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□帰り道
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「ねぇ閣下たん」
「ん?」

年度末も近い今日この頃。
珍しく部活も休みで、偶には電車で帰ろうと玄関へ歩みを進める智哉に、奈央斗の声がかけられた。

「今から暇?」
「まあ、生憎…」
「良かった、デートしない?」

デート。
それは恋人にとっては当たり前かもしれない。
しかし住んでいる市町が違う智哉と奈央斗にとってはそうそう出来るものではない。

「する!!行きたいとこあんの?」
「特にはないけど。いいんじゃない?ノープランで」
「そうだね。兄貴らしいや」

忘れがちだが、二人は男同士。
部活では公認カップルだが、世間的には大っぴらにできる関係ではない。
デートといっても、キスどころか手を繋ぐことすらできない。
それでも二人で過ごせることに、智哉は至上の喜びを感じた。

「じゃあ駅方面にでも行こうか」
「そっち色々あるからねー」

暫く話していた玄関を出て、駅方面へ歩き出す。
二人で歩くことは今までたくさんあったけれど、『デート』と考えると、つい口元が緩む。
智哉は奈央斗にばれないようにクスッと笑うと、自分の右手の薬指の指輪を外して、奈央斗の左手の中指に嵌めた。

「?どうしたの」
「手、繋げない代わり。帰りまで嵌めててくれない?」
「へぇ。可愛いことしてくれるね…じゃあ俺からもお願い」
「何だよ?」
「デート終わるまで、俺の事ちゃんと名前で呼んでよ」
「しょうがないな…奈央斗」
「何?智哉」
「大好き」
「俺も大好き」

何だか滑稽で、二人で笑いあう。

あと二年間の学生生活。
今隣にいる相手と、青春できるうちに青春しよう。
横で微笑む奈央斗に智哉も微笑み返すと、嬉しそうな、軽快な足取りで歩を進めた。


帰り道

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