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□Lambency
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「お疲れ様でした〜」
颯と連れだって闇の中に消える保の後ろ姿を見ている部員がいた。

「 」
その唇が何の言葉を形作ったか、知る人間はいなかった。
蓮は聞かれることの無かった言葉を握り潰すように、手を握った。


「蓮くーん」
「暑苦しい!」
抱きついてきた保の腹に軽く拳を入れ、蓮は離れた。

「颯ー、蓮君が酷い!」
「大丈夫ですか?」
蓮に冷たくあしらわれた保は颯にしがみつく。

「颯愛してる!」
その言葉に蓮は目を伏せた。



「ねー、蓮君最近冷たくない?」
椅子をギシギシ揺らしながら保が蓮を振り返った。

「…別に。気のせいだろ」
「じゃあなんで抱き着かせてくれないんだよ」
「俺は俺だけを好きになってくれる人にしか抱きつかれたくねーし。普通だろ?」
蓮は首だけ保に向けて続ける。

「俺の代わりなんかいくらでもいるだろ、お前には。俺なんかがなびかなくても何も変わらないだろ」
蓮は茶化すように笑った。

「俺はお前みたいな節操なしなんか、死んでもお断りだよ」


「それ、本気で言ってるの?」
いつの間にかすぐ側に来ていた保の笑顔は泣き出しそうだった。
蓮は自分の作った笑顔も壊れてしまうような気がした。


「…なんで、お前がそんな顔してんの」
「だって、蓮君が俺のこと嫌いって…」


どうして、
お前がそれを言うんだ
俺はお前が誰に「すき」の二文字を言うのを聞くだけで苦しいのに
お前を拒絶するだけで胸が痛いのに
誰かと一緒になるのは嫌なのに




限界が来てしまいそうだった。




保の輪郭が融けそうだった。








「蓮君、泣かないでよ」
保の両手が蓮に触れて、包み込んだ。

保の両目に蓮が映っていた。


「…嫌だよ、沢山いるうちの一人になるなんて。…なぁ、

お前の一番を俺にくれよ。

そしたら、お前が望む存在になるから」

蓮の目から涙が溢れた。

突然蓮の頭は押し付けられた。押し付けられたのが保の肩だというのに気づくのに数秒かかった。
そのまま強い力で抱き締められる。
保の頭が上下した。
「…うん」

蓮の涙が保の制服に染み込んだ。

「すき、なんだよ…、保くんの、ことが」

「うん」

「誰の代わりにも、なりたくないんだよぉ…」

「うん」

「お願いだから、一番にしてくれよ……」

「うん」



蓮の涙は止まらなかった。
保の腕が離れることも無かった。




Lambency

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