GIFT
□【捧】審判ずきん。(審判、ミラー、カクタスでギャグ)
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そう言われながらも出されたケーキを遠慮なくぱくついている審判ずきんと、ようやくテキーラにされないと分かって安心しているカクタスハンターに紅茶を注ぎ、ミラーマンはため息をつきました。
「…しかしゴールドめ、面倒くさいモン押し付けやがったな………まぁ、厄介なのはいつもと変わらないが…しょうがねぇ、おい審判小僧」
そう言ってミラーマンは紅茶のカップから口を離し、真剣な表情で言いました。
「俺を見ろ」
その台詞に、審判ずきんが氷のように冷たい目をミラーマンに向けました。
「突然何を言い出すかと思ったら…これだからナルシストは…」
「そうじゃねぇよ!いいか!?こうなった原因は全部お前なんだから、これ以上面倒になる前にだなぁ…!」
その時、隣の部屋からけたたましい警報機の音が聞こえてきました。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!!
「侵入者、ハッケン!!侵入者、ハッケ…ぎゃああああああーーーーーー!!」
インコの叫び声が聞こえ、ガツンゴトンという音とともに、警報機の音が途切れ…室内に静けさが戻ります。
「ななな、なんだ…侵入者って!?」
「なんだか分からないけど…突破されたみたいだね〜」
ビビりまくりのカクタスハンターにノンビリと審判ずきんが笑いながら言います。
扉から目をそらさずに、ミラーマンは冷汗を流しました。
「…審判ずきんに…カクタスハンター…ってゆーと次に来るのは…」
ガキィン!ガキィン!!と金属のぶつかる音がしてミラーマンの部屋の入口を塞ぐ分厚い金庫扉が細切れになりました。
立ちのぼる埃の向こうには、巨大な包丁を持った男が立っていました。
「…ノー…スモーキング…タバコは料理の敵ぃ…」
その頭にはいつもとは違い茶色い獣の耳が生え、長い尻尾を揺らしています。
「…猟師は…狼の敵ぃいいい…!!」
ギラリと輝く包丁。
叫ぶカクタスハンターとミラーマン。
「「出たぁあああーーー!狼シェフだぁあああーーーーーー!!」」
「あれ?シェフもイメチェン?」
どこまでもマイペースな審判ずきん。ミラーマンは隣室に向かって叫びました。
「おいコラ…キンコにインコ!お前ら…仮にも俺の部屋の番人なら、もっときっちり侵入者防げよ!!」
二人ともどうやら無事だったようで、隣室からは元気な罵声が返ってきました。
「出来るかい阿呆!アイツに真っ先に狙われるんはスモーカーのワイやねんぞ!!」
「許してほしいんだな…ボクはインコを守るので精一杯だったんだな…インコはボクの大事な親友だから、怪我させたくなかったんだな…」
「キンコ…!…お前こそワイの大事な相棒やー!!」
「お前ら後で覚えてろよーーー!!」
じりじりと背後に追い詰められていく三人。しかし出入口は狼シェフの後ろにひとつしかありません。
「さあ!君ならどうする?」
「ジャッジしてる場合か!てゆーかいつの間に移動しやがった!?」
吊り椅子で空中に逃げた審判ずきんの足にミラーマンがしがみつきました。
「うわっ!何するんだよミラー!」
「うるせー!一人だけ逃げようったってそうはさせねーぞ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人を余所に、カクタスハンターが銃を構えました。
「ヘイアミーゴ!ここはオレに任せて早く逃げろ!!」
「でも…」
戸惑いの表情を浮かべた審判ずきんを元気づけるようにカクタスハンターは笑顔を見せました。
「なぁに…オレは荒野のハンターだぜ?あれくらい…オレ一人で食い止めてみせるさ!!」
そう言って彼は自信に満ちた顔で引き金を引きました!
バンッ!バンッ!バァン!
パリィン!パリン!ガシャーン!!
狼シェフの背後でミラーマンの部屋の鏡が音を立てて次々と砕け落ちました。狼シェフはその場で立ち止まり、無傷のまま頬を掻いていました。
「…すごいや…猟師になってもやっぱり一発も当たらないないなんて…それでこそ君だよ!!」
「あああ…俺の部屋…俺の鏡がぁあああーーーーーー!!」
予想通りの結果に頷いている審判ずきんにしがみついたまま、ミラーマンが悲痛な叫び声をあげました。
しかし鏡が割れる音はそれ以上続かず、代わりにカクタスハンターが短いうめき声をあげました。
「嘘だろ…こんな時に弾切れかよ…!?」
「オイ審判小僧!なんだこの期待を裏切らないヘタレは!?」
「狙った獲物は絶対に外す星の元に生まれた男だよ…」
二人が好き放題な事を言っている間にも、カクタスハンターと狼シェフの距離はどんどん縮まっていきます。
「オイまずいぞ…このまま行くと、次は俺達がタタキにされる番だ…」
「その前にカクタステキーラの一丁あがりが先みたいだけどね…!」
狼シェフが頭上高く包丁を振り上げてカクタスハンター目掛けて一直線に振り下ろしました。
「…ノー・ハンティング…猟師は…狼の敵ぃいいい…!!」
「うわぁああああ…!!」
ガキィン!!
