GIFT

□【捧】 カクタス日曜日!(ガンマンと子供達)
2ページ/2ページ




『どんなヘタク…カクタスガンマンにも当てることのできる銃を作るにあたり…どんなデタラメな方向に向けて打っても当てることのできる技術を模索した結果、熱源追尾型ミサイルを搭載することにした。大きさと弾数の少なさは問題だが、標的を追跡のち弾着。完全に破壊できるので支障はないと思われる。これなら百発百中だ!!』

「器用すぎるわーーー!!いいのかそんなモン個人で作れちまって!?」

「ああ!もしかしてこれって噂の『ガンマンでも当たる銃』でしょ!?すっごーい!!本当にできたんだ〜」

なんだその噂は…というより先に、ジェームスがニヤリと笑った。呆然としているカクタスガンマンの横を、脱兎のごとく駆け出していく子供たち。

マズイ・・・。

「おじちゃんコレちょっと借りるね!!」

瞳がきらきらと光っている…笑顔のジェームス。

最悪の物が・・・悪魔の手に渡ってしまった!!


「返せお前達ーーーーーー!!」

我に返ったカクタスガンマンは慌てて子供たちを追いかける。一階に降り、走りながら、取扱説明書に目を通すと続きがあった。

『…なお、熱源を追尾するので使用するにあたってあらかじめ人よりも温度の高いもの(熱湯を張ったヤカンなど)を的にすること。さらに近くで火を使用しないこと。誤爆の恐れあり』

「誤爆…?」

その時、前を走っていたジェームスがこちらを振り向いて引き金を絞った!!

「くらえー!ジェームスバズーカー!!」
「ぎゃあああああああ!!」

とっさにその場に伏せてしまい、カクタスガンマンは己の愚かさを呪った。

(熱源追尾じゃ伏せたところで一緒じゃねぇか!!)

しかし、予想した爆発は起こらず、不思議に思うと、ジェームスの撃ったミサイルは空中で半回転し、ジェームスの頭上を通過していった。

「なにをしておるのだ?騒がしいぞお前達…!?」

たまたま通りかかったグレゴリーの持つ燭台にめがけて一直線に飛んでいくミサイル。

カクタスガンマンが何か言うよりも先に、廊下で大爆発が起こった。

どっがぁあああああああん!!という音と子供たちの歓声に混じり、かすかにグレゴリーの悲鳴が聞こえた気がした。

「あわわわわわわ…」

グレゴリーの持つ蝋燭の火の温度が原因で狙いが外れ、誤爆してしまったのだ…。

目の前で威力を見て、カクタスガンマンは自分がとんでもないものを作らせてしまったことを改めて認識した。

しかしその時、ミイラ坊やが首をかしげる。

「あれー?もう一発しか弾が残ってないよ〜?」
「ホントだ…つまんない!もっと遊びたいのに〜!!」

カクタスガンマンは取扱説明書を思い出し、ほっとした。

弾数の問題…このバズーカにはミサイルは2発しか積まれていなかったのだ!
ボーイも試射と言っていたからには、この2発しか積まなかったのだろう。

つまりあと一発さえ処分してしまえばこの世界からあの忌々しいバズーカは消えるのだ!!

希望がわいてきたカクタスガンマンを、ルーレット小僧の可愛らしい一言が地獄にたたき落とした。

「チガウよ二人とも!あと一発『残って』るんだよ!!」

さっきの爆発のためか、ほほが朱に染まり、心なしかうっとりとしている。

「だからね?最後の一発まで楽しまなきゃ!!」

きゃははッ☆と笑う子供に、背筋を冷たい汗が流れる。
そういえばこの子は…爆発フリークだった!!

「それもそうだね!えい!」

ジェームスの手によってカチッと引き金が引かれる。…銃口をカクタスガンマンに向けたまま。

「ひぇえええええええええーーーーーー!!」

カクタスガンマンはたまらず逃げ出した。
シュゴー!!っと音を立てて、ミサイルが背後に迫ってくる。

談話室の前を抜け、物置の前を曲がり、図書室の前で曲がってもミサイルはしつこくついてきた。

「何か!ないのか!止める方法は!!」

走りながら、取扱説明書に目を通しても、ミサイルに狙われた場合のことは何も書いてなかった。

「助けてくれぇえええええ!!」

叫びながらロビーの扉を開けると、そこには審判小僧とシェフがいた。一周して逃げてきたので、子供たちがのんびりとソファに座っているのも見えたが構っている余裕はない。

「カクタスガンマン!グレゴリー見なかった?」
「夕食の献立を…」
「お前らは状況を見ろォおおおおおおうわああああ!!」

ミサイルが速度を上げた。カクタスガンマンを無視して一直線にシェフに向かって飛んでいく。

「!?狙いはシェフの蝋燭の炎か!?…ヤバい!逃げろアミーゴォ!!」

シェフはミサイルを一瞥すると、スッと音もなく包丁を一閃させた。

銀色が素早く空をひらめき、真っ二つになったミサイルが空中で爆発した。


どかあああああああああん!!

