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□人の恋路に関わる奴は、
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「兄貴は智哉に初めて会ったときにどう思った?」
颯が興味津々と言うような顔で奈央斗に聞いた。
「やっぱり付き合う人って特別なこと感じたりすんの?」
「いや…、今とあんまり変わらないかな」
奈央斗は苦笑しながら答えた。
「そうなの?」
「うん。
好みドストライクな子発見!ちょー可愛い!!!!
って感じかな」
「…可愛い?」
一番智哉と付き合いが長い颯だが、どんなに思考を巡らせてもカッコイイ姿は思い浮かんでも可愛い姿なんて思い浮かばない。
「二人の身長ってさ、確か」
「少しだけど閣下の方が高いよ」
「智哉って肩幅も広いよな」
「あいつは基本的に男らしい体してるよなぁ」
「(クラスも違うのにいつ見たんだ)…兄貴は?」
「俺は閣下によくからかわれるくらい細いんだよー!筋肉ついてなくてひょろいって。男としてどうなんだろうな」
「……兄貴から見た智哉って…」
「だから可愛いって言ってんじゃん!!」
「閣下ってなおさんのことどう思ってるの?」
智哉は夏樹に訊ねられ携帯から視線を上げた。
「何、唐突に」
「だって閣下よく他の人たぶらかしてるから」
「たぶらかすってオトン…」
智哉は溜め息をついた。
「…大好き、かな」
「ノロケ?」
「オトンが訊いてきたじゃねーか!」
智哉の顔はほんのり赤く染まり、本当のことを言っているのだとわかる。
「大好きなのになんで他の人と…」
「…兄貴といると、頭ん中ぐちゃぐちゃしてなにしていいかわかんなくなるし」
「…大変だね…」
「でも……兄貴、俺が他のやつといても何も思わないのかな…」
「…と、とりあえずノロケられてきました」
「僕も似たようなもんだよ」
颯と夏樹はついさっきの会話をこっそり録音したICを前に溜め息をついた。
「まぁ、これで二人がちゃんとお互いのこと好きだってわかったよね」
夏樹が気を取り直したように言う。
「後は二人が素直に言えば…」
言いかけた颯の後ろに黒い影が二つ。
「こっそりこんなことしてたのか」
「と、智哉…」
智哉が颯を見下ろし、その隣に奈央斗がいた。
「俺は嫌じゃないけどね」
奈央斗の言葉に視線が集まる。
「タイミングが掴めなくて言えなかったこと、伝えられたし」「兄貴…」
「閣下の気持ち聞けたし。閣下」
「…何?」
「俺、本当はずっと閣下が他のやつと一緒にいるのがいやだったんだよね。嫌われたくて言えなかったけど」
「!―っ、兄
貴大好きだっ!」
智哉は奈央斗に抱きついた。
「うん、俺も閣下たん大好き」
奈央斗も腕の中の智哉を抱きしめる。
「…なんか僕達忘れられてない?」
「うん。てかどうでもいいけどさ…
ここ部室だよ?」
「先輩ー、何かリア充がいるんですけどー。腹立つんで殴っていいっすかー?」
「金子ちゃん止めとけ、仕返しが怖い。視界に入れるな。そして飛鳥くんはなにをやってんの」
「いい薔薇が撮れました」
人の恋路に関わる奴は、