ShortU

□無音の距離。二人の距離。
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部室にいたのは、たった一人だった。

「おはよー、…って望一人?」
「あ、おはよー閣下、誰も来ないから帰ろうかと思ってたよー」

屈託なく笑う望は、パソコンの前に座っていた。
USBが刺さっていることとキーボードを打っていることを見ると…まぁ、そういうことなのだろう。

「…それにしても、」

智哉が電池切れの近いipodを望の使っているパソコンに繋げるのを見ながら望がつぶやく。

「智哉かけりゅ俺はないよね〜」

……こいつ、ナチュラルに噛みやがった。
しかも本人はいつも通りの笑顔で気付いていない様子。
妙な反骨心が湧き上がるのを感じて、智哉は望に手を伸ばす。
…瞬間、智哉の携帯が着信を知らせた。

「?ねーる?」
「その言葉はわざとなのか?」
「何の話?」

…本気で気付いてねぇよ、コイツ。
ため息をつきながら、智哉はメールを覗き込む。


2011/02/11  09:12
from:オトン
sub:(non title)
――――
ごめんなさいっ(>_<)
寝坊したんで遅れます
半までには逝きます



「…オトンがかなり焦ってる件について」
「何の話ー?」
「オトンがメールで逝きますって」
「オトン焦りすぎだよー!」

望、大爆笑。
お前もそんな立場じゃねーよ、という突っ込みは心の中だけで。
そのままパソコンに向かってキーボードを打つあたり、ネタの神様でも降りてきたのかも知れない。
智哉のほうも書き途中だった兄貴のイラストを書き始める。

智哉のipodから流れる歌い手の曲だけが支配する静かな部室。
ロマンスはない。
セクシャルなこともない。
外の雪は音もなく降り積む。
それは、二年生が来ない日の二人。
エロ担当と傍観者の、二人の距離。


無音の距離。二人の距離。

(「ごめん遅れた!」)(「オトンおせぇよ!」)(「お母さんがいないから気が抜けた?」)(「閣下!望!!」)(「顔赤いぞオトン」)(「よし、ネタktkr!!」)

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