「…あれでいいのか…?」

全員がぽかんとした顔でシェフを見ていた。
いち早く子供たちが歓声を上げる。

「きゃはははは!爆発だー!!」
「うわーい!バクハツバクハツ〜!!」
「すっごーい!!料理人ってバズーカより強いんだね!?」

「す…っごーいッ!!すごいよシェフ!君、今サムライみたいだったよ!!あ、でもダメだよ!最後にちゃんと『またツマラヌモノを切ってしまった』って言わなきゃ!!」
「ツマラヌモノ?…大丈夫だ…きっと喰える」
「その残骸…料理する気なの!?」

興奮した様子の審判小僧のセリフの合間に聞こえてきた夕飯のメニューに少し寒気が立つ。

カクタスガンマンはその場にへなへなと崩れ落ちるように腰を下ろした。

「…心配…するまでもないよな!そりゃそうだった!!」

『食えないモノなどあんまりない』という信条を掲げる地獄のシェフが、あんな小型ミサイルに負ける訳がないのだ。


その時、廊下に続くドアが開き、ミイラパパがロビーにやってきた。
「あ、父ちゃん!!」
「ああ、居ました居ました。探しましたよ。坊や、今日は楽しかったかい?」

ミイラパパが坊やを抱き上げて笑う。

「うん!ガンマンのおっちゃんと決闘ごっこして一緒に遊んだんだよ!!スッゴく楽しいんだよ!!」

追尾ミサイルで一方的に狙われるのは、決闘ごっことは言わないと思ったがツッコミを入れる気力もわかなかった。

「はっはっは…それはよかったねぇ坊や…カクタスガンマンさん、どうもありがとうございました」
「おじちゃん!また遊んでね!」

ミイラ親子の満面の笑顔に、カクタスガンマンはすっかり怒る気も失せてしまった。

「…しょうがねーなぁ…また遊んでやるか。ただし、もう勝手に銃を持ち出したりするんじゃないぞ!」
「「「はーい!」」」
「返事だけはいいんだからなぁ…」

なんとか皆無事だったし…せっかくの日曜日だ…楽しければいいじゃないか。

そう思い、苦笑しているカクタスガンマンの背後で不意にガシャン、と音がした。



「そうかそうか…ではワシとも『決闘ごっこ』をしてくれるな?…カクタスガンマン…」

怒りを含んだ声にカクタスガンマンが振り返ると、そこには黒焦げのグレゴリーが立っていた。その手にはどこから持ってきたのか…ショットガンが握られている。

「…あっ…アミーゴ!アレはオレのせいじゃ…!!」
「…小便は済ませたか?…神様にお祈りは?…ガタガタ震えて逃げ惑う準備はよいな?」

青ざめて首を横に振るカクタスガンマンの言葉を聞かず、ジャキン!と音を立てて銃弾がリロードされる。

引き金に指がかけられた銃口がこちらを向く前に、カクタスガンマンは絶叫をあげて逃げ出した。

「もう…二度とごめんだぁあああああーーーーーー!!」


その日、カクタスガンマンの悲鳴と銃声は夜まで止むことはなかったという。


「う〜ん…やっぱり、カクタスガンマンの悲鳴っておじいちゃんの次に面白いよね!!ニヒヒッ」




---------------
長らくお待たせいたしました。
300hitのリクエスト「ジェームスとミイラ坊やとカクタスガンマンいじり」です。

終始酷い目にあう兄ちゃん。グレゴリーさんが加害者に回るという珍しい一品です。
でも本家でも唯一グレゴリーがやり返しているんですよね…兄ちゃん不憫。

大変お待たせいたしました&ご希望と違ったらスイマセン!!今の自分にはこれが精一杯でした!

クーリングオフの期間は一生です!!


前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