄とスコールは、その後現地のレジスタンスの人たちが合流させる計画だったんです。
 それなのに、どうして…?」
「???なんだよ、わかんねぇよ!キスティス、ちゃんと説明してくれ!」
「ガルバディアガーデンのカーウェイ教官、覚えてる?」
「あぁ、リノアの親父さんだろ?」
「ええ。彼が大統領から下された魔女捕獲命令の遂行に協力して欲しいと要請を受けたの」
「はあっ!? 魔女ってリノアのことだろ!?自分の娘を捕まえろってのか!?」
「それで、カーウェイ教官と計画を立て、現地のレジスタンスともコンタクトをとって、軍にはリノアのニセ者を捕らえさせようってことになったのよ。人形でね」
「…あぁ、そういやそっくりな人形作ってたもんな」
「…見たことあるの?」
「あ、あぁ、まぁ、大分昔な」
「スコールとリノアにはこの計画は話してないの。私達はガルバディア軍と共に動くことになってたから、全く寝耳に水の状態で敵対したほうが好都合だと思ったのよ。
 …でもそれが失敗だったわ。彼、本気だった…。本気で私達を敵と認識してしまった。計画が成功したら、本物とニセ物のリノアを入れ替えて、スコールと共に安全なところに身を隠してもらうはずだったのよ」
「…その計画を知らなかったスコールは、本当にリノアがガルバディアに攫われちまったって思い込んでるのか」
「あの子は、スコールは今どこにいるのかしら…?」
突然、勢いよく開いた扉から慌ててマスターシドが転がり込むように駆け込んできた。
「は、早くテレビを!テレビをつけて下さい!」
息を切らしながらもそう言うと、テーブルの上にあったぬるくなった紅茶を一気に飲み干した。
まさに丁度今、ガルバディア大統領の記者会見が執り行われてるところだった。
その模様が全て終わると、緊急特別番組と称して討論会が始まる。たった今終わったばかりの記者会見の様子を何度も流していた。
「…まずいことになったわ」
「なんだよ?まずくねーだろ。みんなホンモンだって信じてるじゃねーか!計画は成功したってことだろ?」
「…計画そのものはね。…でも」
「エスタに行けば誤魔化しきれないでしょう」
「ええ。そうなったらこの計画を実行したカーウェイ教官も、彼が依頼した私達SeeD、いえ、この学園も危ないわ。どんな形にせよ必ず報復がある。
 もしかしたらまたかつてのようにガーデン同士の大きな戦争に発展しかねないわ」
「な、なんだよ!ソレ!!やべーじゃねーか!」
「あぁ、スコールがいてくれたら…」
頭を抱えるキスティスにイデアは声を掛ける。
「…エスタの魔女研究所に向かったんじゃないかしら?」
「あの時の、ように…?」
頷くイデアの目は確信に満ちていた。
「でもよ、その研究所はもう…」
「エスタがそんな機関をそのまま放置してるとは考えられないわ。それに、もしかしたらエスタ大統領とコンタクトを取るかもしれない…」


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