ShortV

□謙太の30分クッキング
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謙太の30分クッキング




「玉ねぎとハムは角切りで、熱したフライパンでじっくり炒めます」

油を引いたフライパンに投下された材料が小気味良い音を立てる。
油の跳ねる音を聞きながら、蓮は横にいる謙太を見やる。

いつもと違う、真剣な表情。


「……味付けは?」
「十分に炒めてから塩コショウで」


言いながら、フライパンの中身を軽く一混ぜ。
投下された塩コショウが具材に染み込んでいく。


「先輩、小麦粉を」
「ああ」

指示された通り、小麦粉の袋を渡す。
謙太は袋の口を開けると、中身をフライパンにさっと入れた。
具材が小麦粉まみれになる。


「こんなに入れていいのか?」
「じゃなきゃ入れませんって」

そこに牛乳を流し込む。
小麦粉と混じり合って粘性を持ったそれは、紛れもないホワイトソース。

「すご……!」

まるで、魔法を見ているようだった。
簡単の声を漏らす蓮に、謙太は苦笑をひとつ。

「やり方を知ってれば誰にでもできますよ」

ホワイトソースの味を調えるために幾らかの調味料を投入。
味を確かめてフライパンを火から下ろす。
用意してあったご飯の上にホワイトソースをかけ、その上にチーズをたっぷり乗せる。


仕上げはオーブン。
チーズに焦げ目がつくくらい―――大体五分だ―――焼く。

時間が来る頃には、えもいわれぬ芳醇な匂いが漂っていた。



「出来ましたよ」

ホワイトソースのドリア。
出来立てで熱いそれを食卓へ持っていく。
蛍光灯の下に並べられて、それは光を放っているようにも見えた。


手を合わせる。
声を揃えて、二人は言った。




「「いただきます」」



ドリアは、とろけるような味だった。

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