彼女と工場地帯と俺。

□君と過ごす5月
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「銀ちゃん!銀ちゃん!」



と呼ぶのは俺の彼女、要。


あの告白がきっかけで一躍有名になってしまった俺。
もはや、この大学に要と俺を知らない者はいない。


友達公認どころか大学公認のカップルとなった。




「どした?」


えへへーと満面な笑顔で差し出すのは弁当。


「なんだよ、いきなり…」


「あのねーあたし、頑張ったんだぁ!」



って、あれ?
確か彼女は料理が苦手なはず。
もしかして、俺のために作ってきてくれたのか。


「お、おぅ…ありがと」



「食べたら、感想いらないから」



え?
感想はいらない?
普通は美味しかったとかそういう感想求めるもんなんじゃ無いのか?




でも、昼食の時その意味がよくわかった。

わかりすぎて俺は逆に混乱した。




「…う…うわぁ…」



息を飲むほどの、それは見ているだけでお腹と胸がいっぱいになるような弁当だ。



真っ黒な(多分)玉子焼き
(多分)ウインナーの残骸
中身がおどろおどろしく飛び出た(多分)コロッケ
ただの肉片と化した(多分)ミートボール




…おい、ちょっと待て。
玉子焼きの真っ黒は、わかる。



何故、温めるだけの物がこのような無残な事になっている!?



「か、要…」


「感想いらない」


「ちょ…」


「感想、ダメ、絶対!!」




要さん
今度から
料理の担当を外れて下さい…
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