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□赤に染まる
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ケントはすぐ隣に座る小さな体をサングラス越しに見下ろした。
「…先輩はなんで連中とやりあってる時にちょこまかと前に出てくるんだよ」
「…うるさい」
ケントと蓮はよく一緒につるむ仲だった。二人とも俗に言う不良と言うやつで、お互い一匹狼的なところがあるせいか、一つ学年が違うことも関係無く、一番近い存在だった。
血気盛んな年頃で、争い事を引き起こして殴り合いの喧嘩にも二人で応じるのも日常茶飯事なのだが…。
「先輩風吹かせてその小さい体で盾にでもなる気か?」
「…俺がなりたいんだからいいんだよ」
「…」
冗談のつもりで言った言葉が的を射ていたらしい。
「顔、血まで出てるぞ」
「うっさい、黙ってろ」
ついには蓮は寝転がってそっぽを向いてしまった。
「…蓮、先輩」
「ん?」
蓮の顔から滲む赤い血液を見ているうちに、ふと浮かんだ考えを口に出してみた。
「運命の赤い糸って信じるか?」
蓮は黙って体を起こした。
「運命の人と繋がってるってやつ」
「信じない」
蓮の細い目が半ば睨むようにケントを見た。
「俺は糸なんて細いもんに頼りたくねぇから」
「そうっすか」
「本当に好きな奴なら、そいつと俺の掌に」
ナイフを突き刺して二度と離れないようにするんだ
そう言う蓮の目が余りに本気で、ケントには笑い飛ばすことができなかった。
「運命の赤い糸なんて見えないもの信じるなんて、できないから」
言いながらケントの掌と自分の掌を合わせる。
「ここにナイフ刺せば、俺たちは赤い血で繋がれて、ずっと離れないよな」
秋なのに、ケントの頬を汗が伝った。
「…でも、お前に赤は似合わないよな」
蓮は、合わせていた掌をそのまま握ってケントを見上げる。
「…先輩は赤、似合うよな」
ケントは空いている方の手で蓮の赤いメッシュの入った髪に触れた。
「うん。だから
赤に染まるのは俺だけでいいんだ」
ケントの手から蓮の手がほどけた。
赤に染まる