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□センセ、愛してる!2
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センセ、愛してる!2

……………………………………


マンションの最上階。
都会の景色を一望できる、だだっ広い窓には、
無数の雨がたたき付けられていた。

薄いカーテンの隙間からは
少しの朝日も望めない空が浮かび、
薄暗い部屋の中には、雨音の他には何も聞こえない。


片桐は俯せになって、ぼんやりと広いベットから
仕方のないような外の様子を眺めていた。

外はまぎれもなく土砂降り。




相澤にあんな事をしてしまってから、もう3週間ぐらいが経つ。
足の怪我も、もうすっかりよくなった。

あの後、家に帰った時は、車内での相澤の反応にわけがわからず
玄関でポロポロと涙が流れるばかりだったが、

頭がはっきりした今では、
後悔ばかりが、外の雨のように自分に降り注いでいる。



相澤の声。
ちょっと年上ぶった笑い方。
真剣に自分に向けられた切れ長の二重。
自分の頭を撫でた手。
車の中で…達した時の熱さ。
ぎゅっと腕を掴まれたあの感触。

辛そうに泣いていた…顔。


ノンケだから、自分のようなゲイと同じようにしてはいけないって、

どうして気づかなかったのか。

どうして、…大切に想っていたのに

大切に出来なかったのだろうと

気が付けば自分への問いかけが始まる。




「………。」




シーツの冷たい感触を探すように、片桐は寝返りをうった。

真っ白なシーツがぐしゃぐしゃになって
裸の身体にまとわり付いてくる。

そのしつこい感触から抜け出すように、
片桐は上半身を起こして、けだるそうに部屋を見渡した。


テーブルの上にはいつ飲んだかわからないコップ、空のペットボトル、使い終わったティッシュやらが散乱して、
ソファの背もたれからは、脱いだ服がだらしなく落ちかけていた。

床はハウスキーパーの掃除をしばらく断っていたせいか、うっすらとホコリっぽい。


「はぁ…」



片桐は起こした上半身を、ドサリと勢いよくベットに戻す。

側にあった白くて大きな枕を引き寄せて顔におしつけると、

苦しいため息が自然に漏れてくる。
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