Long
□月だけが照らす
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「颯の馬鹿颯の馬鹿」
「そんなに褒めたら照れちゃうよ若ー」
「褒めてねぇよ馬鹿!!!」
二人の青年がさ迷っているのは深い山中。道無き道を進んでいる状態だ。
「完璧迷った…颯が探検しようとかいうから!」
すると颯は何かを見つけたようで満面の笑みを浮かべて若を呼んだ。
「若たん若たん!」
「何だよ」
「トンネル!」
「トンネルが何?」
「トンネルがある!」
「こんな山奥にトンネルがあるわけ……え?」
トンネルがあった。
颯が指しているそこは、蔦や雑草が生い茂っていてわかりづらいものの、確かにぽっかりとした空洞があった。
「こんな山奥に何でだよ…しかもちゃんとコンクリートで出来てるし…」
「行ってみよ!」
「何でだよ、嫌だよ」
若の反応が普通だ。普通は、山奥の何処に繋がっているかもわからない不気味なトンネルを通ろうとは思わないであろう。
しかし相手は颯。
子供のような好奇心とMっ気を兼ね備えた彼の脳に、『恐れ』という単語はない。
「ね!行ってみよ!」
「……んー…しょうがないな…」
何だかんだ颯が好きな若は、つい了承してしまい。
生い茂る草を掻き分けて、二人はは闇が続くトンネルに足を踏み入れた。
「二名様、ご案内」
二人がトンネルに去った後、物影から出てきた青年はそう呟くと持っていた懐中時計を閉じた。
するとトンネルの入口は、最初から無かったかのように、掻き分けられた草を残し、消えた。