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□BADENDのその後に...
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その部室に、いつもの平和な光景など見る影もなかった。
部室の中心にあるのは、抱き合うようにして血を流す夏樹と尚雪。
保はそれを、入り口のドアの前でへたりこんで呆然と見つめていた。
理解が出来ない。
だから、床のカーペットを赤が浸食していくのを見ていることしか―――
瞬間、保の頭上から冷水が降ってきた。
「落ち着きましたか、保先輩?」
「…閣下…」
そう、保の頭に冷水を浴びせたのは閣下こと智哉。
金属製の少し古いバケツを片手に、彼はいつも通りの笑みを浮かべていた。
「なんなら、死体の始末手伝いましょうか?」
――まるで、今まで全てを見ていたように。
智哉は、あっさりと言い放った。
そして、まだ呆然とする保に優しく告げたのだ。
「それが終わったら、俺が先輩を愛してあげますよ」
*
そして、二人で死体の始末を終わらせた。
夏樹と尚雪の二人は家出による行方不明と処理された。
保が撮った写真のおかげで、駆け落ちであるという噂がまことしやかに囁かれている。
――その噂を流した張本人たち、保と智哉は、今も関係を保っている。
「…ねぇ、保先輩」
一糸纏わぬ姿で隣に眠る保を見ながら、智哉は呟いた。
「あなたの心に、俺が満ちましたか?」
俺が突き放したら、今度こそコワレテしまうほどに。
BAD ENDのその後に。
存在するのは、BAD END。