哀れにも気を失い、サボテンの刺身にされる運命のカクタスハンターを救ったのは、包丁を白羽取りにしたミラーマンと、狼シェフの手に絡み付かせた天秤の鎖を必死に押さえている審判ずきんでした。
「ごめんシェフ…君達の友達として…さすがにコレ以上は止めさせてもらうよ!」
「コイツには割った鏡を全額弁償させなきゃなんねーんでな…食前酒のテキーラはキャンセルさせてもらうぜ!!」
しかし二人がかりとはいえ、狼シェフの腕力はすさまじいものがあり、徐々に包丁の切っ先が下がってきます。
「オイもっとしっかり引っ張れよ審判!」
「そっちこそ…ちゃんと押さえててよねッ!!」
言い合いながらも、二人は全力で押さえていましたが…力の差は歴然としています。
「このままじゃマジでヤバい…オイ審判!こっちを見ろ!!」
「またかい君は…!今は君の持病につき合ってる余裕はないよ!!」
審判ずきんの言葉にミラーマンがとうとうキレました。
「だから違うって言ってんだろ!俺の仮面を見るんだよ…『真実の鏡』を!!この世界でお前だけがズレてるんだ!お前が原因なら…お前が真実に気がつけば終わる!そしたら皆元通りだ!!」
「意味分からないけど…違ってたら君、ミンチ決定だよ!?」
この状態からミラーマンの仮面を見るには天秤の鎖を放してミラーマンの前に回り込むしかありません。そうしたらミラーマンは一人で包丁を押さえなければならないのです。
「うっせー早くしろ!」
「あとで恨まないでよね…ッ!!」
審判ずきんは狼シェフの腕を止めていた鎖を手放し、全力疾走してミラーマンの前に回りこみました。
包丁が振り下ろされる直前、ミラーマンの仮面に浮かび上がった『真実』を審判ずきんは見ました。
「うわぁ真っ二つ!!」
審判小僧はそう叫んで飛び起きました。よほど恐ろしかったのか、まだ心臓がバクバクいっています。
落ち着いて辺りを見渡すと、そこはグレゴリーホテルのロビーでした。
手の平には「赤ずきん」という絵本…すぐ側のソファではスリーピーシープが眠っています。
「…そっか…眠れないから絵本を読んでくれって言われて…ボクも寝ちゃったんだ…」
道理でカクタスガンマンが猟師になっていたり、シェフが狼だったりしたわけだ…と納得していると、突然スリーピーシープが叫びました。
「…オイコラ!厄介な夢見やがって…危うく死ぬところだっただろーが…二度と来るな…この疫病天秤!!…むにゃむにゃ」
「うわッ!ビックリした…なんだ寝言か…なんかエラソーな寝言だなぁ」
その時、廊下のドアが開いてぞろぞろと住人達が大勢でやって来ました。
先頭に立っていたグレゴリーが審判小僧と目が合うなり、つまらなそうな顔で舌打ちをしました。
「…なんだ…もう起きてしまったのか…ツマラン」
「あらぁ…そうなの?残念ねぇ〜…アタシも聞いてみたかったのに…審判小僧の見てる面白い夢…」
「スリーピーシープより先に寝ちまったんだって!?そんなのお前だけだよアミーゴ!」
「しかも寝ながらスリーピーシープと会話までしてたんですって!?」
「…スリーピーシープ…近くで眠っている奴と同じ夢が見れる…」
ガヤガヤと雑談をしている皆の話を聞きながら、審判小僧の眠気は急激に覚めた。
「…君達…まさかボクの夢を聞いてた?」
「「「いや、まだグレゴリーしか聞いてない」」」
グレゴリーが笑いながら首を振る。
「おやおや誰も何も聞いてはおらんよ…審判ずきんや!ヒヒヒヒヒヒヒ!!」
その言葉でロビーが爆笑の渦に包まれる。
審判小僧は俯き、耳を真っ赤にして震えていた。
「…グレゴリー…人の夢を勝手に聞くなんてひどいにも程があるよね………じゃあ…」
審判小僧は恥ずかしさと怒りで真っ赤になりながらも、ジャラリと両手の天秤を伸ばしてグレゴリーを睨みつけた。
「…何をジャッジされても文句はないよね…!?」
その後、恥ずかしさのあまりに手当たり次第にジャッジを行い、グレゴリーを追いかけ回して審判小僧は審判小僧ゴールドにまたしても『やり過ぎ』を叱られる羽目になった。
「…全く…いつも注意してるのに、一向に改善されてる様子がないね………仕方ない。今日は特別なお仕置きにしよう」
そういって、審判小僧ゴールドはカゴを取り出して笑った。
「…今度は途中で開けたらダメだよ?」
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長ッ…!!切実に文章をまとめる力を授けてくださいナンダコレです。
地味に口の悪い審判と不憫なお貴族鏡様の掛け合いが楽しくてつい長々しいものになってしまいました。ミラーマン大活躍でしたが、その分兄ちゃんが空気に…!!トリ…オ…?
ちなみにテキーラはサボテンからでも作れます。ゲームアプリ版でカクタステキーラに衝撃を覚えたのは私だけじゃないと以下略。
色々申し訳ありません秋様。こんなものでよろしければどうぞシェフの試し切りに使ってあげてください。