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□運命の証明
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『…もしも…もしもだぞ、閣下』

血色の華が咲く雪原で、

『…もし…来世なんてものがあるならさ……』

胸に同色の華を咲かせて、

『その時はまた……』

“彼”は――

『よろしく……な……』





今日は、久し振りの雪模様だった。
無機質なコンクリートの中庭も、野球部が練習しているグラウンドも、等しく白に塗り潰される。

「…雪、か……」

奈央斗は、窓の外を眺めながら、憂鬱そうなため息をついた。
理由は分からないが、雪は好きではない。

「兄貴、どうしたよ?」

ひょこ、と奈央斗の視界に智哉が飛び込んでくる。
その目は、いつもの通り自分を見ているようで見ていない。

「体、冷えてるぞ」

そっと、頬に彼の手が触れる。
いつも体温が低く、冷たい手が今日は妙に温かく感じられた。

「今日は誰もいないし、ニコ動しようぜ」
「ん、そうだな」

インフルエンザの流行で、部室には二人きり。
仲の良い友人同士である二人は憚ることなく並んでパソコンの前に座った。

「今日はこれの気分だな〜」

軽やかなキータッチで智哉が出したのは、『soundless voice』。
奈央斗も曲名だけは知っている。確か鏡音三大
悲劇の一角だったか。

静かな前奏が、スピーカーから流れる。
それと同時に、奈央斗の中で何かの情景が浮かび上がる。

(……俺、これを知ってる…?)



そこは、雪原。
“自分”と“彼”は逃亡者。

愛したかったから。
愛されたかったから。
だけど、許されなかったから。
だから逃げたけど、逃れきれなくて。
でも、彼にだけは生きてほしかったから。

――だから、置いていった。
遺される“彼”の気持ちを考えないで。


「…“閣下”」
「…“兄さん”…?」

雪降る空を背景に、奈央斗は柔らかく笑った。

「逢いたかった」

その言葉に、智哉も優しく微笑んだ。

「俺も。愛してるよ、“兄貴”」


やっと届いた。
未来に託した、僕らの運命。






運命の証明

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