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□硝子の棺で眠る王子
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「…暇だー…」

小人たちが仕事に出掛けてしまうと、やることのない智哉は暇になる。
なので今日も元気に(?)だらけていたが…ふと、ドアがノックされた。

「? はーい」

ドアを開くと、そこには深くローブを被り、林檎の入った篭を腕にかけた老人がいた。

「こんにちは坊っちゃん。林檎は如何かね?」
「林檎か……」

智哉は腕を組んで考える。
林檎は城下町の特産物で、こんな場所では全く食べられない。
それに林檎は嫌いじゃないし――


「一つくれ」


そして彼は、禁断の果実を口に入れて―――倒れてしまった。




「はぁ…いい人いないなぁ…」

森の小道に、白馬に乗った青年がいた。
彼は奈央斗。隣国の王子であり、伴侶を見つけるために諸国をさ迷っているところだ。

が、問題があった。
彼はとてつもない面食いなのだ。
同世代の美人も、未来に期待できる美少女も、かつての栄華を連想させる老女も、誰も彼の琴線にひっかからない。

が、彼は見つけてしまった。
硝子の棺に眠る王子を。
棺の周りに小人を傅かせた美しい青年を。

「小人たち、その棺と中の者を私に譲ってくれないか?」

気が付くと口走っていた言葉に、小人たちは答えた。

「うーん、」
「この人」
「どっから」
「どう見ても」
「王子」
「様だし、」
『いいんじゃね!?』

奈央斗は硝子の棺の蓋をはずし、まだ生きているような智哉の肌に触れる。
まるで宝物に触れるように丁寧に、優しく。

そして、唇を重ね合わせ――奇跡は始まる。


「…グーテンモルゲン」

智哉の瞳が開き、“おはよう”の挨拶を告げた。
あまりに愛らしいその態度に、奈央斗は彼を抱き締めた。







…え?その後の顛末?
そんなもの、語るまでもないでしょう。
智哉は奈央斗の国で幸せになりました、ただそれだけのお話。

…あぁ、余談ながら、その国の婚礼に招かれた保王は二度と自国には戻らなかったそうです。

めでたしめでたし。
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