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□センセ、愛してる!2
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「…え?」

「俺も行った事はないですが、…大体の場所はわかります。」

西畑はペンケースからボールペンを取り出し、
近くにあったプリントの裏に駅名と店の名前、そして簡単な地図を書いた。

「…直接会ってやってください。」
 
「でもさ、…俺じゃなくっても担任の藤山先生が訪問していただくほうが…。」

そこまで言いかけると、相澤は口をつぐんだ。

いつの間にか静かになっていた廊下から、パタパタと走る足音が聞こえてくる。

西畑は地図を書き終えると、プリントを四つ折りにし、パソコンの前に置いた。
そして自分の鞄と、深山の縦笛と教科書を小脇にかかえ、立ち上がる。

「…相澤先生。これは、俺の勝手な考えですが…

 相澤先生にしか、解決出来ない悩み…もあるんですよ。」


真っ直ぐに相澤を見ると、相澤はひどく驚いたようにその目を見開いた。


「西畑っ…!…お前…知ってるのか…?」

「俺は何も知りません。
 
 俺は…片桐の… ただの親友です。では。」

そう言って生徒会室のドアを開くと、丁度深山が部屋に入ろうとする所だった。

「先輩!すみませんっ…僕トイレ行ってそのまま教室に戻っちゃって、笛と教科書…
 あ…!!よかった!先輩が持っててくれたんですね!!」

わたわたとする深山に笑いながら、
西畑はまだ新しい教科書と笛を渡してやり、その頭をくしゃくしゃと撫でた。

「わっ…先輩っ、もーっ。 あ、相澤せんせーい!失礼します!」

背中越しに深山の元気な声が聞こえる。
そして、自分の背中を追いかけてくる足音を聞きながら、西畑は呟いた。

「あとは、…なんとかなるだろ。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



朝から降り続いていた雨は、夜になっても止むことがなく降り続く。

片桐は頼まれた買い出しの袋とビニール傘を持って、
濡れて滑りそうな階段を降りていった。

夜になればなるほど、駅には人が集まるような気がする。


いろんな人の傘とぶつかりながら、
裏道へ入る角を曲がると、少しはゆったりと歩くことが出来た。
それでも、ビジネス街が顔をそろえる表通りほどではないが人は多い。

歩みを進めるにつれ、まばゆい光を灯したネオンが
ひとつふたつと片桐を迎えてくれる。

この裏道の少し先には、
俗にいう『マニアックな店』が揃った有名な街があるのだ。

ビジネス街が近い事もあり、
仕事帰りのサラリーマンはそれぞれ楽しみを求めて
道に立っている店員と思い思いの店に消えて行く。
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