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□嫉妬、生まれた歪み
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「な、」
反転。智哉の視界には、何時の間にか…天井。
「兄貴、何のつもりだよ?」
智哉は皮肉った笑みで奈央斗を見る。奈央斗は感情も、何も浮かばない瞳で自分の下にいる智哉を見る。
「ムカつくんだよね」
奈央斗の口から、紡ぎ出された言葉。智哉はポカンとして、言葉の主を見据える。
「いつもいつも色んな人たぶらかしてさー、俺が嫉妬すんの見て楽しいか?」
「うん、まあ」
奈央斗の目つきが一層きつく、そして悲しくなる。
「どうせ俺だけを見てくれないんでしょ?…だったら」
奈央斗の口角が上がる。
「ヤっちゃおっかなーって」
「は、?」
奈央斗は智哉のネクタイをしゅるりと緩めて、ボタンを外しにかかる。
「奈央斗!やめろって!」
「こういう時だけ名前で呼んでさぁ、ズルいよね」
奈央斗は発言に似つかわしくない笑顔で、
「智哉はずーっと、俺のモノ」
嫉妬、生まれた歪み