09/15の日記
23:44
夏休みの宿題(3周年お祝い)
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夏休みの宿題
「はぁ?『夏休みの宿題を手伝え』だぁ〜?」
今年小学生になったばかりの従兄弟はさっそく夏休みの宿題を溜め込んだらしい。
「お前…今日が何日だと思ってるんだ」
「8月31日!」
まったくもって元気な返事に思わずため息をついた。
「そうだよなぁ明日から学校だよな?それで…あと何が残ってるんだ?」
「一行にっきと朝顔のかんさつと紙ねんどの工作!」
見事に面倒なモノを後に回したらしい。
彼は再度ため息をついた。
「しょうがねぇ。お前の父ちゃん母ちゃんには俺も昔宿題を手伝ってもらったからな。手伝ってやるよ」
「ほんと!?やったー!」
こうして夏休みの宿題を開始した。
「まず夏休みの天気は全部ネットで調べられるからな、これを丸写しだ」
手元のスマホを弄りながらサクッと検索して見せれば従兄弟が目を輝かせる。
「すげー!」
「次に祭りの日は全部『お祭りにいきました』で埋める」
流石に近隣の祭の日くらいは覚えていたので、その日を指させば全部鉛筆で埋めていく。
祭なんて1日で充分?それは主観だ。行く奴は行く。
オールデイズ制覇だ。彼は1日しか行かないが。
「ふんふん…でもまだ空白がいっぱいある」
「大丈夫だ。金曜日と土曜日と日曜日は全部『映画を見ました』と書ける」
「おおおー!!だいぶうまった!」
毎週末に地上波で2時間の暇つぶしを垂れ流してくれるテレビ様々だ。まぁ彼は見ないが。
「後の空白は『お家でお母さんの手伝いをしました』って書いとけ。学校の先生に褒められるぞ」
「やったー!」
適当オブ適当である。だがこれでいい。小学生など毎日起きて遊んでアニメ見て飯食って風呂入って寝るしかしてない生き物だ。ドラマティックな展開を求める方がおかしい。
「あ、でも兄ちゃん。どんな映画みたか聞かれたらどうしよ」
「あー?…そりゃ『どれも出てくる食べ物が美味しそうだったことしか覚えてない』とでも言っとけ」
「兄ちゃん頭いーい!」
ふと、確か先週の金曜日のロードショーはハンニバルがやってたような気がしたが…まあいいだろう。
コイツがもう少し小さな…赤ん坊の頃はクレヨンを食おうとしていた。この程度なら誤差だろ。
教師に怯えた瞳で見られるかもしれないが、知った事ではない。
次だ次。
「次は朝顔の観察だ。スマホで調べたら花が咲くまで60日くらいかかるらしい。だからまぁ、咲いたとしたら25日くらいだな」
「すまほってすげー!」
実際の朝顔はもうすでに種を落として花も散ってしまっている。対して朝顔の観察日記は双葉が四つ葉になった後は全部白紙だ。投げ出すの早すぎだろ。
まあ幸いネット上どこにでも観察日記が掲載されているので丸写しすれば簡単だが、どうにも書くものが多い。従兄弟はすでに飽き始めている。
「でんわってすげー!オレ将来でんわになる!」
「そうか。成れたらいいな」
大きくなるまでに5000回はこのネタでからかえるなと思いつつも、さらっとスルーして頷く。
「四つ葉になったところまでは書いたんだよな」
「そー!次は何かけばいいの?」
「そうだな…まず『庭で変な生き物を見つけた』次は『変な生き物は種を集めているらしい』『3匹いる』『真夜中に変な生き物が朝顔の周りを回っていた』『朝になったら朝顔が咲いていた』…これで5日だけで済むぞ」
「すっげー!!…あ、でも変な生き物ってどんなの?」
「そうだな…」
紙粘土を丸めて上に二本の耳を尖らせる。鳥の足みたいな足と丸いシッポをくっつければ完成だ。
「こんな生き物」
「すっげー!小トロロだ!」
「トロロじゃない。トト□だ。ちなみにこれで紙粘土も完成だ」
「すげぇええ!!」
興奮した従兄弟がトト□を掲げてはしゃぐ姿をスマホで撮影する。さりげなく見せれば女が食いつきそうな微笑ましい写真である事を確認し、スマホをしまう。話のネタゲット。
するとメインの朝顔よりもトト□を大きく描いていた従兄弟が困ったような顔を上げた。
「なーなー兄ちゃん!8月25日までだいぶページが空いちゃうよ」
「あ?なんだ日付書いちまったのかよ」
どうやら最初に言った『本当に朝顔が咲いたであろう日』の日付を最終日にしてしまったらしい。
「8月25日どうしよう」
「そりゃ…『3周年おめでとうございます』だろ」
「3周年!よくわかんないけどすっげー!!」
「おめでとうございます」
「おめでとうございまーす!!」
おめでとうございますおめでとうございますと正月の傘回しのようなかけ声とともに従兄弟はそのまま観察日記にトト□を量産し始める。3匹超えてるぞ。
大丈夫あれはきっと農耕とか豊穣とかの妖精のはず。成長とかほらきっと多分縁起がいいモノのはず。もう朝顔がどっか行ったが。
…1ミリくらい従兄弟の将来が心配になったが、まぁ男だから成るようになるだろう。本人は騙されやすくて将来の夢は電話になることでも。
「宿題終わった!ありがとう兄ちゃん!」
「どーいたしまして」
笑顔がまぶしい。1ミリが2ミリくらいになったが気にしない事にした。
「あ、ねぇ。今日の分の日記に何書けばいいかな?」
「お前な…今日やった事ぐらい覚えてるだろ?」
「兄ちゃんと夏休みの宿題やった!」
「その通りだな」
最後の1行日記を書いている従兄弟に、微笑みを浮かべる。別にこれは昔、せっかく作った夏休みの宿題の車の模型をうっかりぶっ壊されたあげく当時まだカップルだった従兄弟の父母が適当な手伝いしかしてくれなくて先生に怒られる羽目になった報復とかではない。
ただ、この歳で夏休みの宿題とかマジだるかっただけだ…。
嗚呼、今ならすごく分かる。ろくな手伝いしかしないでデートに行きやがった従兄弟の父母の気持ちが。
だって夏休み最終日は大人も同じだから。
それなら、最後に夏を満喫して終わりたい。宿題なんか論外だ。
とりあえず飲みに行こう。女引っかけよう。
そう頷くと彼は車のキーを回した。
翌日、従兄弟が学校でものすごく怒られたのは言うまでもない。
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夏休みの宿題ネタを9月にやるという罪をどうかお許しください…10日も遅刻とかワロエナイ。
キリュウ様この度は3周年おめでとうございます!
そして年の差従兄弟組が可愛くてお借りしてしまいました…!
ブタ小屋が一番のツボでしたwww
キリュウ様の書く文章も描くイラストも可愛くて面白くて大好きです!
それなのになんかよく分からないネタになってしまい申し訳ありません…orz
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