企画もの

□レモンの味なんて嘘じゃないか
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「なァ、知ってるか?」


「何を?」


「ファーストキスはレモンの味なんだってよ」




仕事をする手を止めて何を言い出すかと思えば





「嘘でしょ〜。酸っぱいの?」


「どうだったかなァ」


「えっ、キスしたことあるの!?」


「まァ、一応…」


「……そりゃそうだよね〜。まさか私が初めて付き合った相手じゃないだろうし」


「いや、付き合ったのは名無しさんが初めてだ」




それを聞いて私は素直に驚いた
言い方は悪いけど、阿伏兎はモテそうだしその分遊んでいそうだし

次々といろんな女と付き合っていたと思っていたのに






「女とは体の関係だけ、ってかんじだったからな。俺が初めて好きになったのは名無しさんだけだ」


「…ほんと?」


「当たり前だろ。じゃなきゃこんな清い関係保ち続けるのは無理だ。逆に拷問だけどな」


「私たち、キスもまだだもんね」


「名無しさんが逃げるから」


「にっ、逃げてないよ!ただ恥ずかしくて…」


「……アレだ。ファーストキスの味の検証も兼ねて、俺とキスするか」


「無理だよ恥ずかしいっ」


「キスで恥ずかしいって…その次はどうするんだよ」


「次なんてない!手繋いでたり、膝に抱っこしてもらったりするだけで大満足!」





熱くなる顔を隠しながら拒否する私だけど、お構いなしに阿伏兎は近付いてくる




「名無しさん」


「…っ」





私が座っているベッドにギシリと乗り、後ずさる私の頬を包む





「あっ、阿伏兎…」


「ん?」


「私のこと、好き?」


「好き、っつーか…愛してる」






言い終わると同時に触れる唇
そして唇を啄むようにもう一度キスをされた後、ゆっくり離される阿伏兎の唇

恥ずかしいながらも顔を上げてみるといつもの阿伏兎の……何か企んでるようなニヤリ顔





「で、どうだった?ファーストキスのお味は」


「そっ、そんなのわかんないよ!!味なんてしなかった!!」


「ほんとかァ?」










レモンの味なんて嘘じゃないか








少なくとも私のファーストキスは
レモンみたいな酸っぱい味じゃなくて、




溶けそうなくらい甘い味だった


……なんて絶対に言ってやらないんだから!









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title→Chien11







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