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□センセ、愛してる!3
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センセ、愛してる3

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ふんわりとした風が頬を撫でた。

『…気持ちいい…。』

相澤はお日様によく干したような清潔感のある優しい匂いを抱きしめながら、

あまりの心地よさにうっとり目を閉じていた。

窓が開いているのだろうか。

風が舞い込んでは、髪をサラサラと梳かしてくれる。


『俺…昨日、窓開けて寝たのか…。』

半分夢の中にいるような感覚のまま、薄く瞼を開けた。


外は明るい。


「…え…。えーーっ!!!!」



バサッと勢いよく布団ごと上半身を起こすと、視界に映った青い空を見つめた。

壁一面の3つに区切られた大きな窓は、両端の2つがブラインドで半分ほど閉められているが、
 
中央は全面に青い青い空を映している。

しかし室内は薄暗い。

それは、太陽が高い位置にあることだと相澤にはすぐさま解った。


「しまった!!授業…!!」

社会に出てから一度だって遅刻というものをしたことがなかった相澤にとって、この明るさは衝撃的である。

四つん這いになるとふらふらとよろめきながら大きなベッドの上を進んだ。


ダブルどころかそれ以上ある大きなベッドの上に、今の今まで自分は寝ていたらしい。

身体を覆っていたのは、しっかりと羽が入ったやわらかな羽毛布団。

足元に濃い紫のベッドカバーがかかっていたのがちらりと目の端に映る。


『ここ…』

足を踏み出し、ベッドの下に敷かれたマットの上に立ち上がる。
柔らかくて滑らかな感触が足の裏に伝わる。


『…どこなんだ。』

教室ほどの広さのある部屋を相澤は見渡した。

ベッドの脇には背の高いシンプルな照明が置いてあり、

窓辺には壁と同じ白のソファと少し低めのガラスのテーブルが並ぶ。

壁にはいくつかインテリアのような装飾があるがその他は何もない。


ただ、ひとつ言える事は
昨晩、自分はどこかのホテルに泊まったのだろうかと思わずにはいられないくらいの高級そうなベッドルーム

…に、全裸で寝ていた。



授業が…学校が…と重たい頭をフル回転させてつぶやき、

おろおろと部屋を徘徊してみるが、見渡しても服らしきものが無いので

とりあえず紫のベッドカバーを引っ掴むと、腰に巻きつけてみる。


昨夜の事を思い出そうとするが、混乱しすぎて全く思い出せない。

混乱しすぎている事に混乱する。
大きな不安がじわじわと襲いかかってくるように思える。


すると後ろでガチャリと音がした。


その音にビクッと身体を震わせ、おそるおそる後ろを振り返ると

扉から知っている顔がすっと現れた。



「かたぎりっ…!」
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