ShortⅡ
□ドミノ倒シ
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「あーすかくーん」
「なあに保くん？」
嗚呼、保くんは今日もかっこいいなあ。
身長180センチ。長い手足に甘いマスク。
世間一般にいうイケメン。
節操ナシの腹黒いところも、その外見がカバーするから問題ない。
というか、その外見を引き立ててるといっても過言ではない。
「台本のここってさ、どう書けばいいの？」
「ああ、それはね…」
保の顔が飛鳥にずい、と近付く。
飛鳥は顔が火照る感覚に、慌てて顔に手をあてる。
「…飛鳥くん？」
「え？あ、ゴメンゴメン…」
飛鳥は自分を落ち着かせて、丁寧に保に教える。
「んー大体わかった！ありがと飛鳥くん。大好きー！」
「俺も大好きだよー！」
大好き、なんて。
俺の『大好き』と保くんの『大好き』は違う。
保くんの『大好き』に恋愛感情は、ない。
飛鳥は心の奥がチクリ、と痛んだ気がした。
「あ、保センパーイ、浮気っすかぁ？ｗ」
「閣下と付き合った覚えはないけどなー？」
またこの男か…閣下。
本人は保に本気ではないだろうが、保がそうとも限らない。
──ああ保くん。保くん保くん保くん！！
「つれないなあ、センパイ」
唐突に、智哉の唇が保の唇を塞いだ。
俺の目の前で、こんな悲劇的なことってある？
「な、なななな！？！？」
顔を真っ赤にさせた保は、数秒間固まった。
後、逃げるように部室を飛び出した。
それを見た智哉は満足気に笑んで、部室の奥に戻って行った。
BLは大好きだし、目の前で行われるのは万々歳。
だけど。
それが大好きな人なら話なんだ。
保くんが、別の人を見るくらいなら、いっそ。
ふと、智哉が口ずさんだ。
「綺麗なものやうまくいっているものを見ると、壊してしまいたくなるものよ」
それは、そう、まるで。
「──ドミノ倒しみたいに…─」
智哉の口角が上がったことには誰も気付くことはなかった。
ドミノ倒シ