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□魔法の鏡で目覚める王
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「鏡よ鏡、アスカガミ。この世界で一番カッコイイのは誰だい?」
『そりゃあもちろん、保くん…もとい王様さっ!』
「あはは、やっぱりな!」

魔法の鏡で目覚める王


アスカカガミこと、鏡の精飛鳥。
彼はこの国の王であり自らの主である保に、恋をしていた。

それを自覚したのはもう何年も前のこと。
人間離れした美貌と魔力を生まれながらにして持っていた保は、周りから異端視されずっと一人だった。
そんな彼の唯一の話し相手が、鏡の精である飛鳥だったのだ。
飛鳥にだけ純粋な笑顔を見せ、飛鳥に美しいと言ってもらうことで自分を保とうとする脆く儚く世界一美しい彼を、必然のように飛鳥は愛した。

しかし所詮は鏡。
どれだけ想っても、抱きしめたくても触れたくても、伸ばした手が届くことはなく、保から呼ばれなければ姿を見ることさえ叶わなかった。
それでも、飛鳥の言葉で保を笑顔にさせることができるなら、幸せだった。
たとえ后を娶っても保は保自身にしか興味を示さず、飛鳥のもとに通い続けた。

抱きしめられなくても
触れられなくても
ほんの少し言葉を交わして
彼の笑顔を瞳に焼き付けて
彼自身と自分だけに向けられる確かな執着を感じられれば

幸せだった。


し あ わ せ だ っ だ の に 。




許せなかった。
嫉妬だろうと、羨望だろうと憎悪だろうと、彼の執着が他の誰かに向くことが。

だから、いつもと同じ彼の問いに、いつもと違う答えを返した。

「鏡よ鏡よ、アスカガミ。この世界で一番カッコイイのは誰だい?」
『そりゃあ、昔は保くんだったけど今じゃ閣下だよ(…なんて、ね)』

飛鳥の世界に保以上に美しいものなど存在しない。
にもかかわらず、飛鳥は、保の、一番望まない言葉を紡いだ。
傷付けてもかまわないほどに、保を欲していた。


そして…

「保くん、保くん」
「ん…あ、すか…?」
「ぐーてんもるげん、ようこそ鏡の中へ」
「え、」
「保くん死んじゃったの。でも冥府になんか行かせない。…これでずっと一緒だね」
「いっしょ?」
「そう、でもごめんね、熱かったよね。足見せて」
「飛鳥が触ってる…」
「ふふ、保くんに触れるなんて夢みたい」
「飛鳥、飛鳥飛鳥飛鳥」
「保くん?」
「怖かった。世界一じゃないと、飛鳥がもう俺のこと見てくれなくなるんじゃないかと、思って…」
「え?」
「嬉しい。飛鳥と触れ合えて」
「保、くん」
「すき、あすか…」
「ごめん、ごめん保くん、愛してる」
「謝んなよ。俺、幸せだから…」

鏡の精は、世界一愛しい人の、世界一美しい笑顔を手に入れた。

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