04/07の日記

01:26
桐生様お誕生日おめでとうございます※追記コメ返有
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鏡よ鏡よ鏡さん


「…世界で一番美しくなるにはどうしたらいいの?」

魔法の鏡なら誰でも知ってる有名なセリフも近頃は姿を変えたらしい。時代の変化怖い。

さらに言えばキラキラと眩しいくらい純粋なまなざしを向けてくる少女の背後から発せられる威圧感と、こうなるように仕向けたのかチェシャ猫みたいに笑う性格の悪そうな四番目の弟子審判、そして周囲の鏡を通してこちらに視線の圧力をかけてくるババア鼠筆頭の女性陣が怖い。

「なんでオレにそんな事を聞くんだロストドール」
「王子様は魔法使いの不思議な鏡なんでしょ?なんでも知ってる真実の鏡だから、きっと教えてくれるって審判たちが言ってた」
『アタシ達はロストドールのつきそいさ』
「ボクが紹介しました!」
「畜生最悪の根回し生産者が!いやそれより真実の選択が分かるそいつらが答えりゃいいだろ?…イタタタタタタタ…やめろォ!」

白い歯を見せてサムズアップする厄介事の輸入元を指差せば、その指を逆に捕らえられて関節を極められそうになった。指で指を4の字固めしてくるとか悪意の塊か。成分の半分は鉄でもう半分は悪意で出来てんのかこいつは。

急にオレが悲鳴をあげたことで何が起きているのか不思議に思ったロストドールが頭上を振り返る前にパッと手を離した審判フォース。
人畜無害な審判小僧フェイスが余計に腹立たしい。

「だって『いちばん美しい』なんて抽象的な言葉入っちゃったら流石にボクらの手に負えないし。もっとジャッジワードの範囲を絞って欲しい」
「コンピュータかお前は」
「だいたいこういう質問は昔から鏡の担当でしょ?あとはよろしくコンピューターミラーマン」
「お前こそファンタジーかメルヘンかSFか絞れ!あとなんなんだその名前は!」
『私が名づけました』
「またか!またお前なのかガール!!」

鏡ごしに無い胸を張る少女に頭を抱える。また妙なあだ名がつけられてしまった…。だいたいこの少女に関わると今までもろくな事がなかった。一見凡庸なこの少女もまた、変なあだ名とともに厄介事の生産者なのだ。

『ちなみに名付けた直後にボーイが何か閃いたみたい!高笑いしながら部屋にこもって一心不乱に図面を引きはじめて今日で3日目よ!』
「さらばだお前ら!オレはしばらく鏡から出な…ッ!!?ギャーッ!」

このままでは本当にコンピュータ仕掛けを施される危機に身を翻そうとしたら、何かに足を取られてオレは顔から床に倒れた。

「いてて…何がッギャアアアーーー!!」

何が起きたのかと足を見れば両足にびっしりとケイティの怨念の糸。そしてダメ押しとばかりに審判フォースの天秤鎖が絡まっていた。

「ダメだよ〜。質問にはちゃんと答えなきゃ〜…疑問文に逃亡で返したらテストで0点だよー?」

ずるっ、ずるっと網にかかった魚を手繰り寄せるように審判・邪悪フェイス・フォースが鎖を引っ張る。その笑顔はホラー映画に出れるぞ。とびきり怖がって泣くのは自分の弟子のそんな笑顔を見てしまった審判ゴールドになるだろうがな。

絨毯に迷界の宝の引き摺られた跡をつけながら現実逃避していたら、ロストドールが泣き出しそうな顔でこちらを見下ろしていた。

「教えてくれないの?」

その一言で足を拘束している怨念の糸がギチギチと締めあげてくる。ケイティめ…普段あれだけ余計な事を言うなと圧力をかけてくるくせに、ロストドールが泣きそうだと簡単にこちらを縊るとか顔だけじゃなく掌まで返しすぎだろう。全身くるっくるか!そんな奴は目の前の回転式悪趣味ボーダー野郎だけで充分だ!

『『『『私達も知りたーい』』』』

そして頭上から降り注ぐ女達の冷たい視線。ここで逃げたら、再び鏡の外に出た途端に酷い目にあう事が言葉でなく心で理解できるような冷たい目だった。

「くっ…分かった!分かったから!ようするに『世界一美しい者がどう生活してるのか』でいいんだな!?それを見たら満足するんだな!?」

女達はちょっと不満そうな声を出したが、まぁそれでもいいかと妥協して頷いた。
ロストドールも頭を縦に振ってワクワクしながらオレが鏡を操るのを待っている。
審判・人畜無害そうに見えて口元が邪悪スマイルフェイス・フォースは愉快そうにしている。お前はもう帰れ。何しに来たんだお前…いや、こいつの事だからオレがこんな目に遭っているのを至近距離で見物しに来ただけだろう。

