06/01の日記

03:02
審G審?っぽい何か
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午後。お茶を淹れて部屋のドアをノックをするも返事がない。不思議に思い声をかけてから中に入ると窓辺に寄せた椅子の上で本を膝の上に開いたまま器用に眠っている。

風で乱れた髪をすいて眼鏡を外してやると、パチリと泡が消えるように目を開いた。

「…すまない、眠ってしまったようだ」

こんなにも間近で…いつもは見たことが無いほど無邪気に笑うものだから、心の臓がどきりとした。

「そんなにお疲れでしたら読書は止めて、ベッドで休まれては?」

誤魔化すように目を逸らす。普段通りになるよう心がけたつもりだが少し素っ気なく聞こえたかもしれない。
だが後悔しても遅い。視線を落とすと自分の手は無意識のうちに未だ彼の眼鏡を弄んでいた。

「あ…、ごめんなさい。寝るのに邪魔かと思って」
「いや。気にしていないよ。その気遣いが嬉しい。ありがとうね。ただ…君の顔が見えづらくて、そろそろ返してくれるかな?」
「すみませんでした…どうぞ」

受け取った親分が目蓋を伏せ、眼鏡をかけてからゆっくりとその目を開く。
一連の動きは美しく、まるで動く絵画のようだとさえ思う。
彼は二、三度ゆっくりと瞬きすると安心したようにほう、と深い息を吐いた。

「嗚呼、やはり眼鏡をしないとなんだか落ち着かないものだね」
「本当にすみません…。親分、伊達眼鏡ではなかったんですね…」

新たな発見に感慨深く頷いているといたずらっぽく笑われた。

「おや、知らなかったのかい?ふふ、そうだねぇ…昔から書物が私を誘惑してくるものだからつい目を酷使し続けてしまってね。君はまだ若いから目を大事にしなさい」
「はい。ありがとうございます」

頭を下げて再び顔をあげると、親分がニコニコしながらこちらに掌を差し出した。

「はい」
「…この手はなんでしょう?」
「私の眼鏡を貸してあげただろう?今度は君の眼鏡を私に見せてくれないか」

不思議な申し出に当惑しつつ、断る理由もない。素直に自分の眼鏡を外すとその掌に置いた。

「…これが君の。君は目がいいんだね。こんなにレンズが薄い」
「親分よりは、ですけれども」

実のところ、眼鏡がなくても日常生活にはあまり困らない。壁に掛かった時計の秒針が少し見え辛いくらいだ。なんとなくぼんやりと親分の眼鏡を見つめた。

親分はこれよりも見えにくいのだろうか。あんなに真実をハッキリと見通せる人なのに、と思うとなんだか面白い。あの縦横数センチのレンズは親分の眼より先に、世界を広く、はっきりと映すのだろう。だがそこから上っ面だけでは分からない真実を見出だす事が出来るのだ、この人は。
改めて素晴らしい人だ。

その親分は、未だに上機嫌で僕の眼鏡を日の光に掲げて眺めている。
なんだか、自分の視界を客観的に見られているようで恥ずかしくなってきた。

「楽しいですか?」
「楽しい、というよりかは…」

口の端を引き上げて親分は笑う。

「嬉しいんだ。このレンズは君が何かを打ち込んだ証。それを私に簡単に渡して、触れさせてくれた事が。それに…信頼していない相手に自分の大事な視界を渡したりしないだろう?」

虚を突かれて黙っていると、親分は話を続けた。

「私の場合は、仕事だけでなく趣味の読書に打ち込んだせいでもあるが。おかげで眼鏡がないと本当に近いものしか見えない」

椅子から立ち上がった親分が歩み寄ってくる。それでも眼鏡のないせいか…言い知れぬ不安と落ち着かない心音のせいでその場を動くことが出来ない。

「ほら。このままの状態では君の顔を見るのにもここまで近寄らないと」

鼻先が触れそうな程に親分の瞳が近い。レンズ越しでないそれに思わず見とれてしまう。
顔が熱を帯びていくのが分かる。
まるで心を見透かされているようだ。

咄嗟に自分の眼鏡を探すと、椅子の上の読み差しの本の上に二つ仲良く並んでいる。

何かを言わなくては言葉を探すより前に、顎を掬われ、親分の両手が頬に添えられた。その両の瞳が僕の眼の奥を覗き込んでくる。

「でもね、こんな目でも…真実と近いものはよく見えるんだよ」


耳元で囁かれたその言葉に嘘はない。

きっと親分の心を見たいと近寄ってしまったから、親分には僕のこの心が隅々まで見通せてしまうのだろう。


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自宅外設定で審G審。
このくらいの長さでも纏まった時間ありで一日かかっちゃいますね…筆が鈍っている…。

物理的な距離と心の距離ではその人の有効視界も変わってきます。
同じ思いを抱いているならば尚更の事。というお話です。

なんとなく、某様宅のG審と耽美郷及びたなかのか先生作品のポエット成分をリスペクトしてみました。

少しはほんわかしんみりしてたら成功です。某様の素敵G審には足元にも及ばないですけどね!いつも萌えるG審本当にありがとうございます!!らびゅー(*´∇`*)

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