03/26の日記

22:58
新しい季節が始まる(家康)
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会社には色々な部署がある。

一つ一つの部署が、その会社を支えるのに必要な歯車だ。

たとえばワシが働く銀行だってそう。
動かすのはお金でも、他の企業と変わらない。
営業だって、金融商品開発だって、ディーラーだって、事務だって。
なんだって皆必要な絆の一つだ。

まだまだひよっこのワシだが、いずれはこの会社を支える大きな絆に・・。
いやさ、日本を支える絆の一つになりたいと思っているのだ。

同僚同期上司、皆で力を合せて・・!!



「Hey家康!今日の同期会の出欠はちゃんととったんだろうな。timelimitまで時間がないぞ」

伊達政宗が隣の席から椅子を持ってきて、ワシのパソコンを覗き込んだ。
そして社内イントラのページをクリック。早くメールをcheckしろよ、とせかしてくる。

ワシはしぶしぶメールを開けて、受信欄をポインタでたどってやった。

「ほら、みてみろ政宗。幸村に金吾は出席。慶次はちょっと遅れるかもって。かすがは欠席って口頭で聞いたし。後の同期は研修所だろ?」
「鶴姫は?」
「姫は昨日電話で話した時、別件の飲み会に連れていかれるって言ってた」

ちなみに、鶴姫こと鶴田姫乃はワシの可愛い彼女だったりする。
社内恋愛はあまりおおっぴらにはできないとはいえ、同期の間では周知の事実。祝福されてもいた。

「OK、じゃあこれで全部じゃん!」
「―おいおい。三成を忘れてないか?」

ワシは慌てて政宗を振り返った。
政宗と三成の仲が悪いのは知っている。

政宗だけじゃない。
女性は別として(世の女性は理屈抜きにイケメンに弱いものだ)男は大概三成を煙たがっていた。

いつだってクールで、正論をかざす三成は、会社の中で浮いた存在だ。
組織は協調性を重視するからだろう。
だけど、仲間はずれはワシのもっとも苦手とするところでもあった。

「Sorry、ワザとじゃないんだ。だけどお前もお人よしだよなあ。家康」
「ワシがお人よしだって?」
「そうだろ?だって石田の野郎はお前のこと」
「・・・。気のせいだ。三成がワシを嫌っているなんて。気のせいに決まっている。返信が無いのもきっと忙しいからだ」
「Ah!そんなもんかね。まあ精々ガンバルんだな。partyは盛り上がらないと」
「言われなくてもがんばるさ!」

何を頑張るのか判らないまま、部屋を出た。
12階にいる三成に会いに行く為だ。

このままでは埒が明かないと判断したワシは、直接本人に出欠の可否を聞く事にしたのだ。

アイツは決してワシを嫌ってなんか居ない、気のせいなんだ、と呪文のように唱えながら・・。

ワシは腹に力をいれて、人々や机の間を通り抜けていく。
と、一番奥の柱の向こうに、三成が座っているのが見えた。
月の光みたいな色の髪が、照明の下で一際眩しく輝く。

長めの前髪が三成の表情を隠しているけれど、ワシには判っている。
きっとこの中の誰よりも真剣な表情をしてるんだ、と。
月の光よりも、透明な色を浮かべて。

ワシはゆっくりと三成の隣に立った。
存在に気付いて貰えるよう、態とらしく咳払いなどをしてみる。

「三成、今日の飲み会だけど、メールをみてくれたか?」
「・・・家康・・・」

ワシの顔を見て、眉を歪めたように感じたのも。

―きっと気のせいなんだ。

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