ShortU

□余所見の理由
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何なんですかこれは。

そう問いかけたくなるが、残念ながら問いかける相手がいない。

「のんたん、俺とデートしよっ!」
昨日、そう誘ってきたのはそっちになのに。

「ねぇ、君達ってどこ高?俺の学校にはいないぐらい可愛いから気になっちゃって」

どうして保は俺の目の前でナンパなんてしているんだろ。

知らず知らず望の眉間には皺がより、頬は段々ふくれていく。

確かに保先輩の節操無しは今に始まったことではない。部活でだって、色んな人抱きついたり愛してるなんて言ったり、誰が本命だかわからない行動なんてデフォルトだ。

まぁ、先輩が夏樹に抱きついて優羽先輩が何度も盗み見てる様子なんかもうご馳走様でしたって感じなんだけど…って違う!
「今は萌えが大事なんじゃないの!俺の馬鹿!」
望は自分の頭をぽかりと殴った。

それでも誘ってきたからには自分を見て欲しい、そう考えるのはいけないことなのだろうか。


「まじで!?あそこの学校なの?俺もそっちに行けばよかった〜」

しかも男の望の目の前で女の子をナンパする保の考えが理解できなかった。

「当てつけですかこんちくしょー…」

目の前の光景を見ていたくなくて、でも置いて帰ってしまうだけの勇気もなくて、望はそっぽを向いた。


「へー、のんたんってそんな顔もするんだ」
だから保が自分の顔を見つめているなんて気がつかなかった。
「せ、先輩っ!?」
「うん。驚いた?」
「べ別に!それよりいいんですか、さっきの可愛い女の子は」
「あー、うん。もう用件済んだし」

ナンパが成功したということだろうか。

「のんたんの珍しい顔見れたから今日は満足」
「…へ?」

間抜けな声を出すと、保が笑った。

「のんたんの色んな顔、もっといっぱい見たいからこーゆーことしてみたわけ。成功したからもういいんだよ」
「…俺の顔…?」
「そー」
「…」

呆れた。
呆れたはずなのに顔が熱いのは何故だろう。

「あー、また面白い顔してるなぁ」

今日はついてるな、と保が呟いて頭を撫でられた。
しばらくうつ向いていた方がよさそうだ。



余所見の理由

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