ShortV

□天の川へと願いを捧げ
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窓から内側に向かって生えるように、笹が伸びていた。
ついている飾りを見ると、七夕用らしい。
それを証明するように、近くの机には人数分の短冊が並べて置かれていた。


天の川へと願いを捧げ



「……これ、七夕飾り?懐かしいなぁ……」
「ホント、何年ぶりでしょうね……」

たまたま早くにやってきた優羽と夏樹が並んで目を細めた。
開け放たれた窓から吹き込んでくる涼風が笹を揺らして音を鳴らす。
どちらからともなく頷きあい、色違いの短冊を手に取る。





「そっか、七夕なんだね」
「……もうそんな季節なのか」

開かれた窓から入る風が飾りたちを揺らすのを、颯と若が見ている。
ひときわ強い風に、並べてかけられた二枚の短冊が翻った。
どちらからともなく笑いあい、色違いの短冊を手に取る。





「そうか、七夕か」
「でも、誰が……?」

頷く蓮と首を傾げる謙太の目の前で、飾りの重みに笹が垂れ下がる音がする。
掲示物がかさりと揺れる。
どちらからともなく手を伸ばし、色違いの短冊を手に取る。





「……こんなことやってるのか」
「すごいな、放送部」

本を抱える誠典と原稿を持った大次郎が感心したように呟く。
ちょうちんの飾りが風を孕んで膨れ上がる。
どちらからともなく手のものを置き、色違いの短冊を手に取る。





「おおおおお……!」
「こりゃ立派だね……」

丁寧に飾られた笹を、飛鳥と保が眺めている。
多くの短冊と、さらに多くの飾りが触れ合って音をたてる。
どちらからともなくペンをとり、色違いの短冊を手に取る。





「……いいな、こういうの」
「……うん、同感」

智哉と奈央斗の目の前には調和のとれた笹がある。
夜の帳を背景に、時おり飾りと短冊が触れてかすかな音を鳴らす。
どちらからともなく色違いの短冊を手に取り、新たな調和を作り出していく。





「いっぱいありますねぇ」
「どれどれ……」

裕太と望が、完全下校時刻を過ぎた部室の中にいた。
そう、仕掛人はこの二人。
二人は書かれた願いをひとつひとつ読み、目元を和ませる。

笹本体は裕太が持ってきた。
笹と飾りは、望が持ち帰って焼くことになっている。











些細な願いよ、天の川まで昇って行け。





いつまでも、大切な人と共に在れるように。




そんな思いが、いつまでも叶うように。




彼らの幸福が、いつまでも続くように。

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