FINAL FANTASY [

□〜The 2nd War〜
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第1章


「かつての大統領と同じ国政を望むならば、適任者はこの私しかいないでしょう!」
役人たちの意見を強引に押しのけ、この一言でボルド・ヘンデルは現大統領に就任した。
魔女戦争が終結して10年の月日が過ぎても、ガルバディア政府の力は強大だ。
大きな街にはたくさんの建物が立ち並び、人々が行きかい、車が往来し、様々な店が競い合うように誇示していた。
中でも凌ぎを削り合っていたのはTV局だった。
アデルの封印装置から発せられる強力な電磁波によって一切の電波が使用不可能となっていたのだが、その封印装置が破壊されたことにより再び電波を使用することが可能となった。
そこに目をつけたガルバディア政府は、自らが持つ大きなガルバディア軍を各地に派遣して電波塔の建設に力を入れた。
現在では、どの国からでもリアルタイムの映像を各地に送れるようになっている。
その結果、ガルバディア大統領は人々から厚い支持を得ていたのだ。

『コンコン』
ノックの音がして、男が部屋に入ってきた。
細身で眼鏡、手には電子ブックを抱えている。その胸には大統領首席補佐官のバッヂがキラリと光っている。
「大統領、失礼します。本日のレウァール大統領との会見の件ですが…」
熱心に新聞を読んでいたボルドは、その男の言葉が聞こえたとたん、立ち上がって大声で叫んだ。
「なんてこった!!」
男は驚き立ちすくんだが、すぐにいつもの冷静な顔に戻り落ち着き払った様子でボルドに訊ねた。
「…いかがなさいました?」
「支持率が5%も落ちてるじゃないか!私が何をした!?」
「…何も」
「そうだよな、何もしてないよな。どうして下がるんだ!?」
ボルドは困惑して、読んでいた新聞をぐちゃぐちゃと丸めてしまった。
「…大統領、落ち着いて下さい。ここ数年、何もなさらないから下がったのです。支持率は毎日変動します。すぐに取り戻せる数字です」
男は落ち着いてボルドに宥めかけた。
「本日の会見の様子が放送されればまたすぐに支持率は上がります。…それから、例の件ですが、今週末にも結果が出るとのことです」
「…そ、そうか、わかった。支度しよう」
ボルドはしぶしぶ頷き、男と共に隣の部屋へ移った。
「レウァール大統領のペースには絶対に乗せられませんよう、どうかお気を付け下さい。あの性格ですから…」
ボルドが苦笑いのような困惑した顔をしたのを見届けた男は、おもむろにクローゼットを開け、中から派手な黄色いシャツを取り出した。
「そ、それを着るのか…?」
上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながらボルドは呟いた。
2人はシャツを見合って黙り込んだ。
「…し、仕方ありません。これでなければあちらの大統領は会見をなさらないと仰っていますから…」
「う、う〜む、すでにペースに乗せられているようだな」
ボルドはよほど派手なシャツが気に召さなかったのか、着る間もその後もしばらくおかしな唸り声を上げていた。
これからの予定を順に説明し始めた男の声は、ボルドにとってはうんざりするものだった。
レウァール大統領の治めるエスタからの迎え、挨拶の仕方や具体的に何を話すべきか、1つ1つ細かに説明されるがボルドの耳に届いていたのは僅かだった。
その男の声を遮るようにTVのスイッチを入れる。
『…日前からのティンバーのレジスタンス活動は急速に目を見張るものとなってきました。このことについて、ガルバディア政府内に設置されました公安部巡視課のジェリー課長にお話を伺いたいと思います…』
ボルドは何かを思い出したように男に尋ねた。
「おい、例の件、何だって?」
「今週末に結果が出ると申し上げましたが…?」
「週末か…。どうせ大した成果は上げられんだろう」
溜息をついたボルドを見て、男はやはり落ち着いた様子で答えた。
「今回は大丈夫でしょう。今までの者とは違います。必ず良い結果を報告するはずです」
「そもそも、その情報とやらも当てにはならん。絶対にティンバーにあの女がいるとは限らんのだぞ」
「ご心配いりません、大統領。…さ、そろそろ迎えの者が到着する時間です。参りましょう」
ボルドは男と共に部屋を出た。部屋の外ではたくさんの役人達、軍人達が待ちかねていたように一斉に挨拶した。
男が先頭を切ってどんどん廊下を進み、その後ろをボルドが追った。
玄関に向かっているわけではなく、ボルドは不審に思ったが口には出さず黙って歩いた。
この時、ボルドは知らなかった。ここで恐ろしい計画が動き出していたことを…
廊下の突き当たりで迎えの者だという2人の男と挨拶を交わし、扉を開けてボルドは声も出ないほどの驚きを味わった。


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