嗚呼…オレが一体なんでこんな事を…。

だいたいが問題が抽象的すぎるのが悪い。そもそも「美しさ」自体が主観によって曖昧な上に、どうやったら世界一美しくなれるか、なんて余計に一言ではいい表せられないだろう。元々の本人の顔は千差万別なのだから。

メイク?整形?赤い詐欺師の特殊メイクなら下の顔は違っても完成品は同じ?オレが却下だ。あれは真実じゃない。だから美しくない。

そう、真実こそ最も美しい。つまりは世界一美しいとは真実により近いモノ…つまり真実の鏡=オレだ…。

だからオレが映ってしまうのは仕方ないにしてもオレの普段の生活を真似してもそれは真実に近づくことにはならない。だからオレのように美しくはならない。とても哀れだが、オレが美しく真実に近いのはオレが真実の鏡であるからなのでどうしようもない。

それにオレの普段の生活を見せても女達は納得しない予感がひしひしと背中への視線の圧力となって伝わってくる。ババア鼠、お前だ。なんだ視線にも魔術入ってんのか、ビームかビームなのか?

だいたい普段の生活を見せるというのもちょっと…プライベートは大事にしたい。決してぼっちがどうとかでなく…。いや、ぼっちじゃない。タクシーとかたまに来るし。彼奴はオレの親友…いや心友だし。借金とか借金とかタダ飯喰いにとか、宅飲みって言いながら手ぶらで来てオレのヴィンテージ勝手に開けて飲んだりとかしに来るし…。

真実とか美しいとかオレは別にぼっちではないとか、色々と雑念を浮かべて考えていたのが悪かったのか…特に目的物を決めずに鏡を操っていたのが悪かったのか、パッと鏡に映ったのは美しい青年だった。

ちょうど鏡を背にしていたので後ろ姿しか映っていなかったが、彼はとても美しい長い白髪と華奢な体つきをしていた。素晴らしい事に、このオレのように真実にとても近い…もしや彼は…と思ったところで彼が口を開いた。

『この世で最も美しいのは真実…つまりオレだ!』

すごく共感する。オレだって美しいぞ真実だから。でもお前も同じくらい美しい。真実だから。

『そんなオレが更に更に美しくなるには、どうしたらいいか…真実により近づく姿…ありのままの姿…!つまりはそう、全裸だ!!』

どうしよう、ものすごく共感する。友達になりたい。友達ほしい。ぼっち辛い。
すると姿は映らないが別の声が聞こえてきた。ぼっちじゃないのか…いいな…。

『いや、服は着ろよ』
『分かってないな、服なんて飾りだ。真実に近い者は皆分かっているぞ!』

わかる。ものすごくわかる。声かけたいな。でも驚かせるかな…。すごく真実に近いんだけどなぁ…。

後ろで審判・ぎこちないスマイル・フォースがロストドールに向かって勢いよく首を横に振っている。さっきとの表情の落差がすごいな…と思ったところで、女達の微妙な視線に気がついた。

名残惜しいが鏡を操り、元の状態に戻してから振り返る。

「なんだどうした。せっかくオレ以外で素晴らしく美しい真実が映ったのに」

『……聞く相手が間違ってた事に気付いただけよ』
『てゆーか、のぞきなんてサイテーよね★』
『見られる事で美しくなる…ふむ』
『ちょっとママ止めてよね〜?せめて身内の前だけにしておきなさいよぉ〜』
「君の趣味のせいで親分どころかボクらにまで露出の癖があるように思われたんだけど」

散々に文句をつけてくる女達と審判・珍しく疲れた顔・フォース。

そんな中で無言を貫いていたロストドールがもじもじしながら、こちらを見上げて言った。

「王子様ははだかの王子様だったの?」

オレは真実に答えた。

「真実に近い者は皆はだかになるんだ」

その瞬間、真っ赤になったロストドールの顔が真っ青なケイティへと変化し「この変質者!!」という叫びとともに怨念の糸で全身締めあげられた。

オレは意識を失い…気がつくと病院で体に無数の機械が繋がれていた!
気絶していた間にコンピューターミラーマンに改造されたと勘違いしたオレはちょうど見舞いに来たボーイに思わずホラーショーをしてしまい…その後退院まで誰も見舞いに来てくれなかった。


嗚呼…ぼっち辛い。


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これが果たしてお祝いと呼べるのか。
散々頭を捻って、前日の夜9時にようやく思いついたミラーマンネタsssになります。

久しぶりに表でミラーマン書いたので若干性格に違和感があります。久々だから動きが悪い…_(:3 」∠)_

事後報告になりますが、素晴らしく美しい真実の方をお借りしました。あのさらつやヘアーと素晴らしいボディーはまさに美しいと思います。大好きです。勝手にお借りしてしまいすみません…問題ありそうでしたら下げますんでおっしゃってください!お気軽に!


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