彼女と工場地帯と俺。
□君の叫び
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俺の予想は見事に外れた。
あの日以来、一緒に飯を食ったり隣で授業を受けたりと要さんはずっと側に居るようになった。
初めこそ戸惑ってばかりだった俺もだいぶ慣れてきて、今は近くに彼女が居ないと何故か落ち着かなくなる。
「人の慣れって怖いもんだよね(笑)」
あの日と同じB定食を食べながら、彼女はそう俺に言った。
「そうだね。俺、要さんが隣に居ることが当たり前になってる」
でも気がかりな事が1つある。
「要さん」
「ん?」
「俺が言うのもアレだけど…」
要さんは箸を休めてこちらを不思議そうに見詰める。
「あ、あのさ…俺なんかと居て大丈夫なの?…ほら、要さん友達とか、さ…」
ついに言ってしまったその一言。
彼女には沢山友達が居る。
俺と連んではいけないような人。
「……」
「……」
無言の2人に嫌な空気が流れる。
その沈黙が辛くて彼女の名前を呼んだが…
「か、かな「あのさ、銀琥クン」
「は、はい!」
遮られてしまった。
俯いたままの要さんはいつもとは違う雰囲気を醸し出していて、俺は急に不安になった。
「もう少しだけ準備が必要だったけど…」
「?」
「あとで少しあたしに時間をちょうだい」
俺は何が何だかわからないままさっさと片付けをして、その場を去っていく要さんをただ見ていた。